インタビュー

副鼻腔炎の手術療法―内視鏡下手術の発展

副鼻腔炎の手術療法―内視鏡下手術の発展
澤津橋 基広 先生

九州大学耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師

澤津橋 基広 先生

副鼻腔炎の治療で外科的治療の対象となるケースは、薬物治療で有効性のない場合などに限られます。副鼻腔炎の外科的治療は、内視鏡の普及によって大きなメリットをもたらしました。九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科講師の澤津橋基広先生に副鼻腔炎の手術療法についてお話をうかがいました。

副鼻腔炎の手術について

副鼻腔炎の治療には、薬物療法、鼻吸引、鼻洗浄、ネブライザー療法などいくつかの保存的療法があります。急性副鼻腔炎においては、以下の表に示すように、重症度に応じて治療法を選択します。これはガイドラインを基に、臨床の現場で私が採り入れている治療法ですが、この表からもわかるように、手術が検討されるのは重症の急性副鼻腔炎で、抗菌薬で効果が得られない場合ということになります。

 

 

軽症

中等症

重症

第一選択

 

非投与5日間

 

メイアクト/フロモックス/トミロン高用量

 

 

ジェニナック常用量5~7日間

 

 

 

メイアクト/フロモックス/トミロン高用量

 

ジェニナック常用量5日間

 

第二選択

 

メイアクト/フロモックス/トミロン高用量

 

ジェニナック常用量5~7日間

 

 

CTRX1日1回点滴  3日間

第三選択

CTRX1日1回点滴  3日間

手術

一方、慢性の副鼻腔炎では、薬物治療(マクロライド療法)を3か月ほど行っても改善がみられない場合に手術を考慮します。

副鼻腔炎の手術は、内視鏡下鼻副鼻腔炎手術(ESS)の普及によって大きく変わりました。従来の手術では上唇の裏の部分(歯ぐき)を切開して行っていましたが、現在は鼻から挿入した内視鏡でポリープを切除したり、粘膜を除去したりする内視鏡下手術が一般的となりました。

内視鏡の普及により、術後の痛みが軽減したり、顔の腫れが低減したり、さらには入院期間も短縮されたりと、患者さんにとっては大きなメリットが生まれました。また施術側にとっても、昔は肉眼でしか見ることができなかった鼻の奥深くを拡大映像としてモニターに映し出しながら手術ができるようになり、より安全で確実に手術ができるようになりました。

内視鏡手術では、先端に装着したドリルで組織を破砕すると同時に吸引もできるシェーバーシステムという器機を使用します。

九州大学病院では、これらリスクの低減に向けてさまざまなテクノロジーを採り入れています。その中のひとつが「3D内視鏡」です。副鼻腔炎手術時の道具としては九州大学病院にしかないもので、3Dメガネを装着することで奥行きを把握することができ、よりバーチャルな手術を行うことが可能となりました。また、この3D内視鏡は、後身の育成のツールとして医学教育や研修などの場面でも活用されています。

そのほかにも、リアルタイムに手術中の位置を知らせるナビゲーションシステム(※写真参照)を導入することで、手術の安全性と手術時間の大幅な短縮を可能としました。手術がより高度で難しいような場合には、最先端医療工学とも連携しています。

ナビゲーションシステム(旧式):写真提供 澤津橋基広先生
ナビゲーションシステム:写真提供 澤津橋基広先生

医療技術の進歩によって、副鼻腔炎の手術はより安全にできるようになりましたが、同時に施術者も日々、技術の向上に向けた取り組みを行っています。そのひとつとして、我々が行っているのが手術時の映像録画です。担当した医師は、術後必ず録画映像を5~7分に編集して、術後カンファレンスのときにビデオ映像のプレゼンテーションを行います。特に若い医師にとっては、リスクのある領域や、どんな操作が合併症を起こしやすいのか、といった手術手技を繰り返し映像で学ぶ機会ともなっています。

ナビシステム九大式
ナビゲーションシステム(九大式):写真提供 澤津橋基広先生

手術後の注意点について

手術後、副鼻腔の粘膜が再生されるまでにはおよそ1か月かかります

若年者の場合だと3週間程度の場合もありますが、それでも最低1か月は様子をみておく方が安心です。

副鼻腔炎の手術のあとは鼻の中にかさぶたができるため、それが気持ち悪くて鼻を強くかむ患者さんがおられます。しかし、手術後は粘膜がまだ張っていない状態なので、そこから汚染した空気や鼻汁が目や頭部に侵入して感染を起こしやすいのです。感染すると顔が腫れたり、ひどくなると、感染が遷延化して目の機能に異常を及ぼしたりすることもあるため、手術後は鼻を強くかまないことが重要となります。また、粘膜が張るまでは重いものを持たない、腹圧をかけないといったことにも注意しなければなりません。