アレルギー性鼻炎の薬は病院で処方してもらえる薬だけでなく、ドラッグストアなどで購入できる市販薬も多くあります。しかし使い方によっては症状が悪化してしまうこともあるので、しっかりと知識を持つことが大切です。ここからは、アレルギー性鼻炎の治療について地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉科 主任部長の川島佳代子先生にうかがいました。
アレルギー性鼻炎を抑えるための市販薬は、ドラッグストアなどでも多く販売されており、症状やライフスタイルに合わせて自分で薬を選ぶ方も増えています。しかし、使用方法を誤ると症状の悪化を招くことがあります。
主に鼻水を抑えるための抗ヒスタミン薬には、現在、第一世代と第二世代と呼ばれる2つのタイプがあります。
昔からあるタイプの第一世代抗ヒスタミン薬は、市販の風邪薬や鼻炎薬としても販売されており、忙しい方にも人気です。しかし、眠気が出やすく集中力の低下を招きやすいというデメリットもあります。また、抗コリン作用という作用が強く、眼圧上昇や排尿障害などが起こる可能性があるので、緑内障や前立腺肥大の方は使用を控えた方がよいといえます。
一方、第二世代抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用が少なく、前立腺肥大・緑内障の方にも使用可能な薬剤が多いです。
抗ヒスタミン薬と併用されることの多い血管収縮剤の入った点鼻薬は、鼻閉に対して即効性があり非常によく効きます。しかし、連用することで「点鼻薬性鼻炎」を起こし、余計に鼻閉の症状が悪化してしまう可能性があるのです。
鼻の粘膜には細い血管が発達しており、血管収縮剤の入った点鼻薬は速やかにその血管を収縮させて鼻粘膜の腫れをとってくれるのですが、連用していると徐々に収縮の調節ができなくなってしまいます。
そのため、血管がうっ血した状態となり、余計に鼻閉が悪化することがあるのです。そうなってしまった場合、血管収縮薬の使用を止めて点鼻ステロイド薬などで粘膜の収縮を取るか、それでも改善しない場合は手術をすることになります。
このように、症状を和らげる目的での薬の使用が余計に症状を悪化させる結果にならないよう、市販薬を使用する際には十分注意が必要です。
薬物療法の考え方としては、肥満細胞から放出される化学伝達物質(アレルギー反応が起こるメカニズムは「アレルギー性鼻炎とはどのような病気?」参照)を抑える働きをするものであって、根本的に病気を治すものではなく、あくまで対症療法となります。
治療に最もよく使われている薬剤は、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬で、「くしゃみ鼻汁型」「鼻閉型」という分類から、まず初めに投与する薬が分けられます。
くしゃみ、鼻水がメインの症状である場合は、くしゃみや鼻水を発生させる原因となっているヒスタミンを抑えるために抗ヒスタミン薬を投与します。
鼻閉がメインの症状である場合には、原因であるロイコトリエンを抑えるために抗ロイコトリエン薬を投与します。ただし、花粉は一気に大量飛散するので、単剤ではなかなかコントロールできない場合もあり、そうした場合にはお互いを組み合わせるか、鼻噴霧用ステロイド薬を追加で投与します。
現在、日本におけるアレルギー性鼻炎の治療では、「初期療法」という考え方があります。初期療法の考え方とは、花粉の本格飛散の時期(主に2月下旬)より少し前から花粉の少量飛散は始まっており、その時期に抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬を飲むことによって、症状を軽く抑えられるというものです。また新しいガイドラインでは鼻噴霧用ステロイド薬も初期療法に使用してよいということになりました。
基本的には、まず抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬のどれか一つの投与を開始し、その後、症状が強くなれば薬剤を追加します。
鼻噴霧用ステロイド薬は血管収縮剤の入った点鼻薬よりも即効性はありません。そのため使っていても効果が実感できず、途中で使用を止めてしまうケースも多くあります。しかし副作用や効果の点から優れた薬品であり、長期的に継続することで徐々に効果が現れるので、即効性がなくても使用を続けることが大切です。また、ステロイドの注射については様々な情報がありますが、副作用などの懸念点も多くあり、現在は推奨されていません。
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉科 主任部長
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