ぼつりぬすしょう

ボツリヌス症

同義語
ボツリヌス中毒
最終更新日
2023年09月07日
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2023/09/07
更新しました
2020/08/31
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が産生する毒素が体内に入り込むことで全身の神経麻痺を引き起こす病気です。発症すると全身の神経に影響が及ぶため、運動麻痺が生じるだけでなく呼吸機能にも影響を及ぼし、適切な治療を行わなければ死に至るケースもあります。

ボツリヌス菌は土壌など自然環境の中に多く存在しますが、ボツリヌス症の多くはボツリヌス菌の毒素が付着した食物を摂取することで発症します。そのほかにも、ボツリヌス菌が傷口から体内に侵入することによって発症するケースなどもあり、消化管の機能が未熟な乳幼児ではボツリヌス菌の毒素を摂取しなくても、ボツリヌス菌自体を摂取すると体内で毒素が産生されてしまい発症することがあります。

治療方法は発症した年齢や重症度などによって異なりますが、早急な対処が必要です。

原因

ボツリヌス症はボツリヌス菌が産生する“ボツリヌス神経毒素”が体内に入り込むことにより、神経が正常に機能するのに必要なアセチルコリンと呼ばれる物質の産生が抑制されるため、全身の神経麻痺が引き起こされます。

ボツリヌス症は発症の仕方によって大きく4つに分けられています。

もっとも多いのは、ボツリヌス神経毒素が付着した食品を摂取することによる“ボツリヌス食中毒”です。ボツリヌス菌は自然界に多く存在する細菌であり、空気がない環境の中で毒素を産生する性質があります。そのため、果物、野菜、肉、魚などの缶詰やレトルト食品が主な原因となります。

通常、ボツリヌス菌自体を摂取しても体内で毒素が産生されることはありません。しかし、消化管の機能が未熟な1歳未満の乳幼児や消化管の病気などがある成人では、ボツリヌス菌が付着した食品を摂取すると消化管の中で毒素が産生されてボツリヌス症を発症することがあります。このようなパターンのボツリヌス症を“乳児ボツリヌス症”や“成人腸管定着ボツリヌス症”と呼びます。原因となる食品としては、はちみつが代表例として挙げられます。

また、ボツリヌス症は傷口に入り込んだボツリヌス菌が傷口の中で毒素を産生することで発症することもあります。このようなボツリヌス症を“創傷ボツリヌス症”と呼びますが、日本では現在のところ発症者の報告は上がっていません。

症状

ボツリヌス症は基本的に原因となる食品を摂取してから18~48時間ほどの潜伏期間を経て、まぶたが上がらない、ものが二重に見える、ものを飲み込みにくくなる、ろれつが回りにくくなるといった神経症状が現れます。さらに時間が経過すると、脱力が生じるようになり、呼吸筋が麻痺して呼吸困難に陥るケースも少なくありません。また、自律神経の機能にも影響を及ぼすため、唾液や汗の分泌が減少するなどの症状もみられるようになります。

なお、ボツリヌス神経毒素やボツリヌス菌を口から摂取することによって発症するケースでは、下痢、嘔吐、腹痛などの消化管症状がみられ、これらの症状は便秘となることもあります。

症状の重症度は原因となるボツリヌス菌のタイプや年齢などによって異なりますが、軽度な神経障害のみの場合もあれば、呼吸困難が生じて人工呼吸器の装着が必要になるような場合もあります。

また、これらの症状は1か月以上続き、改善するまでに1年以上かかることもあります。

検査・診断

ボツリヌス症が疑われる場合は、以下のような検査が必要となります。

細菌学的検査

ボツリヌス症の診断のために必須であり、血液、便、吐物、腸内容物、傷口から出ている浸出液などの中にボツリヌス毒素があるかを調べます。

また、食品が原因と考えられる場合には原因食品を特定するための検査が必要となります。

血液検査

炎症の程度など全身の状態を把握するために行います。また、発症から数か月後にはボツリヌス抗毒素抗体が検出できるようになるため、診断の材料にもなります。

画像検査

ボツリヌス症は神経疾患との鑑別が難しい場合も多く、脳に異常がないか調べるためにCTやMRIなどによる画像検査を行うことがあります。

治療

ボツリヌス症は早急な対処が必要なため、発症が強く疑われた場合には早急に毒素を中和するための乾燥ボツリヌスウマ抗毒素の投与を行います。そのうえで、創傷ボツリヌス症の場合は、毒素が産生されていると考えられる傷口の組織を切除する“デブリドマン”や抗菌薬の投与も行われます。

また、ボツリヌス症は呼吸困難をはじめさまざまな神経症状が現れるため、人工呼吸器の装着など症状に対する対症療法を並行して行います。

予防

ボツリヌス症の多くは、ボツリヌス神経毒素が付着した食品を摂取することによって発症します。ボツリヌス毒素は熱に弱いため、食品をしっかり加熱すること、自家製の保存食を作るときは使用する瓶などの容器を煮沸すること、何らかの変化が見られる保存食は摂取しないことなどの対策で予防することができます。

一方、ボツリヌス菌自体は熱に非常に強く加熱しても死滅しません。そのため、乳児ボツリヌス症を起こし得る1歳未満の乳児や成人腸管定着ボツリヌス症を起こし得る基礎疾患がある方は、はちみつなどのボツリヌス菌が混入している可能性がある食品の摂取は控えるようにしましょう。

また、創傷ボツリヌス症は傷口に付着した泥などは速やかに洗い流すことが大切です。

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