便潜血とは、便に血が混ざっていないか調べる検査です。食道や胃、腸といった消化管で炎症や潰瘍、腫瘍(ポリープ・がん)などが生じた場合に、便に血が混じることがあります。便潜血検査はこのような消化管の病気の有無を推し量るのに有用で、簡易的に行えることから、健康診断や人間ドックでも利用されています。
消化管からの出血量が多いと便が赤色や黒色に変化し、血便となって肉眼で分かりますが、出血量が少ない場合には肉眼で確認することができません。便潜血検査では、採取した便に試薬を混ぜてその変化をみる方法が用いられ、これによって肉眼で確認できないような出血も検出することができます。
ただし、便潜血検査で陽性になったからといって、必ずしも消化管から出血しているとは断定できません。トイレでいきんだ際に肛門の皮膚が切れる切れ痔(裂肛)で便に血が混じることがあるほか、女性では月経血が混入して陽性を示すこともあります。
しかし、大腸がんをはじめとする消化管の病気の可能性もあるため、便潜血で陽性が出た場合には精密検査につなげることが大切です。
便潜血検査は、一般的な健康診断や人間ドックのほか、がん検診でもよく行われています。
また、腹痛や貧血といった症状を伴うなど、消化管からの出血をきたす病気が疑われるときに検査を行うこともあります。
ただし、便潜血検査で出血の有無は分かりますが、出血の原因となる病気を特定することはできません。病気を特定するためには精密検査が必要です。
便潜血検査には、化学法と免疫法の2つの方法があります。いずれも便を採取して検査を行いますが、採取した便からどのように血液を検出するかで方法が異なります。
血液に含まれるヘモグロビンの活性を利用し、化学的に色素の変化で潜血の有無を判定する方法です。
下部消化管(小腸・大腸・肛門)だけでなく、上部消化管(口腔・食道・胃・十二指腸)からの出血も検出することができます。
ヒトのヘモグロビンに対して特異的に作用する試薬を用いて、抗原・抗体の反応で潜血の有無を判定する方法です。
消化酵素などの影響でヘモグロビンが変性してしまうため、上部消化管からの出血に対する検出率は低下しますが、下部消化管からの出血では化学法よりも高感度に検出します。現在、日本におけるがん検診などでは免疫法が主流となっています。
化学法では、食事で摂取した肉類の血液や緑黄色野菜、ビタミンC、鉄剤などによって陽性になる場合があるため、検査前3日程度は食事や薬剤の制限が必要です。免疫法では食事や薬剤の影響を受けないため、検査前の制限は特にありません。
現在、日本におけるがん検診などでは免疫法が主流となっていますが、化学法を採用している医療機関もあります。検査前の注意点については事前に確認しておきましょう。
また、生理中は経血が便に混入して正しい結果が得られない場合があります。検査日と生理が重なる場合には、スタッフに生理中である旨を申し出るようにしましょう。一般的には、生理終了後にあらためて検査を行うことになります。
検査で用いる便は、専用の採便棒を使用し便の表面をこすり取って採取しますが、便中に血液が均一に付着しているわけではありません。そのため、便の表面のさまざまな箇所をこすり取ることが大切です。
また、採便の量が多すぎると、血液が混入していなくても陽性になる場合があるため、適量を採取するようにしましょう。
便を採取することに手間取らなければ、それほど時間はかからないでしょう。排便後に便を採取する検査のため、痛みが伴うこともありません。
検査結果は、陽性(+)や陰性(-)で表されます。
免疫法では、精度を上げるために通常2日法が採用され、2日に分けて計2回便を採取します。その結果、2日とも陰性であれば問題なし、1日分でも陽性が出れば要精密検査となります。
便潜血検査は通常2日に分けて行われ、1日分でも陽性が出ると消化管からの出血を疑い、出血の原因となる病気を調べるために精密検査がすすめられるでしょう。
精密検査でよく行われているものには、肛門から内視鏡を挿入して腸内を観察する大腸内視鏡検査と、腸に造影剤を注入してX線撮影を行う注腸造影検査があります。
そのほかに、CTを用いた大腸CT検査や大腸カプセル内視鏡検査もあります。ただし、大腸カプセル内視鏡検査は、以前に大腸内視鏡検査を行った際に挿入困難であった場合や、癒着により挿入困難が予想される場合に限られています。
また、このような検査でがんが疑われる病変(病気による変化が起きている箇所)が見つかった場合には、良性・悪性を鑑別するために、大腸内視鏡検査で病変の組織の一部を採取し顕微鏡で観察する病理検査が行われることがあります。
便潜血検査で陽性となった場合には、何らかの消化管の病気を発症している可能性があるため、精密検査を受けるようにしましょう。
便潜血検査は特に大腸がんの発見を目的に利用されていますが、大腸がんは発症しても自覚症状が乏しく、健康診断や人間ドックをきっかけに初めて発見されるケースが少なくありません。そのため、精密検査でがんではないと分かった場合でも、安心せず定期的に健診を受けることが大切です。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。
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