概要
耳下腺炎とは、両側の耳の前にある耳下腺にウイルスや細菌が感染して起こる病気です。10歳までの子どもに多く発症し、人から人へとうつる可能性があります。耳下腺炎のなかでも、流行性耳下腺炎(別名:ムンプス、おたふく風邪)がよく知られています。主な症状は、耳の下の腫れや痛みです。また、まれに髄膜炎、睾丸炎・卵巣炎、膵炎などを合併することがあります。
原因
ムンプスウイルスに感染することで発症します。ムンプスウイルスは、子ども同士で感染する可能性があるウイルスです。感染経路には以下の2通りがあります。
接触感染
皮膚や粘膜の直接的な接触により感染します。または、手、ドアノブ、手すり、便座、スイッチ、ボタンなどの表面を介しての間接的な接触により感染します。
飛沫感染
咳、くしゃみ、会話によって飛んだ唾や飛沫に含まれるウイルスを吸入することで感染します。唾や飛沫が届く範囲は、感染源から1~2m程度といわれています。
症状
通常は2〜3週間の潜伏期(感染しているが症状はない状態)を経て、症状があらわれます。症状は1〜2週間程度で自然になくなります。一般的に現れやすい主な症状は以下のとおりです。
- 両側もしくは片側の耳の下が腫れる、痛む
- 発熱
- 咽頭痛(のどの痛み)
また、髄膜炎、睾丸炎・卵巣炎、膵炎などを合併すると、まれに以下の症状が引き起こされることがあります。
- 髄膜炎の場合:頭痛、吐き気、嘔吐、高熱、全身倦怠感
- 睾丸炎の場合:睾丸の痛み、腫れ
- 膵炎の場合:腹痛
検査・診断
採血検査を行うと、血中のアミラーゼ値の上昇がみられることがあります。また、耳下腺炎と似た病気と区別をつけるには、画像検査(CT)、血液検査、培養検査が行われることがあります。耳下腺炎とよく似た病気には以下のようなものがあります。
- 反復性耳下腺炎:ムンプスウイルスではないウイルスにより引き起こされる感染症です。症状が繰り返すことが多く、期間は流行性耳下腺炎と比べて短いといわれています。
- 急性化膿性耳下腺炎:ウイルスではなく、細菌が耳下腺に感染する病気です。
- 唾石症:唾液腺や導管のなかに石ができる病気です。
そのほか、唾液や髄液からウイルスを確認する検査があります。しかし、検査の結果が出るまでに時間がかかることから、一般的には行われません。
治療
痛みが強い・体温が高い場合には、痛み止めを内服するなど、症状に対する治療を行います。髄膜炎などの合併症によって、食事や水分の摂取が困難な場合には、点滴を行うことがあります。
「流行性耳下腺炎」は、学校安全保健法では第2種の感染症に定められています(2018年2月時点)。耳下腺、顎下腺または舌下線の腫脹(腫れ)がみられたあと5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされています。詳しくは医師に確認しましょう。
予防
おたふくワクチンを接種することで、ある程度(90%程度)の感染を防ぐことができるといわれています。おたふくワクチンの副反応としては、以下のことが指摘されています。
- 接種後2週間前後に、軽度の耳下腺腫脹と微熱がみられることがある。
- 約 1,000~2,000人に一人の頻度で、無菌性髄膜炎が現れることがある。
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