インタビュー

これからの小児科医に求められることとは さいわいこどもクリニックの理事長として発信していくこと

これからの小児科医に求められることとは さいわいこどもクリニックの理事長として発信していくこと
宮田 章子 先生

さいわいこどもクリニック 院長

宮田 章子 先生

この記事の最終更新は2016年06月30日です。

さいわいこどもクリニック院長の宮田章子先生は、これからの地域の小児科においては、子育てのための相談や健康維持のための取り組みを行うことが求められているとおっしゃいます。今後、小児医療はどのように移り変わっていくべきなのでしょうか。日本小児科学会理事としても活躍されている、宮田先生にお話しして頂きました。

私は子どもたちを診察する際、「五感」を常に意識しています。

たとえば、待合室を覗いたとき、瞬間的に「あの子どもだけ少し様子が違う」と感じることがあります。この直感的な判断が非常に大事で、重症例を発見するために欠かせない感覚だと考えています。これは医師だけでなく、より患者さんに近い看護師の方々がみつけることもあります。

また、待合室から診察室に入ってきたときの様子も定期的に観察します。たとえば歩いて入ってきたならば、歩き方の様子をしっかりとみます。症状を言葉で聞く前に、診察室に入ってくるところの雰囲気や表情、しぐさを感じとることが大切だと考えています。

このようなことができる理由は、さいわいこどもクリニックが地域に密着した小さな医院だからです。かかりつけ医の場合、その子どもの普段の様子を知っています。ですから、普通に診察室でお話ししていても、「普段より元気が無い」「普段と様子が違う」と判断がつきます。子どもがかもし出す雰囲気、活発度を総合的に判断して、子どもの容態を見極めるようにしています。

子どもの状態のみで判断がつかなくとも、親御さんとの会話で確定することも多くあります。もちろん問診も大事であり、頭のなかで鑑別診断しながら疾病が何にあたるかを考えていきます。臨床的な検査や診断をするのはそれらの過程を経た後です。

小児科では「病気の地図」、つまり病気の流行が変化してきています。

かつて小児医療は急性疾患の対応が中心でしたが、現在では、特殊疾患・精神医学・予防医学・慢性疾患へと小児医療の中心がシフトしてきています。さらに具体的に述べれば、発達障害や心の病気、アレルギー疾患、慢性疾患に対するケアへと流れが変化してきていると感じます。

(関連記事:五十嵐隆先生記事『小児科医は子どもの総合医』

急性期の治療が主流であったかつての小児医療から、慢性疾患や予防医学、精神医学にシフトしてきている今後の小児医療は、急性医療のみではなく、健康維持や育児相談など、よりケア領域に沿った方向へと転換することが求められるようになるでしょう。私はそれらも小児科の仕事だと考えています。

現状では、子どもを育てる親御さんが子育てや健康に関することなどを相談できる場所は多くは存在しません。インターネット検索に走りブログを読み、一番信頼できる場所が見つからず混乱してしまいます。誰に相談すればいいのかわからない部分を小児科医が担っていくべきです。そのためには育児相談などの知識や経験の蓄積が必要であり、医師が地域性を熟知していること、「自分たちがこの地域の育児を支えていくのだ」という意識を持つことが大切になります。このようなケアが、これからは片手間ではなくむしろ主軸になってくると考えられるため、医師は他職種の方とともに小児医療や育児相談、健康維持を支援していく方向に本腰を入れる必要があります。

今後の小児科は守備範囲を自分たちでせばめることなく、ニーズを感じたらすぐに行動する必要があります。地域で医療を行っていると、どうしても不足しているものがみえてきます。ニーズに敏感になり、社会の実情に合わせて発展していくことが求められているのだと考えています。

子どもを育てるための総合的なケア体制のニーズは確実に増加してきています。親御さんが小児科に相談する際のハードルを低く下げて、「小児科の先生たちにならば何でも聞くことができる」と思われる存在になっていくことが求められていると感じます。

さいわいこどもクリニックは、在宅医療や病気の子どもの治療はもちろん、親御さんの相談の場としても地域を支えていく方針です。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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