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Brain
日本脳炎
日本脳炎とは、コガタアカイエカと呼ばれる蚊の一種に刺されることから、「日本脳炎ウイルス」に感染することで発症する脳炎を指します。日本脳炎ウイルスに感染したからといって必ずしも病気を発症する訳では...
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脳
更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
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2017 年 04 月 25 日
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概要

日本脳炎とは、コガタアカイエカと呼ばれる蚊の一種に刺されることから、「日本脳炎ウイルス」に感染することで発症する脳炎を指します。日本脳炎ウイルスに感染したからといって必ずしも病気を発症する訳ではありません。しかしながら、感染者のおよそ100-1000人に一人の割合で脳炎を発症し、意識障害やけいれんなどを来たし、最悪の場合死に至ることもある病気です。死を免れたとしても何かしらの神経学的な後遺症を残すこともある疾患です。

日本脳炎は、媒介者となりうる蚊の生息域と一致して発症例を見ます。媒介者の蚊は日本にも生息しています。また、原因ウイルスは家畜として飼育される豚などの体内に生息するため、日本においては豚を家畜とすることの多い西日本において発症するリスクが高いです。

一度病気を発症すると致死的になりうる日本脳炎ですが、日本においてはワクチンによる予防接種策が整備されています。予防接種の普及や生活環境の変化に伴い、近年は年間10人前後で発症数は推移しています。日本脳炎は決して他人事と考えるのではなく、身近な疾患として捉え、ワクチン接種を行うことが重要と言えます。

原因

日本脳炎は、フラビウイルスと呼ばれる種類に含まれる「日本脳炎ウイルス」により引き起こされます。同じく蚊に刺されると感染する病気にデング熱がありますが、感染の経路が少し違います。デング熱の場合、蚊がヒトからヒトにウイルスを感染させますが、日本脳炎の場合はブタからヒトへ蚊が媒介します。ヒトの体内では日本脳炎ウイルスの増殖が緩やかなので、蚊がヒトからヒトにウイルスを運ぶことはありません。蚊とブタが周囲にいることが感染の条件になるため、農村地帯の夏に生じやすい傾向があります。こうした特徴から、日本における発症例は、豚を家畜として飼育することの多い西日本にて多く認めます。

人の体内に入った日本脳炎ウイルスは、リンパ節を始めとした各種臓器で増殖をし、その後、血液を介して脳組織に進入します。脳の中でも特に神経細胞が密集した部位(大脳皮質、基底核など)でウイルスは増殖し、神経細胞へのダメージを引き起こします。その結果、脳炎を発症し、重篤な症状を来たすことになります。

症状

日本脳炎ウイルスに感染したとしても、実際に症状を呈さないことも多く、このことを「不顕性感染」と呼びます。脳炎を発症する人は100-1000人の割合と呼ばれており、症状は激烈であり神経学的な予後を残すため注意が必要です。

脳炎を発症する際には、ウイルス感染後5〜15日の潜伏期間の後に症状が出現します。発熱・頭痛・嘔吐の症状があらわれて発症した場合は、その数日後に意識が悪くなり、麻痺が生じます。発症すれば30~50%の方に神経や精神面での重い後遺症が残り、20~30%の方は命を落としてしまいます。

検査・診断

日本脳炎ウイルスの検査では、抗体検査やウイルス分離、PCRといった方法を元にして診断を行うことになります。

日本脳炎ウイルスに感染すると、体内でウイルスに対しての免疫反応として抗体(初感染状態ではIgM抗体が増加します)が産生されます。日本脳炎の診断に際しては、血液もしくは髄液(脳と脊髄の周りを満たす液体)の中に、IgM抗体が存在していないかどうかを確認します。しかし、IgM抗体は病初期には検査にて確認できないこともあるため、特に日本脳炎が疑わしいときには繰り返し検査をすることもあります。

抗体検査よりもより直接的にウイルスが胎内に存在していることを確認するため、ウイルスの混入が疑われる検体(例えば血液、髄液など)を用いてウイルス分離やPCRといった方法が取られることもあります。PCRは、日本脳炎ウイルスに特異的な遺伝子を機械的に増幅・検出することから、日本脳炎の存在を同定する検査になります。

また、日本脳炎ウイルスは脳組織において最も集中的に集まるため、より検査の感度を高くすることを目的として、脳の検体を用いてウイルス検査や組織染色を行うこともあります。ただし、脳の検体を実際に得ることは侵襲性の高い手技となるため、脳の検査は重症例や剖検例に限られます。

治療

日本脳炎を発症した際には、ウイルスに対しての根治療法は存在しないため、症状に対しての対症療法が中心となります。日本脳炎では呼吸状態や血行動態に悪影響が生じることがあるため、人工呼吸管理や昇圧剤の使用などが検討されます。また、脳の浮腫やけいれんを起こすことがあるため、脳圧降下剤(マンニトールなど)や抗けいれん薬を使用します。日本脳炎ではステロイドパルスと呼ばれる特殊な治療方法がとられることもありますが、明らかな有効性は確認されておらず、議論の余地があるところです。こうした集学的な治療を行いながら、脳炎が沈静化することを期待します。

しかし、こうした治療介入によっても奏功しないことも多々あります。そのため日本脳炎では発症予防の観点を取り入れることがとても重要であると言えます。日本においては、日本脳炎の定期接種が3歳以降に設定されているため、ワクチン接種を怠らずに遂行することが大切です。

予防の観点からは、ワクチン以外にも蚊に刺されないようにすることも大切です。野外での活動時間を少なくする、野外活動をする際には肌の露出の少ない服を着る、虫除けスプレーをするなどの蚊に対しての対策を取ることが重要です。

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