潰瘍性大腸炎とならび、炎症性腸疾患の代表的疾患として知られている「クローン病」。両疾患共に下痢や腹痛などの症状を呈しますが、クローン病は潰瘍性大腸炎とは異なり、大腸だけでなく、小腸や口腔内など、消化管のいたるところに慢性的な炎症が多発するという特徴を持っています。クローン病の症状や日本における患者数について、広島大学第一外科の大毛宏喜先生にお話を伺いました。
クローン病は、冒頭でも述べたように、口腔内・小腸・大腸など、消化管に炎症をきたす病気です。痔瘻がきっかけで診断される場合や、胃や食道に潰瘍などが生じることもあるため、胃カメラによりクローン病だとわかることもあります。
2013年度のデータによると、日本における患者数は潰瘍性大腸炎が16.6万人、クローン病が3.8万人とされています。潰瘍性大腸炎よりもさらに若い10代後半から20代の若年者に好発する病気で、発症年齢のピークは男性が20~24歳、女性が15~19歳と示されています。また、2:1の割合で男性の方がかかりやすい病気でもあります。しかし、なぜこのような性差が生じるのかについては、現在のところわかっていません。
クローン病の症状には以下のようなものがあります。
特に、繰り返す腹痛や下痢は7~8割の患者さんに認められる典型的な症状です。「肛門周辺症状」とは、具体的には難治性の痔瘻や肛門痛などを指します。また、全身倦怠感や食欲不振、口内炎なども、よくみられる症状の一つです。これらに体重減少や発熱を伴う場合はクローン病を疑います。
前項のような症状が認められ、クローン病が疑われる場合は、まず下部消化管内視鏡(大腸ファイバー)や注腸X線造影(大腸バリウム検査)などの消化管検査を行います。下部消化管内視鏡検査で、一定の連続性なく広がる潰瘍(敷石状、縦走潰瘍)や、腸の狭窄(腸の内腔が狭くなること)、瘻孔などを認めた場合は、クローン病の可能性が高いといえます。
また、病変の進行をみるために、小腸X線検査や上部消化管内視鏡検査もあわせて行います。
このほか、腹部造影CT検査や超音波検査などで、全身の精密検査を行うことで、腸管の腫れや炎症の程度をみることもできます。クローン病では、腸管の一部が破れ、膿瘍(膿溜まり)が生じることもあるため、腹部の検査はこれを見つけるためにも有用だといえます。
改善と再燃を繰り返すことがありますが、内科的治療の進歩により炎症をコントロールすることができるようになってきました。時に外科的治療が必要な場合もあります。この組み合わせで上手く病気と付き合っていけば、日常生活に支障はありません。
広島大学病院 感染症科教授
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