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アレルギー性鼻炎・花粉症を悪化させないためにできる対策について解説!

アレルギー性鼻炎・花粉症を悪化させないためにできる対策について解説!
榎本 雅夫 先生

和歌山県立医科大学 客員教授、NPO日本健康増進支援機構 理事長

榎本 雅夫 先生

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アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜に生じるアレルギー疾患です。花粉やハウスダストなどの原因物質(アレルゲン)が鼻の粘膜を刺激することでアレルギー反応が起こり、主にくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が出ます。

アレルギー性鼻炎には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 通年性アレルギー性鼻炎:ハウスダスト、カビ、ダニなど、1年を通して現れるアレルゲンが原因となるタイプ
  • 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症):スギやヒノキなどの花粉が原因で特定の季節に限定して症状が出るタイプ

アレルギー性鼻炎・花粉症は、体内に侵入した原因物質に対して起こる免疫反応の一種であり、アレルゲンにさらされることで発症します。免疫とは、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した際、排除しようとする人体の機能です。ダニや花粉などの物質に対して過剰に免疫反応が起こることをアレルギー反応といいます。

アレルゲンが鼻の中の粘膜に付着すると、人の鼻は異物を排除してさらなる侵入を防ごうとします。そのとき、体内には抗体がつくられて、再びアレルゲンが粘膜に侵入するとアレルギー誘発物質が放出されます。放出された物質が鼻の神経や血管を刺激すると、アレルギー性鼻炎の症状が起こるというしくみです。

なお、アレルギー反応は体の免疫反応であることから、ストレスや疲労、不規則な生活などにより免疫力が低下していると、症状が悪化することがあります。

アレルギー性鼻炎の典型的な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。アレルゲンが目や喉に付着すると、目や喉のかゆみが起こります。そのほか、アレルギー性鼻炎に付随して起こる症状として、口で呼吸することによる喉の渇きや痛み、頭痛、下痢などの消化器症状、全身倦怠感、イライラ感などがあります。このように多様な症状が引き起こされることは、生活の質(QOL)や労働生産性の低下にもつながります。

アレルギー性鼻炎花粉症のつらい症状を軽減するために、まずはアレルゲンを浴びないことが重要です。つまり、通年性アレルギー性鼻炎の場合はダニやハウスダスト、花粉症の場合は花粉を避けるということです。そのうえで、生活習慣を見直して普段から体調を整えておくことも、アレルギー性鼻炎・花粉症の対策に役立ちます。それぞれについて詳しく説明します。

アレルギー性鼻炎を悪化させないためには、花粉やダニなどのアレルゲンを体の中に入れないことが大切です。まずは、体内にアレルゲンが侵入しないよう接触を避けるため、アレルギー性鼻炎の原因となる物質を除去・回避することに努めましょう。通年性アレルギー性鼻炎では室内の清掃や除湿、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)では外出時にマスクや眼鏡を着用したり室内に花粉を持ち込まないように工夫したりすることが重要です。

規則正しい生活習慣

鼻の粘膜をよい状態に保つためには、ストレス、睡眠不足、偏食、飲み過ぎ、かぜなどに注意し、喫煙は避けるようにしてください。

また、自律神経のバランスが乱れると免疫機能に影響し、アレルゲンに過敏に反応しやすくなります。正常な免疫機能を保つためには規則正しい生活を心がけて、リラックスする時間を設けるようにしたり、花粉の対策をしたうえで軽い運動をしたりすることもおすすめです。

食生活の見直し

食生活の乱れは、アレルギー性鼻炎・花粉症の症状を悪化させる因子になります。普段からバランスのよい食事を心がけ、アルコールや香辛料など刺激の強いものは控えましょう。

また、栄養素を上手に取り入れて体の抵抗力を高めることも大切です。自律神経のバランスが整い、免疫機能を正常に保つことにつながります。

ビタミンAの摂取

ビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保つはたらきを持っています。このはたらきによって、目や喉の粘膜からアレルゲンが侵入するのを防ぐ効果が期待できます。ビタミンAが多く含まれるレバーや卵、緑黄色野菜などを上手に食事に取り入れて、喉や鼻の粘膜のバリア機能を強化しましょう。

また、ビタミンAが不足するとウイルスや細菌の侵入を許しやすくなることから、インフルエンザやかぜなどの感染症にかかるリスクも高まります。体力の低下を未然に防ぐ意味でも、ビタミンAの摂取はおすすめです。

乳酸菌の摂取

腸内細菌の中でも善玉菌に分類される乳酸菌は、消化吸収を助ける整腸作用を持つことが知られています。さらに、免疫機能を活発にさせて細菌やウイルスへの抵抗力を付ける免疫賦活作用というはたらきもあり、アレルギー性鼻炎・花粉症の対策に役立つと考えられています。

乳酸菌を摂取すると、免疫賦活作用によって、小腸の粘膜に集まっている免疫細胞が活性化します。小腸の粘膜で生まれた免疫細胞は、体中をめぐる血液とリンパ液に乗って全身を循環し、ウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぐ粘膜免疫機能を強化するのです。

粘膜免疫機能において重要な役割を果たすのが、IgAという免疫物質です。多種多様な種類がある乳酸菌の中には、腸管の粘膜免疫を刺激してIgAの分泌を促進するタイプのものがあります。特にこのタイプの乳酸菌を摂取することにより、全身の粘膜からのIgA分泌量を増やし、免疫機能を高める効果が期待できます。

粘膜免疫は、ウイルスや細菌だけでなく、花粉などのアレルゲンが体内に侵入するのをくい止める役割も果たします。そこで、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌を積極的に摂取し、免疫機能を高めることは、アレルギー性鼻炎・花粉症のつらい症状を抑えることにもつながるのです。

臨床試験の結果を紹介します。花粉症の経験がある健常者に対し、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌が入ったタブレットか、有効成分を含まないタブレットのどちらかを、朝食前に1日1粒を8週間にわたり摂取してもらうという試験です。摂取開始前、摂取4週目および8週目に、人工的に花粉を飛散させる室内に入って引き起こされた症状などを30分に1回ずつ3時間記録したところ、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌が入ったタブレットを摂取後8週目において、生活の質(QOL)や気持ち、症状を含めたアレルギー全般(顔スケール)が軽減したことが確認されました。このことから、IgAの分泌を促進するタイプの乳酸菌には、アレルギー症状を改善させる効果も期待できるといえます。

アレルギー性鼻炎花粉症は、ダニや花粉などのアレルゲンに対して過剰に免疫反応が起こり、さまざまな症状が出る病気です。鼻水やくしゃみなどのつらい症状は生活の質(QOL)を低下させ、学業や仕事、日常生活に大きな影響を及ぼします。症状を悪化させないためには、まずダニや花粉などのアレルゲンをできるだけ回避することが重要です。また、ストレスや疲労、不規則な生活などによる免疫力の低下も症状を悪化させることがあります。生活習慣を見直して体調を整えたり、乳酸菌をはじめとした栄養素を上手に摂取して免疫機能を高めたりすることは、症状の重症化を防ぐために役立ちます。日常生活でできる工夫を取り入れながら、アレルギー性鼻炎・花粉症の対策をしっかりと行っていきましょう。

  • 和歌山県立医科大学 客員教授、NPO日本健康増進支援機構 理事長

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医・和歌山県地方部会 顧問日本アレルギー学会 功労会員・アレルギー専門医・指導医

    榎本 雅夫 先生

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