原因
ボツリヌス食中毒では、ボツリヌス菌そのものでなく、菌が排出する物質(毒素)が腸から吸収されてヒトの神経細胞に作用し諸症状を起こす原因になります。
ボツリヌス菌はその生活環の中で芽胞と呼ばれる形態を取ります。ボツリヌス菌の芽胞は熱に対して非常に強く、100℃の加熱のみでは芽胞を壊すことができません。ボツリヌス菌の芽胞は環境中に広く存在しているため、それが付着した野菜などを使って加熱料理して余った食材を再加熱処理しても芽胞が生き残っている可能性があります。この場合、適温になると食材中で芽胞からボツリヌス菌が成長し、毒素を産生することで、その毒素を含む食品を摂取した場合に食中毒を起こします。
なお1歳未満の赤ちゃんがボツリヌス菌に感染すると、消化管内でボツリヌス菌が毒素を産生して諸症状を呈するようになります。こうした発症様式をとるものを乳児ボツリヌス症と呼び、ときに死亡例が出ることもあります。乳児の場合には腸内細菌叢が未熟なため、小腸でボツリヌス菌の定着・増殖が阻害されないためと考えられています。
またボツリヌス菌は酸素が少ない環境を好みます。そのため、真空パック詰の食品や缶詰、発酵食品など空気に触れにくい食品がボツリヌス菌で汚染されていると、そのような条件下でボツリヌス菌が毒素を産生し、その毒素で汚染された食品の摂取が食中毒の原因となることもあります。
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