アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜でアレルギー反応が起こることによって、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどを繰り返す病気です。花粉を原因とした季節性(花粉症)と、ダニやハウスダストなどを原因とした通年性に分けられます。アレルギー性鼻炎の患者数は年々増加傾向にあると言われており、子どもも例外ではありません。
本記事では、子どものアレルギー性鼻炎の特性や、子どもと大人の症状や経過の違いについて詳しく解説します。
アレルギー性鼻炎は、子どもでもかかる病気です。くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3大症状は大人と同じですが、子どもは大人に比べて鼻水や鼻づまりの症状が目立つといわれています。
ダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎は子どもがかかるアレルギーとして以前から一般的でしたが、近年では季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の発症の低年齢化が進んでいます。厚生労働省の資料*では、15歳までにスギ花粉症にかかる人の割合は、母親集団では5.3%であったのに対し、その子どもたちの集団では9.7%と約2倍まで上昇しています。
アレルギー性鼻炎は5歳未満の小さな子どもから10歳代の子どもまで幅広く発症し、平均12.17歳の子どもたちの集団を対象としたアンケート調査では、16%の子どもがアレルギー性鼻炎を患っていると回答しました。アレルギー性鼻炎の種類別で見ると、年齢が低いうちはハウスダストやダニなどの通年性アレルギー性鼻炎の割合が高く、年齢が上がるにつれて花粉症の割合が増えていきます。
*参照元:『はじめに ~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~』
喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、子どもがかかるアレルギー疾患のなかには成長とともに症状が治まるものもありますが、アレルギー性鼻炎は自然によくなることは基本的にありません。
放置しておくと、鼻がつまり口呼吸になるため、睡眠不足や集中力低下の原因となるばかりか、慢性副鼻腔炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎といった合併症を引き起こすこともあるため、医師の指導のもと、適切な治療を行うことが必要になります。
子どものアレルギー性鼻炎の治療方針は、基本的には大人と同様です。アレルギーの原因物質(アレルゲン)の除去を治療の原則として、必要に応じて点鼻薬や内服薬などの薬物治療を行います。
アレルギー性鼻炎の検査には、鼻の中や鼻水の様子を調べてアレルギー反応の有無や程度を調べる検査、アレルゲンの種類を調べるための血液検査、アデノイド(鼻の奥にあり免疫反応に関わる部位)の腫れの程度を調べる内視鏡検査などがあります。
どのような検査が必要かは子どもの症状の強さや年齢、性格などによって異なるので、医師と相談しながら決めることになります。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)の除去はアレルギー性鼻炎にとって、もっとも重要な治療方法です。病院の検査で原因を明らかにしたうえで、清掃や洗濯によるアレルゲンの除去、マスクや眼鏡などによるアレルゲンの回避を心がけるようにしましょう。
アレルゲンの除去だけで効果が不十分な場合は、薬物を使って症状を抑える治療を行うことがあります。薬の種類としては、飲み薬や点鼻薬、吸入薬などがあります。
大人と同じ種類の薬が使われることもありますが、用法や用量、副作用の出やすさなどが大人と子どもで異なるので、必ず医師の指示のもとで使用する必要があります。
アレルギー性鼻炎の治癒や長期的な改善を目指す治療として、アレルゲン免疫療法があります。微量のアレルゲンを定期的に体内に入れることで、アレルギーを出にくくする治療です。
現在、スギ花粉・ダニのアレルギー性鼻炎に対しては舌下免疫療法と呼ばれるアレルゲン免疫療法が行われています。この治療方法は副作用が少なく自宅で服用が可能なため、近年広く取り入れられつつあります。
薬物治療で効果が不十分な場合は、鼻の症状に関係する鼻の中の神経を切る手術などが行われるケースもあります。
子どもがアレルギー性鼻炎と診断された場合、できるだけ症状が現れないようにするため、日常生活でのセルフケアを続けることが大切です。以下では原因別の対策を解説します。
花粉以外のダニ、ハウスダスト、ペットの毛などがアレルゲンとなっている場合は室内の清掃や換気をこまめに行い、アレルゲンを除去するようにしましょう。また、ダニが繁殖しやすいカーペットや、ペットの毛が付きやすい毛足の長いマットなどの使用は避けるようにしましょう。
晴れた日や風が強い日など、花粉が飛びやすい日の外出はなるべく避けるようにしましょう。花粉が飛ぶ期間中は窓を閉める、帰宅時には髪や服の花粉をはらうなどして、家の中に花粉を入れないように心がけましょう。
また、マスクや眼鏡の着用も効果的なため、子どもが嫌がらなければ着用させるようにしましょう。
子どもは自分の言葉で症状をうまく伝えられないことがあります。鼻や目を頻繁にこする、顔をしかめる、口呼吸、いびきなどの症状が出た場合はアレルギー性鼻炎のサインであることがあります。日頃から子どもの様子を注意して観察し、このようなサインを見逃さないようにしましょう。
また、たばこの煙はアレルギー症状を悪化させることが知られています。子どもの近くでの喫煙は控えるようにしましょう。
アレルギー性鼻炎は大人だけではなく、子どもでもかかることがある病気です。症状が続くと子どもの生活に支障をきたし、健全な成長の妨げになることもあります。ただの鼻水、鼻づまりと軽く考えるのではなく、アレルギー性鼻炎のような気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診し、正しい治療や対策を行うようにしましょう。
東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 科長、東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 教授
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