かいようせいだいちょうえん

潰瘍性大腸炎

最終更新日:
2020年08月31日
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2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

潰瘍(かいよう)性大腸炎とは、大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じ、“びらん”や“潰瘍”といった病変が形成される病気のことです。発症すると腹痛、下痢、血便(便に血液が混ざる)などの症状が現れ、重症な場合は発熱、体重減少、貧血など全身にさまざまな症状が引き起こされます。日本では難病の1つに指定されており、発症頻度は10万人に100人程度とされています。また、発症に男女差はなく、20歳代頃の比較的若い世代から高齢者まで幅広い年代で発症する可能性があるのも特徴の1つです。

潰瘍性大腸炎の症状の現れ方はさまざまであり、よくなったり悪くなったりを繰り返すパターンもあれば、症状がずっと続くパターン、急激に重度な症状が現れるパターンなどもあります。治療の主体は大腸の炎症を鎮めたり、過剰な免疫のはたらきを抑制したりする薬による薬物療法ですが、薬物療法で十分な効果が得られない場合などは大腸を全て摘出する手術を行うことも少なくありません。

また、潰瘍性大腸炎は、発症して7~8年ほど経過すると大腸がんを併発するケースもあります。そのため、潰瘍性大腸炎と診断された場合は症状がよくなっても適切な治療と検査を続けていくことが大切です。

原因

潰瘍性大腸炎の明確な発症メカニズムは現在のところ解明されていません。

一方で、潰瘍性大腸炎は同じ家系内に発症者がいるケースも多く、何らかの遺伝子の異常など遺伝的な要因が関与していることが指摘されています。また、食生活の乱れによる腸内環境の悪化によるという説や、免疫作用が過剰にはたらいて腸の粘膜を攻撃してしまうという説なども挙げられているのが現状です。

いずれにせよ、潰瘍性大腸炎は1つの原因によって引き起こされるのではなく、遺伝、食生活、免疫異常などさまざまな要因が重なり合って発症すると考えられています。

症状

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が生じ、粘膜が荒れてびらんや潰瘍などの病変が形成されるようになる病気です。そのため、発症すると下痢や血便、おなかの痛みなどの症状を引き起こします。また、重症化すると発熱や体重減少などの全身症状を引き起こし、粘膜からの出血が続くと貧血に陥ってめまいや動悸、息切れなどの症状が現れるようになります。

潰瘍性大腸炎では、これらの症状がいったんよくなっても再発を繰り返すことが多く、さらに急激に強い症状が現れて大腸の壁に穴が開くなど命に関わるような症状を引き起こすこともあります。

なお、潰瘍性大腸炎は大腸以外の部位に大きな症状を引き起こすことは少ないとされていますが、中には発疹(ほっしん)、関節や目の炎症などまったく別の部位にも症状を引き起こすことがあるとされています。さらに、発症してから7~8年以上経過すると、大腸がんを併発するケースも増えることが分かっています。

検査

症状などから潰瘍性大腸炎が疑われた場合は、次のような検査を行います。

血液検査

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症を引き起こすばかりでなく、粘膜にダメージを与えて出血が生じることがあります。そのため、潰瘍性大腸炎が疑われるときは、炎症や出血による貧血の程度を評価するために血液検査を行うのが一般的です。

また、潰瘍性大腸炎は大腸がんと似た症状が現れ、場合によっては大腸がんを併発しているケースもあるため、腫瘍(しゅよう)マーカーの有無を調べることもあります。

画像検査

大腸の状態を評価するため、X線やCTなどによる画像検査を行います。また、大腸内部の状態を詳しく調べるには、大腸内視鏡検査を行うのが必須です。潰瘍性大腸炎の確定診断には、内視鏡検査で病変の一部を採取し、顕微鏡で組織の状態を詳しく調べる病理検査を行う必要があります。

また、内視鏡検査は診断時だけでなく、診断が確定した後でも病状の変化を調べる目的で繰り返し行っていくことが必要です。

治療

潰瘍性大腸炎と診断された場合は、症状や重症度に応じて次のような治療が行われます。

薬物療法

潰瘍性大腸炎の治療の主体は薬物療法です。

使用される薬は、大腸に生じた炎症を抑えたり、過剰に作用する免疫のはたらきを抑えたりする5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節剤・免疫抑制剤・生物学的製剤などです。それぞれの症状や副作用の有無などを注意深く観察しながら治療が進められていきますが、潰瘍性大腸炎は再発を繰り返しやすいため、症状がよくなった後も薬物療法の継続が必要なケースも少なくありません。

血球成分除去療法

血液中から過剰にはたらいている白血球を取り除く治療法です。

薬物療法で効果が得られず、強い症状が現れている際に過剰な免疫の作用を抑える目的で行われることがあります。

手術

薬物療法などを行っても十分な効果が得られない場合、副作用が強く薬物療法が続けられない場合、大腸に穴が開いたり、大腸がんを併発する疑いがあったりする場合などは手術によって大腸全てを摘出する手術が行われます。

食事療法

潰瘍性大腸炎に対して、食事療法そのものが腸の炎症を改善させるという科学的な根拠はありません。しかし、患者さんの体質によっては、特定の食事が下痢や腹痛などを引き起こすことがあるため、症状の悪化を防ぐためには、体質に合わない食べ物を避けることは大切です。下痢や腹痛を引き起こしやすい代表的なものは、牛乳や乳製品、香辛料などの刺激物、脂肪分を多く含むもの、炭酸飲料やアルコール飲料などです。ただし個人差が大きく、これらを摂取してもまったく症状が出ない方もいます。そのため、何を、どれくらい摂取したら症状が出るのかを把握しておくとよいでしょう。

予防

潰瘍性大腸炎は現在のところ明確な発症メカニズムが分かっていないため、効果のある予防方法も確立していないのが現状です。

しかし、潰瘍性大腸炎は、腸内環境の悪化なども原因の1つであると考えられています。発症を予防するにはバランスよく規則正しい食生活を心がけるようにしましょう。

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