インタビュー

子どもの下痢でよく見られる原因、病気

子どもの下痢でよく見られる原因、病気
宮田 章子 先生

さいわいこどもクリニック 院長

宮田 章子 先生

この記事の最終更新は2016年06月29日です。

子どもの下痢の原因は様々ですが、多くの場合はウイルスや細菌に感染したことによる胃腸炎感染性胃腸炎)です。その他、アレルギーや精神的なストレスも原因となる可能性があります。子どもの下痢でよくみられる原因について、さいわいこどもクリニック院長の宮田章子先生にお話し頂きました。

下痢の原因は、急に始まる下痢と、慢性的に続く下痢で少し異なります。急に始まる下痢の主な原因としては、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)や、細菌(食中毒)による感染性胃腸炎が考えられます。

これに対し、持続性下痢といって慢性的に下痢症状が続くものもあります。持続性下痢の原因は、吸収不良症候群や反復性軽症下痢、腸炎後症候群などが挙げられます。

子どもの下痢の原因は、大半がウイルスの感染によるものであり、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが代表的です。ウイルス性の下痢ではしばしば吐き気や嘔吐、発熱、腹痛、頭痛、咽頭痛を伴うこともあります。ウイルス性の下痢のほとんどは軽症で、発熱や嘔吐が1〜2日続きますが、一般的には約1週間で下痢がおさまります。

乳児期以降の子どもでは食中毒にかかることがあります。食中毒の原因はカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌といった細菌です。細菌感染には抗菌薬を使用するというイメージがありますが、毒素が多量に排出されていなければ抗菌薬は使用しなくてもよいといわれています。毒素を排出する菌の感染または合併症をおこさなければ、重症になることはほとんどありません。

感染性の胃腸炎による下痢の場合、多くの子どもは嘔吐も起こしています。特にノロウイルスによる胃腸炎の場合は、下痢よりも嘔吐が目立つことが多く、下痢は何日も続きません。

新生児や乳児など幼い子どもの場合は、重症の脱水症状を起こすこともあるため注意が必要です。なお、ロタウイルスワクチンの普及により、ロタウイルス胃腸炎による重症脱水となる子どもはかなり減ってきています。(詳細は記事4『子どもの下痢、重大な病気のサインは?』

ウイルス性胃腸炎は周囲にも感染する病気なので、感染を拡大させないために、石鹸での手洗いや排泄物の正しい処理などの徹底が大切です。(記事3『子どもの下痢への対処法 家庭で与える食事・水分のポイントとは』のコラムを参照)

感染性胃腸炎による下痢の場合、原因が細菌・ウイルスのどちらであるかを判断することも重要ですが、細菌による下痢を疑う場合は、脱水以外の合併症にも注意しなければなりません。

溶血性尿毒症症候群(HUSともいいます)は、腸管出血性大腸菌(有名な食中毒の原因菌、代表的なものはO-157)などの感染が原因となって発症する重篤な病気です。HUSでは、急性腎不全(腎臓の機能の急激な悪化)や、急激な貧血などが起こり、ときにはけいれん、意識障害を引き起すこともあるため、早急な治療が必要です。(詳細は詳細は記事4『子どもの下痢、重大な病気のサインは?』

乳幼児では、下痢が長引き、特に乳製品を摂ると下痢が悪化することがあります。このときは、乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)を疑います。ほとんどの乳糖不耐症は、ウイルス性胃腸炎に引き続き発症する「二次性」乳糖不耐症であり、「先天性」(生まれつき)の乳糖不耐症とは異なります。胃腸炎によって下痢を起こした後、乳製品(育児用ミルクや母乳も該当する)に含まれる乳糖を分解する力が弱くなっているために起こることが多いといわれます。急に始まった下痢が約2週間経ってもおさまらずに続く場合は、この二次性乳糖不耐症の可能性を考えます。このときの便は酸性臭(すっぱいにおい)を発します。ただし二次性乳糖不耐症は通常1~2週間程度で回復します。

二次性乳糖不耐症の子どもに対しては、乳糖不耐症用のミルク(ラクトレス®、ノンラクト®、ボンラクト®など)が販売されています。これらのミルクは、ドラッグストア等で購入することができ、下痢の原因となる乳糖を含みません。下痢が始まって1週間が経過しても治らない場合は、乳糖不耐症用ミルクに変えてみてもよいといわれています。

お腹が弱く繰り返し下痢をしてしまう体質の子どももいます。反復性の下痢は学童期や思春期(中学生ごろ)などに多く、過敏性腸症候群が代表的な疾患です。

過敏性腸症候群は心身症(ストレスなどが影響し、それによってさまざまな身体的な症状が起こるもの)の一つであり、そちらの病状に沿った治療薬を使うことがあります。心身症に伴う下痢の場合、なるべく時間をかけて、子どもの様子を観察しながら治療にあたります。

下痢や血便が持続するけれども下痢の原因が判明しない場合、潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患を疑うことがあります。診断には内視鏡検査などの精密検査が必要になります。

炎症性腸疾患の頻度は高くはないものの、幼児期に発症するケースもゼロではないため、これらの可能性も念頭において診療にあたります。

下痢に対する薬剤としては、整腸剤・止痢剤(下痢止めのこと)・漢方薬・抗菌薬などが使用されることがあります。このうち「有効である」と科学的な根拠があるものは、整腸剤としてのプロバイオティクス(善玉菌のこと、人体に良い影響を与える微生物)だけです。

ただし、日本で用いられている整腸剤は、諸外国で用いられている整腸剤と菌の種類や量が異なるため、外国のものほど有効性は高くありません。日本の整腸剤は更なる改良が求められます。

なお、止痢剤は下痢を止めると同時に菌やウイルスの排泄も止めてしまうため、私は使用をお勧めしていません。漢方薬はガイドラインに示されるような明確な科学的根拠はないものの、使用されている先生も多数いらっしゃいます。

また、細菌性の下痢の場合、抗菌剤は不要です。使用するとしても、長期間使用し続けることは効果的ではないと考えられています。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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