ぼつりぬすしょくちゅうどく

ボツリヌス食中毒

最終更新日:
2020年08月31日
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2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

ボツリヌス食中毒とは、ボツリヌス菌が産生した毒素によって引き起こされる食中毒です。ボツリヌス菌は酸素が少ない環境中を好むので、真空パック詰の食品や缶詰、発酵食品などにボツリヌス菌や芽胞が含まれていると、食材が増殖した菌により産生された毒素で汚染されてそれを摂取した場合に食中毒を起こすことになります。

ボツリヌス毒素は神経麻痺を引き起こすので、ボツリヌス食中毒を発症すると脳神経を含めた麻痺症状が現れます。呼吸を司る筋肉が影響を受けることもあり、呼吸障害から最悪、死に至るケースもあります。ボツリヌス食中毒の治療では、呼吸障害がある場合には呼吸器によってこれをサポートします。またボツリヌス毒素の抗血清を用いて治療されることもあります。

原因

ボツリヌス食中毒では、ボツリヌス菌そのものでなく、菌が排出する物質(毒素)が腸から吸収されてヒトの神経細胞に作用し諸症状を起こす原因になります。

ボツリヌス菌はその生活環の中で芽胞と呼ばれる形態を取ります。ボツリヌス菌の芽胞は熱に対して非常に強く、100℃の加熱のみでは芽胞を壊すことができません。ボツリヌス菌の芽胞は環境中に広く存在しているため、それが付着した野菜などを使って加熱料理して余った食材を再加熱処理しても芽胞が生き残っている可能性があります。この場合、適温になると食材中で芽胞からボツリヌス菌が成長し、毒素を産生することで、その毒素を含む食品を摂取した場合に食中毒を起こします。

なお1歳未満の赤ちゃんがボツリヌス菌に感染すると、消化管内でボツリヌス菌が毒素を産生して諸症状を呈するようになります。こうした発症様式をとるものを乳児ボツリヌス症と呼び、ときに死亡例が出ることもあります。乳児の場合には腸内細菌叢が未熟なため、小腸でボツリヌス菌の定着・増殖が阻害されないためと考えられています。

またボツリヌス菌は酸素が少ない環境を好みます。そのため、真空パック詰の食品や缶詰、発酵食品など空気に触れにくい食品がボツリヌス菌で汚染されていると、そのような条件下でボツリヌス菌が毒素を産生し、その毒素で汚染された食品の摂取が食中毒の原因となることもあります。

症状

ボツリヌス毒素に汚染された食品を摂取して、およそ半日から2日後に症状が現れます。筋肉を動かすにはアセチルコリンと呼ばれる伝達物質が重要ですが、ボツリヌス毒素はこの伝達物質の働きを阻害します。そのため、筋肉が思うように動かず麻痺症状が現れるのです。

たとえば、まぶたが落ちる眼瞼下垂、ものが二重に見える複視、飲み込みや発語が悪くなる、上肢や下肢の麻痺などの影響があります。横隔膜を始めとした呼吸筋も麻痺してしまい呼吸機能障害を呈することもあるため、ときに呼吸困難などを起こすこともあります。

検査・診断

ボツリヌス食中毒が疑われる場合、血液や便を用いて菌の有無や毒素のタイプの同定などを実施します。

治療

ボツリヌス食中毒の治療では、ボツリヌス毒素を中和するため抗血清が使用します。ボツリヌス菌に対する抗生物質は、ボツリヌス菌が壊れたときに菌体内の毒素が流出して症状を増悪させる危険性があるので使用を控えることになります。また呼吸障害が進行している場合には、人工呼吸器による呼吸管理を実施します。

ボツリヌス食中毒は、食品の取り扱い方を徹底することで予防できます。ボツリヌス菌体およびその毒素は加熱消毒(100℃で数分)で壊すことができるので、調理時に十分な加熱が重要になります。また芽胞は耐熱性であるため、加熱したからといって安心しないで、食事は食べ切れる分だけ作って、なるべく作りだめしないようにする、また余った場合には冷蔵保存するなど菌が増殖しにくい環境を心がけることも重要です。

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