しょくちゅうどく

食中毒

最終更新日:
2021年02月08日
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2021/02/08
更新しました
2018/06/28
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概要

食中毒とは、なんらかの有毒・有害物質が食品(飲食物)の中に入っていて、それを飲食し胃腸炎などの急性障害をひきおこす疾患です。その有毒・有害物質には細菌やウイルスなどの微生物、寄生虫、キノコやフグなどの自然毒、化学物質があります。神経症状を呈することもありますが、一般的には、発熱や腹痛・下痢・嘔吐などの消化器症状が現れることが多く、重症な場合には脱水状態に陥って心・腎機能障害などの重篤な合併症を引き起こす場合もあります。

年度によって変動はあるものの、年間で900~1,400件の食中毒発生件数、16,000~20,000人程の患者数が報告されており、毎年数名の死者が出ています(2014~2018年)。

原因

食中毒は、人体に悪影響を与えるカンピロバクター・ウエルシュ菌・サルモネラ菌・腸管出血性大腸菌・ボツリヌス菌などの細菌、ノロウイルスなどのウイルス、アニサキスなどの寄生虫が付着した飲食物、ツキヨタケ、クサウラベニタケ、イボテングタケなどのキノコや山菜などの植物性自然毒*、フグなどの動物性自然毒、偶然または過失で混入した食品添加物・農薬などの化学物質が含まれる食材を口にし、体内に有害な微生物や物質を取り込んでしまうことによって発症します。

食中毒の患者数は、ノロウイルスがもっとも多く、次いでカンピロバクター>ウエルシュ菌>サルモネラ菌が続きます。発生件数はカンピロバクター>ノロウイルス>アニサキス>植物性自然毒>動物性自然毒の順に多いです。また、死者数は植物性自然毒>腸管出血性大腸菌>動物性自然毒>ボツリヌス菌の順になります(2015~2019年)。

ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝に潜んでいますが、不顕性感染者から食材を介して感染することも多いです。また冬に多く、感染力が強いため集団感染を起こしやすい食中毒原因物質です。

カンピロバクターは少ない菌で発症し鶏肉・鶏卵に多く、ウエルシュ菌は別名「給食病」ともいわれ、作り置かれたカレーや煮込み料理などが原因になることもあります。100度1時間の加熱にも耐える芽胞を作り通常の加熱では死滅しません。

サルモネラ菌は鶏卵・食肉・乳製品などから、ボツリヌス菌は酸素の少ない缶詰・瓶詰めなどを介し感染します。そのほか、魚介類に感染・寄生する腸炎ビブリオやアニサキスも食中毒を引き起こすことがあります。

*植物性自然毒:自然界に存在する天然の毒。正確にはキノコは植物でなく菌類。

症状

食中毒の症状は、原因となる微生物や物質の種類と体内に取り入れられた量、全身のコンディションによって大きく異なります。

一般的には、原因物質を体内に取り入れて数時間~1週間前後の潜伏期間を経て発熱や腹痛・下痢・吐き気・嘔吐などの急性胃腸炎の症状が引き起こされます。症状の程度は原因物質の種類や量によって異なり、重症な場合には繰り返される下痢や嘔吐によって脱水状態に陥ることも多々あります。また、食中毒の原因としてもっとも多いノロウイルスは微熱と繰り返す嘔吐、軽い下痢症状が見られます。一方、2番目に多い原因であるカンピロバクターは高熱と繰り返す下痢が見られ、重症化すると血便が見られるようになることも少なくありません。

食中毒による血便は、腸粘膜に強い炎症や損傷が生じることによって引き起こされ、カンピロバクターのほかにも腸管出血性大腸菌、サルモネラ、細菌性赤痢などによって生じることもあります。ときに腸管出血性大腸菌は、進行すると急激な腎機能障害を引き起こす「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症し、命にかかわることもあるため注意が必要です。

そのほか、寄生虫による食中毒は激しい上腹部の痛みとともにアレルギー反応として蕁麻疹(じんましん)が現れたり、自然毒やボツリヌス菌による食中毒は複視、眼瞼下垂(がんけんかすい)四肢麻痺、呼吸筋麻痺などの神経障害を引き起こしたりすることがあります。

検査・診断

食中毒が疑われたときは、次のような検査が行われます。

血液・尿検査

体内の炎症の強さや脱水また肝機能や腎機能の有無を調べるために血液・尿検査を行うのが一般的です。重金属による食中毒が疑われる場合は体内のイオン濃度などを調べる検査が行われます。

画像検査

腹痛、下痢、嘔吐などは食中毒以外にもさまざまな病気によって引き起こされる症状です。そのため、レントゲン、CTなどの画像検査でそれらの症状を引き起こすほかの病気がないか調べることがあります。また、画像検査では腸の炎症に伴うむくみや損傷の程度などを調べることもでき、食中毒の重症度評価にも役立ちます。

便培養検査

便を採取して便の中に潜んでいるウイルスや細菌の正体を特定する検査です。食中毒の確定診断に必要であり、治療方針を決めるうえでも重要な検査となります。

また、ノロウイルスやロタウイルスなどは、採取した便で簡易的に感染の有無を判定することができる検査キットも広く用いられています。

治療

食中毒の治療は、原因となる微生物や物質によって大きく異なります。

症状が軽度で自然と治まる食中毒も多いですが、基本的には、お腹の調子を整える整腸剤や発熱を抑える解熱剤などを使用しながら症状が治まるのを待つ対症療法が行われます。一方で、細菌類が原因の場合はそれぞれに合った抗菌薬を服用することでより早い症状改善が見込めると考えられているため、抗菌薬を併用するのが一般的です。また、食中毒は頻回な下痢や嘔吐のために水分が失われ脱水状態に陥るケースも少なくありません。そのため、脱水症状がある場合は点滴治療が行われます。軽度な場合は、安静にして水分を小まめにとり電解質(ミネラル)や糖がバランスよく配合された経口補水液を利用するのもよいでしょう。

そのほか、アニサキスによる食中毒では胃内視鏡にてアニサキスを摘出する治療、自然毒による食中毒では血液中の毒素を取り除くための血液浄化療法などの特殊な治療が必要になることも少なくありません。

予防

食中毒を予防するには、細菌、ウイルス、有害物質などが付着した飲食物、自然毒が含まれる食材を口にしないことが大切です。

予防の3原則は細菌などを“つけない”“ふやさない”“やっつける”ことです。調理前や食事前の手洗いと手指消毒、調理器具の衛生管理、調理済みの食品はすぐに食べる、冷蔵庫の温度管理(冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は-15度以下)を徹底するようにしましょう。

また、食中毒を引き起こす細菌やウイルスの多くは熱に弱い性質を持ち、通常75度1分の加熱で死滅しますが、ウエルシュ菌は100度4時間以上、ボツリヌス菌は120度4分以上の加熱が必要です。肉類はしっかり中まで火を通し、貝などもできるだけ火を通して食べるようにしましょう。

ボツリヌス菌は「乳児ボツリヌス症」を起こすことがあり、1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子を与えないことが重要です。また、キノコや山菜は自然毒が入っているものと入っていないものの見分けが困難なものもあります。食用と判断できないものは“採らない”“食べない”“あげない”が重要です。

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