食中毒の原因は、細菌やウイルス、自然毒などです。原因となる細菌やウイルスにはさまざまなものがあり、たとえば、加熱が不十分な卵・肉や魚に生息することのあるサルモネラ菌、加熱が不十分な鶏肉や生野菜などに生息することのあるカンピロバクター、カキなどに生息することのあるノロウイルスなどが挙げられます。また、フグやきのこに含まれる自然毒によって食中毒が発生することもあるでしょう。
食中毒は、細菌やウイルス、有害な物質などが付着したものを食べることによって起こります。たとえば、細菌やウイルスがついた手で料理することによって食品にそれらが付着してしまい、それを食べることで食中毒が起こることがあります。
また、暖かい場所に長い時間、食品を放置しておくと細菌やウイルスが増殖しやすくなります。このため、長時間にわたって冷蔵庫や冷凍庫で保存せずにいた食品を食べることで食中毒が起こることもあるでしょう。
食中毒の典型的な症状には、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などがあります。原因となる細菌やウイルスによって、現れる症状やその程度、症状が現れるまでの時間はさまざまです。なかには重症化し、命に関わるケースもあります。
食中毒の典型的な症状は、ほかの病気でも現れる可能性のあるものばかりです。そのため、風邪などほかの病気と間違われることもあるでしょう。
ただし、同じものを食べても全ての人に食中毒が起こるとは限りません。たとえば、健康な状態であると、細菌やウイルスが体内に入ってきても胃酸が食中毒の原因を殺菌するケースもあります。逆に、寝不足やストレスなどによって免疫力が低下している状態であると病気にかかりやすくなり、食中毒も起こしやすくなります。
食中毒を起こさないためには、まずは原因となる細菌やウイルスを体の中に入れないことが大切です。そのためには、食べ物に細菌やウイルスを付着させないよう注意する必要があります。さらに、細菌やウイルスを増やさないこと、死滅させることも重要です。
もし体内に入ってしまったとしても、免疫力を強化することによって食中毒を起こさずにすむケースもあります。
食中毒対策の原則は、原因となる細菌やウイルスを“付けない、増やさない、やっつける”ことです。それぞれについて詳しく説明していきます。
手にはさまざまな細菌やウイルスが付着している可能性があります。それらを食べ物に付けないように、料理する前や食事をする前には、手を洗うことが大切です。また、料理で使うまな板や包丁などにも細菌やウイルスが付着している可能性があります。料理する過程で食べ物にそれらを付けることを防ぐために、使用するたびに調理器具もしっかりと洗いましょう。
細菌やウイルスの多くは、暖かかったり湿度が高かったりする環境にいることで増えていきます。食べ物にわずかに付いたウイルスや細菌を増やさないためには、低温で保存しておく必要があります。食品を購入したらできるだけ早く冷蔵庫に入れるなど、低温保存を心がけてください。また、料理を作ったら、暖かい部屋に置いたままにすることなく、冷蔵庫で保存するようにしましょう。
食品に細菌やウイルスが付着していたとしても、加熱することによって死滅するものがほとんどです。肉や魚、野菜などもできるだけ加熱して食べるようにしましょう。特に肉料理はよく加熱することが食中毒対策につながります。
食中毒を起こさないためには、免疫力の強化も重要です。たとえば、腸管には免疫細胞が多く存在しており、腸内細菌が腸管免疫の機能を向上させることが分かってきています。このような免疫機能の強化を図るためには、ビタミンCやビタミンD、乳酸菌などの栄養素を取ることも効果的です。
ビタミンCには、免疫をつかさどる白血球のはたらきを強化することで免疫力を高め、細菌やウイルスなどから体を守る効果が期待できます。また、免疫力を低下させる作用のある活性酸素を抑えるはたらきもあるため、この点でも免疫力を高める効果が期待できるでしょう。
ビタミンDには、免疫機能調節のはたらきがあります。このはたらきによって体を守るために必要な免疫機能を促進し、細菌やウイルスなどに対する抵抗力を強化する効果が期待できます。
・免疫機能を活発にさせるはたらき
善玉菌の1つである乳酸菌は、整腸作用のはたらきがよく知られています。それに加えて、乳酸菌には免疫機能を活発にさせることで細菌やウイルスへの抵抗力を強化する免疫賦活作用のはたらきがあります。
乳酸菌を摂取すると小腸粘膜にある免疫細胞が活性化し、免疫力を高める効果が期待できるのです。さらにこの小腸粘膜で生まれた免疫細胞は全身を循環し、全身の粘膜免疫機能を強化して細菌やウイルスへの感染を防ぎます。
さまざまな種類に分かれる乳酸菌の中には、IgAという免疫物質の分泌を促進するタイプのものがあります。特にこのタイプの乳酸菌を取ると、腸管の粘膜免疫が刺激され全身の粘膜からのIgA分泌量が増加します。体のバリア機能としてはたらくIgAにはウイルスや細菌の体内への侵入をくい止める役割があるため、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌を積極的に取ることで免疫機能を高め、食中毒の発生を防ぐ効果が期待できます。
・サルモネラ感染から守る効果への期待
IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌は、過去に行われた実験によって、特にサルモネラ菌を原因とした食中毒に対して効果が示されています。
この実験では、1つのグループのマウスにはIgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌を、もう1つのグループのマウスには生理食塩水を3週間与えました。その後、食中毒の原因となるサルモネラ菌をマウスに与えたところ、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌を与えられたマウスはサルモネラ菌の感染から守られ、さらに各臓器へのサルモネラ菌の移行も少ないという結果が明らかになりました。
これは動物を使用した実験ではありますが、ヒトにも同じ効果が期待できるか、今後の研究が待たれています。
食中毒は、細菌やウイルスなどが付着したものを食べることによって起こります。そのため、細菌やウイルスを食べ物に付けないこと、増やさないことが大切です。特に手にはさまざまな細菌やウイルスが付着している可能性があるため、料理する前や食事をする前には、手を洗うようにしましょう。また、食品にわずかに付いた細菌やウイルスを増やさないためには冷蔵庫や冷凍庫での保存が効果的です。さらに、加熱することで菌を死滅させることができるケースがほとんどであるため、肉や魚、野菜などもできるだけ加熱するようにしてください。
食中毒は誰でもかかる可能性のある健康被害ですが、免疫力を強化することで発生を抑えることができます。そのためには、日々の食生活からビタミンCやビタミンD、乳酸菌などを継続的に摂取し免疫力の高い体を作っておくことが大切です。
今回取り上げた、細菌やウイルスを“付けない、増やさない、やっつける”、“免疫力を強化する食生活を送る”の2点を日々の生活に取り入れ、食中毒対策を行いましょう。
横浜市立大学医学部 医学教育学主任教授
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