花粉症とは、花粉が原因となって起こるアレルギー疾患の1つです。アレルゲン(花粉などアレルギーの原因となる物質)が体内に入り、アレルギー反応を起こすことで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が出現します。
花粉症の治療にはさまざまな方法が存在します。中でもスギ花粉症では、アレルギー反応を弱める“アレルゲン免疫療法”として、従来は皮下注射による“皮下免疫療法”が行われていました。しかし、現在は“皮下免疫療法”に比べて副作用が少なく、自宅で服用できる“舌下免疫療法”が広く行われるようになってきています。
本記事では、注射で行う“皮下免疫療法”と、経口投与で行う“舌下免疫療法”の2つのアレルゲン免疫療法のについて詳しく解説します。
花粉症を含むアレルギー性鼻炎の治療は、主にアレルギーの原因となる抗原の回避(マスクや手洗い、着替えなど)と薬物療法(抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の内服、ステロイド薬の点鼻など)による対症療法(症状に対する治療)が行われます。しかし、これらの治療では根本的に体質を変えることができません。
そこで、近年は根治的に体質を変える治療法として“アレルゲン免疫療法”が行われています。アレルゲン免疫療法とは、アレルゲンを体内に入れることで患者のアレルギー反応を弱めていく治療方法です。アレルゲン免疫療法は花粉症を根治できる可能性のある唯一の治療法となるため、通年スギ花粉による症状が強い人に適しているといえるでしょう。
“アレルゲン免疫療法”では、従来から皮下注射でアレルゲン(スギやダニのアレルゲンエキス)を投与する“皮下免疫療法”が行われていました。しかし近年、スギやダニに関しては口からアレルゲンのエキスを舌に滴下する“舌下免疫療法”が日本でも普及しつつあります。
従来から行われている皮下免疫療法では、注射でアレルゲンエキスを少量から投与し、徐々に投与量を増やして体をアレルゲンに慣らしていきます。
さまざまな投与方法がありますが、一般的な方法(50%増量法)では初めの4か月間ほど2回投与/週を行います。さらに、次の1か月間は1回投与/週、その次の1か月間は1回投与/2週、その後は1回投与/月を原則として3年以上続けます。これは、耳鼻咽喉科医院や病院に通院して日帰りで注射を受けます。
皮下免疫療法では注射を打つときに痛みが伴うほか、副作用が生じる場合もあります。局所性の副作用として注射部分のかゆみや腫れ、全身性の副作用として発赤や喘息、アナフィラキシーなどが挙げられ、多くの場合、これらの症状は注射後30分以内に現れます。
中でも特に注意すべきなのがアナフィラキシーです。アナフィラキシーとは、アレルゲンなどの侵入により、全身性のアレルギー症状を呈し、ときに生命に危機を与えることもある過敏反応のことをいいます。不整脈や血圧低下、意識混濁といった重篤な症状が見られる場合もあります。全身性の副作用が現れる割合は500~1,000回の注射で1回(0.1~0.2%)程度、重篤なアナフィラキシーにおいては100万回に1回(0.0001%)程度とされています。
副作用の問題から対象年齢が設定され、5歳以上の人が対象となります。また、現在のところ皮下免疫療法で用いられるアレルゲンエキスはスギ花粉のみです。なお、皮下免疫療法を実施している病院は限られていますので、受診を検討する際は事前に医療機関に問い合わせる必要があります。重篤な免疫疾患、重篤な精神障害、重症の喘息、心臓血管疾患を持つ人や妊娠中の人は、皮下免疫療法を受けられない場合があります。
近年広く行われる舌下免疫療法とは、舌の裏側(口の底)にアレルゲンエキスを少量から投与し、徐々に投与量を増やして体をアレルゲンに慣らしていく治療方法です。薬の味は無味か少し甘い味の2種類があります。現在、日本で治療に用いられるアレルゲンエキスには、スギ花粉症に対して用いるスギ花粉のアレルゲンと、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対して用いるダニのアレルゲンがあり、患者は医師の診察と採血による検査を受けたのちに、通常の保険診療で薬を処方してもらいます。決められたスケジュールで薬を増量したのち、維持量になると2週間に一度くらいの診察で治療を継続します。
スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、安全に行うために、スギ花粉の飛散する前後(1月~5月)には開始できません。さらにスギ花粉の飛ぶ3か月以上前から治療を開始すると効果的といわれていますので、6月~10月の間に治療を開始することが推奨されています。
主な副作用として、初回投与や増量時、しばらく休んだ後の投与の際に口の中のはれや、口やのどの違和感を生じることがあり、はれやむくみの強いときには治療が必要になります。そのため、とくに初回の投与時は医療機関で30分程度経過を見てもらうことが重要です。舌下免疫療法は従来の皮下免疫療法に比べてアナフィラキシーのような重い副作用が起きる可能性が低く、小児(5歳くらいから)でも治療を行うことができます。
アレルゲン免疫療法では、皮下、舌下ともに長期の通院が必要です。週1回~月1回の頻回な通院を2~3年以上続ける必要があり、中断してしまうと効果が期待できなくなってしまいます。
また、アレルゲン免疫療法の効果は患者によって異なりますが、1~3年の治療で約70%の人に効果が見られるといわれています。また、治療後数年経過した時点で80~90%の人に効果が持続するとの報告もあります。
スギ花粉症は自然に改善することが少なく、アレルゲン免疫療法を行うことで根治できる可能性があります。また、2014年に保険適用となった舌下免疫療法はアナフィラキシーなどの副作用が少なく、自宅で服用できるというメリットがあります。現在の治療の主流である、生活での抗原回避や対症的な薬物療法と並行して治療を受けることも可能です。
スギ花粉症や通年性アレルギー(ダニ)に対してアレルゲン免疫療法を受ける際には、治療期間が長年におよぶこと、さらに効果が見られない可能性や副作用のリスクもあるため、医師とよく相談したうえで実施の是非を決めるようにしましょう。
東北大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 科長、東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 教授
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