概要
細菌性赤痢とは、腸内細菌科に属する赤痢菌に感染することで引き起こされる腸管の感染症のことをいいます。主に大腸の粘膜に炎症を起こし、ときに潰瘍をつくって、発熱、下痢、腹痛などの症状を引き起こします。
日本では、戦後しばらくは赤痢の患者さんの数は10万人を超えていましたが、衛生水準の改善とともに1965年半ば頃からその数は激減しました。近年発症している細菌性赤痢は、海外から持ち込まれたものが70%以上を占めているとされています。感染地としてはインド、インドネシア、タイなどのアジア地域が多いと推定されます。細菌性赤痢は感染症法によって第3類感染症(全数報告対象)に指定されているため、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出るということが義務付けられています。
似た名前の病気として、アメーバ赤痢がありますが、これは寄生性の原虫である赤痢アメーバ―を病原体とする感染症であり、細菌性赤痢とは異なる病気です。
原因
細菌性赤痢の原因となる菌は赤痢菌(Shigella属細菌)です。Shigella属細菌は、その特徴によってS. dysenteriae(ディゼンテリー菌)、 S. flexneri(フレキシネル菌)、 S. boydii(ボイド菌)、 S. sonnei(ソネイ菌)という4種類に分類されています。日本でみられる患者さんのうち70~80%はS. sonnei(ソネイ菌) で占められています。
細菌性赤痢は、これらShigella属細菌によって汚染された食品や水を口から摂取することで感染します。その他、細菌性赤痢の患者さんやShigella属細菌を保菌している人の糞便で汚染された手指、ハエ、食器などを介して間接的に菌が口に入って感染する場合もあります。
口から入った赤痢菌は、小腸で増殖したのち主に大腸の壁の細胞に侵入します。その結果、細胞が破壊され壊死や脱落が起こることで、腹痛や血性の下痢などの症状を引き起こします。
症状
一般的に、口から赤痢菌が入ってから1~3日程度の潜伏期間を経て発症します。症状としては、全身のだるさ、寒気を伴う発熱(38~39℃)、水のような下痢、もしくは粘液まじりの血便、腹痛、しぶり腹(便意はあるのにし少量しか排便がない)などが認められます。
発熱は1~2日程度継続することが多いとされます。近年では重症例は少なくなってきており、軽度の発熱と数回程度の下痢で経過することも多くなっています。ただし小児、高齢者や免疫不全のある方では重症化しやすいため、注意が必要です。
検査・診断
便の検査を行い、赤痢菌を検出することによって診断を確定します。採取した便を専用の培地を用いて一晩培養を行うことで確認できます。
治療
治療としては主に、原因となった赤痢菌に効果のある抗菌薬を用いた薬物療法を行います。具体的には、成人ではフルオロキノロン(FQ)という薬が用いられ、小児や、成人で何らかの理由でFQが使用できない場合ではホスホマイシン(FOM)という薬を用います(標準的には、常用量を5日間内服します)。
除菌できたかどうかを判定するためには、治療が終了してから48時間以上経過してから、2~3回の便の検査を行います。2回連続で陰性であれば除菌が成功したと判断します。
加えて、症状を和らげるための治療(対症療法といいます)を行います。赤痢菌を大腸に留めてしまわないよう、強力な下痢止めの薬は使用せず乳酸菌やビフィズス菌などの整腸剤を抗菌薬と併用します。脱水に対しては、スポーツ飲料水や経口補水液などを十分に摂取するように心がけます。飲水が難しい場合には、点滴を行うこともあります。
予防に重要なことは、赤痢菌が口から入ることが無い環境をつくることです。個人のレベルでは手洗いを徹底すること、細菌性赤痢の流行地域に旅行した場合には、生もの、生水、氷などは飲食しないことなどが重要です。社会全体のレベルでは、上下水道の整備など衛生水準が向上することが求められます。
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