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腹痛や下痢を繰り返す、IBD(炎症性腸疾患)とはどんな病気?

腹痛や下痢を繰り返す、IBD(炎症性腸疾患)とはどんな病気?
太田 章比古 先生

医療法人愛知会 家田病院 副院長・IBD部長

太田 章比古 先生

藤原 恵子 さん

医療法人愛知会 家田病院 看護部長

藤原 恵子 さん

目次
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とくに思い当たる原因がないのに、お腹の痛みや下痢が続いていませんか。便に血が混じったり、お尻が腫れたりする場合、IBD(炎症性腸疾患)の可能性が考えられます。IBD(炎症性腸疾患)とは、潰瘍性大腸炎クローン病を含む、原因が明らかになっていない腸の病気の総称です。進行すると、腸を切除するといった手術が必要になることもあるため、気になる症状があるときは病院で相談することが大切です。

今回は、IBD(炎症性腸疾患)とはどのような病気なのか、家田病院副院長・IBD部長の太田章比古先生、看護師の藤原恵子さんにお伺いしました。

IBD(炎症性腸疾患)とはどんな病気?

腸に炎症を繰り返す原因不明の病気

腸に炎症を繰り返す病気を「IBD(炎症性腸疾患)」といいます。IBD(炎症性腸疾患)には、「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」などがあり、いずれも腹痛や下痢などを繰り返す病気です。

IBD(炎症性腸疾患)が起こる原因は、はっきりとは分かっていません。しかし、近年の研究では、人間の免疫を担当する細胞のはたらきが過剰になって、自分自身の正常な細胞や組織に攻撃をしてしまうことや、腸内細菌のバランスなどが、IBD(炎症性腸疾患)の発症に関わることが分かってきています。

潰瘍性大腸炎─大腸の粘膜に炎症や潰瘍、ただれができる病気

 

大腸炎

潰瘍性大腸炎は、IBD(炎症性腸疾患)のひとつで、大腸の粘膜に炎症や潰瘍、ただれができる病気です。2015~2016年に行われた全国疫学調査によると、日本の潰瘍性大腸炎の患者さんは、およそ22万人と推計されています1)。10代~30代の若い方に多い病気で、50歳以上の方でも発症することがあります。

大腸の粘膜に沿って、直腸から連続して広がるような浅い潰瘍が生じ、主に腹痛、下痢、肛門からの出血などが起こります。調子のよいとき(寛解期)と悪いとき(活動期)があり、症状の現れ方は患者さんによってさまざまです。症状が出ない時期のほうが長いという方が多いようです。調子のよい時期(寛解期)に大腸の粘膜が回復し、健康な方と変わらないくらいの状態にまで炎症が治まる方もいらっしゃいます。

また、潰瘍性大腸炎は、気持ちが落ち込んでいるときや、自律神経のバランスが崩れているときに、症状が出ることが多いといわれています。たとえば、生活環境に変化がある春、気温の寒暖差が大きい初秋、衝撃的な映像や写真を見たときなどに、急に症状が悪化することがあります。

クローン病─消化管のどの部分にも炎症や潰瘍ができる病気

クローン病

クローン病は、IBD(炎症性腸疾患)のひとつで、口からお尻までの消化管のどの部分にも炎症や潰瘍が発生する病気です。2015~2016年に行われた全国疫学調査によると、日本のクローン病の患者さんは、およそ7万人と推計されています1)。多くの患者さんが、10代後半から20代までに発症します。男女比は2対1で男性が多いです。

大腸や小腸などに、深い傷のような潰瘍が生じ、腹痛、下痢、肛門からの出血、体重減少などが起こります。炎症がみられる場所によって、肛門の痛みや腫れ、肛門が狭くなって便が出にくくなる狭窄(きょうさく)などが起こることもあります。調子のよいとき(寛解期)と悪いとき(活動期)を長期にわたって繰り返し、症状の現れ方は患者さんによってさまざまです。

また、クローン病は、切れ痔のような傷が肛門の皮膚に生じることがあり、そこから感染を起こして膿がたまると、肛門が腫れて強い痛みが引き起こされます。当院では、お尻の痛みや腫れがある若い男性に、下痢や体重減少がみられる場合、まずはクローン病の可能性を考えて診察を行っています。

IBD(炎症性腸疾患)の検査

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

IBD(炎症性腸疾患)の診療では、主に、カメラのついた細い管を肛門から挿入して大腸を観察する「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」を行います。クローン病にかかっていると、腸の粘膜に深い傷がみられ、潰瘍性大腸炎にかかっていると、大腸の粘膜がやけどしたように真っ赤になっている様子がみられます。クローン病で生じる深い傷は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)だけではみつけられないことがあり、ほかの検査が必要になることが多いですが、潰瘍性大腸炎は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)によって症状を確認することができます。

小腸の検査

消化管のさまざまな部分に炎症が起こる可能性があるクローン病は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)では、炎症している部分までカメラが届かないことがあります。クローン病が疑われるときは、主に小腸の検査を行います。小腸の検査方法には、造影剤を飲んでX線撮影を行う「小腸造影検査」や、カプセル型の内視鏡を飲んで行う「小腸カプセル内視鏡検査」があります。腸管が狭くなる合併症が起こっている患者さんは、カプセル型の内視鏡が詰まってしまう恐れがあるため、基本的には小腸造影検査を実施することが多いです。

IBD(炎症性腸疾患)の早期発見と治療の重要性

お腹の痛みや下痢が続いたり、健康診断などの便潜血検査(検便)で異常を指摘されたりしたら、潰瘍性大腸炎やクローン病の可能性が考えられます。どちらも悪性の病気ではなく、基本的に命に関わることはありません。しかし、進行すると、腸が詰まる腸閉塞(ちょうへいそく)や、腸が破れる穿孔(せんこう)などの合併症を引き起こし、手術が必要になる場合があります。できるだけ早く受診し、症状をコントロールすることが大切です。

とくにクローン病は、消化管の炎症が顕著にみられ、消化管の筋層に及ぶ深い潰瘍(深堀潰瘍)ができやすい病気です。傷ついた部分が自然に元に戻ることはないため、症状が悪化して日常生活に大きな支障が生じる場合、腸を切除する大きな手術が必要になる可能性があります。下痢やお尻の症状について相談するのは恥ずかしいと感じるかもしれませんが、IBD(炎症性腸疾患)に詳しい医師に相談し、診断がついたら早く治療を始めることが大切です。

【参考文献】

1)西脇祐司,他. 潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者数推計に関する全国疫学調査 調査結果報告. 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)分担研究報告書. 2017:62-76.