概要
細菌性赤痢とは、赤痢菌によって引き起こされる細菌感染症で、特に衛生環境の悪い国で多く発生しています。
感染経路は主に、赤痢菌に汚染された飲食物などを摂取することによる経口感染です。潜伏期間を経て、発熱や腹痛、水様性の下痢などの症状が現れます。
かつては日本でも流行しており、第二次世界大戦後の患者数は年間5~10万人を超えていましたが、衛生環境の改善などによって、1960年代半ばから減少しはじめ、2000年以降は年間500~1,000人程度、2類感染症から3類感染症に変更されてから患者数はさらに減少傾向にあります。
現在は開発途上国からの帰国者に発症する輸入症例が大半を占めています。
原因
細菌性赤痢の原因となる赤痢菌は、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレキシネル菌(S.flexneri)、ボイド菌(S.boydii)、ソンネ菌(S.sonnei)の4種類があり、現在日本での症例はソンネ菌が中心となっています。
症状のある患者や無症候性病原体保有者(体内に菌を保有していても症状がない人)の糞便中に排出された赤痢菌が、手指などを介して広がります。感染力が強く、少ない菌量でもヒトからヒトに感染するため、家庭内感染を起こすこともあります。
また、汚染された食品、水、食器、ハエなどを介して感染することもあり、感染力が強いことから、しばしば散発的な集団食中毒、保育園や福祉施設などでの集団発生を起こすこともあります。
症状
赤痢菌に感染後1~5日程度で、急激に発症します。主に発熱、腹痛、水様性の下痢がみられ、重症例では血便やしぶり腹*を伴うこともあります。近年感染の多いソンネ菌では、微熱や軟便、無症状で経過する症例もみられます。
*しぶり腹:便意はあるのに少ししか出ない
検査・診断
赤痢菌に感染すると糞便中に赤痢菌が排出されるため、便を採取して培養検査*を行うことで診断します。
*培養検査:細菌を増殖させて細菌の有無や種類などを調べる検査
治療
ニューキノロン系の抗菌薬による治療が行われます。発症初期に抗菌薬を投与すると、保菌期間や症状の持続期間が短くなることがあります。
しかし、近年ではニューキノロンに効きにくい菌(耐性菌)が増えているため、効果が低い場合にはアジスロマイシンが選択されることもあります。
症状に応じた対症療法として、下痢には乳酸菌やビフィズス菌などの生菌整腸薬の服用、脱水には経口補水液(ORS)やスポーツ飲料の摂取を行います。飲水が難しい場合や脱水症状が強い場合には医療機関の受診が必要です。
予防
細菌性赤痢を予防するワクチンはありません。海外からの帰国者に発症する輸入症例が多いことから、特に衛生環境の悪い国に滞在する際は生野菜やカットフルーツ、生水、氷などの非加熱食品を飲食しないようにし、こまめに手を洗うよう心がけましょう。
また感染力が強いため、家庭内感染などの二次感染を防ぐために手洗いに加え、感染者の排泄介助やおむつ交換時には手袋やビニールエプロンを使用するなど、接触予防策を徹底する必要があります。
医師の方へ
「細菌性赤痢」を登録すると、新着の情報をお知らせします