花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、異物感などがあります。なかでもくしゃみ、鼻水、鼻づまりは症状によって、くしゃみや鼻水の症状が強い“くしゃみ・鼻水型”、鼻づまりの症状が重い“鼻づまり型(鼻閉型)”、どちらも同程度の“充全型”に分類されます。
本記事では鼻づまりの症状が重い“鼻づまり型(鼻閉型)”をテーマに、すぐに受診できない場合の対処法、病院で行われる鼻づまりの治療について詳しく解説します。
花粉症による鼻づまりは基本的に花粉によってアレルギーの細胞が活性化し、血管を刺激するなどして鼻粘膜が腫れることで引き起こされます。
具体的なメカニズムは、以下のとおりです。
たとえばスギ花粉症患者の場合は、肥満細胞にはスギ花粉に対するIgE抗体*を持っています。このIgE抗体がスギ花粉の抗原成分と反応すると肥満細胞から化学物質が放出され、これらが血管を刺激することによって鼻粘膜が腫れて鼻づまりが引き起こされる仕組みです。一方、化学物質が鼻粘膜表面の神経を刺激すると、くしゃみや鼻水の症状が引き起こされます。
*IgE抗体 … アレルギーの原因となる物質と結合してヒスタミンを放出する抗体。
原因となる花粉との接触が多くなると症状が強まるため、花粉の飛散時期は症状が持続することが一般的です。さらに、治療で症状が改善しても花粉の飛散時期に治療を中断すると症状がぶり返してしまうことがあるため、治療の際は医師の指示に従うことが大切です。
花粉症による鼻づまりの治療は耳鼻咽喉科で行われています。ただし、近くに適切な診療科がなく、すぐに受診できない場合は必要に応じて市販薬を使用し症状を緩和することもできます。
市販薬には花粉症による鼻づまりに対しアレルギー症状を抑えて鼻の粘膜の腫れを改善する薬や、鼻の血管を収縮させて鼻づまりを解消する飲み薬、点鼻薬が販売されています。その際、できるだけ眠気が現れない“スイッチOTC医薬品*”と呼ばれる薬を使用するのがよいでしょう。
ただし、血管を収縮させて鼻づまりを解消するタイプの点鼻薬は使いすぎると鼻づまりが悪化することもあります。また、市販薬には眠気の強い副作用のある薬剤もあります。そのため、市販薬購入の際は薬剤師に症状を相談したうえで薬を選ぶことが重要です。また、薬の効果には個人差があるため市販薬はあくまで応急処置と考えて、最終的には医療機関を受診して適切な治療を受けることが望ましいです。
*スイッチOTC医薬品… 以前は処方箋薬だったもので、現在直接薬局で購入できる薬剤
前述のとおり、市販薬の使用はあくまで応急処置です。しっかり症状を抑えるためには耳鼻咽喉科などを受診して適切な治療を受けることが大切です。医療機関では、症状や原因に合わせて医師が最適な治療法を提示してくれます。
鼻の症状は以下の重症度に分けられ、いずれか1つでも該当する場合はその重症度に分類されます。なかでも鼻症状が2週間以上持続する、あるいは中等症~最重症の場合は耳鼻咽喉科やアレルギー科の受診を検討するとよいでしょう。
医療機関で行われる花粉症の治療は、主に薬による対症療法と根治的療法(抗原特異的免疫療法)の2種類です。
鼻づまりの対症療法には、ロイコトリエン拮抗薬や血管収縮剤入りの抗ヒスタミン薬が使用されます。ロイコトリエンは、花粉のアレルギー反応によって放出される化学物質であり、薬によって作用を抑えることができるとされています。また、どの症状も中等症以上の場合は鼻づまりに有効な鼻噴霧用ステロイド薬を用います。点鼻用血管収縮薬に比べ即効性はありませんが、安全に長く使用できる薬剤です。
鼻づまりが強い場合は、血管を収縮させて鼻づまりを解消する点鼻用血管収縮薬やステロイド薬の飲み薬を使う場合もあります。しかし、点鼻用血管収縮薬の長期使用は肥厚性鼻炎になり、かえって鼻づまりが悪化したり、ステロイドの長期内服は免疫力低下などさまざまな副作用を伴ったりするため、これらの薬剤の使用は医師の管理下での治療が必要です。
抗原特異的免疫療法は、以前は減感作療法とも呼ばれていました。スギ花粉の抽出成分を1日1回舌下し、スギ花粉に対する体の過剰な免疫反応を抑制して症状を緩和することを目指す治療です。これを4年以上続け、治療をやめた後でも効果が数年間持続するといわれています。なお、以前は皮下注射による治療が行われていましたが、現在スギ花粉症に対する免疫療法は舌下免疫療法が主に選択されます。
花粉症の鼻づまりは、花粉によるアレルギー症状で鼻粘膜が腫れることで引き起こされます。鼻症状が2週間以上持続する、あるいは鼻づまりが中等症以上の場合は、花粉症と思っていてもほかの原因がきっかけで生じている可能性もあるため、耳鼻咽喉科やアレルギー科の受診を検討するとよいでしょう。医療機関では症状や原因に合わせた適切な治療を受けることができます。そのため、自己判断せずに医師の指示にしたがって治療を行い、疑問や不安なことがあればためらわずに医師に相談しましょう。
福岡山王病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長、福岡国際医療福祉大学 教授、九州大学 医学部 臨床教授
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