インタビュー

炎症性腸疾患の症状について

炎症性腸疾患の症状について
平井 郁仁 先生

福岡大学筑紫病院 准教授 、福岡大学筑紫病院 炎症性腸疾患センター 部長、日本大腸検査学会 会員

平井 郁仁 先生

この記事の最終更新は2016年04月20日です。

慢性的に起こる下痢や腹痛は日常生活にも大きなストレスとなってしまいます。若い人に多く発症する炎症性腸疾患は、生活スタイルに応じた治療が求められ、生活の質を向上させる対策も必要となってきます。福岡大学筑紫病院消化器内科の平井郁仁先生に炎症性腸疾患の症状についてお話をうかがいました。

炎症性腸疾患は、大腸および小腸に炎症または潰瘍を起こす病気の総称で、主な疾患にはクローン病潰瘍性大腸炎のふたつがあります。潰瘍性大腸炎がほぼ大腸にのみ起こるのに対して、クローン病は口腔から肛門に至るまで全ての消化管に起こるという違いがあります。しかし、クローン病と潰瘍性大腸炎は似通った共通点があることから、ときに判別が難しく、互いの疾患が間違って診断されたり、経過の途中で診断が変更されたりすることも少なからず起きています。

原因は不明ですが、遺伝的な素因に加えて、腸内細菌やその他のさまざまな要因に対して免疫が過剰に反応することで発症するものと考えられています。若年層での発症が多いため、高校進学、大学入試、就職や結婚、女性であれば妊娠や出産といった人生の節目のイベントに応じた治療戦略が求められるというのも炎症性腸疾患の特徴です。そういう意味においては、患者さんひとりひとり目指す目標も最善の治療法も異なってきます。

病気の初期であれば症状が持続したあとに治まることもありますが、完全に回復することは少なく症状は繰り返し現れます。好発部位は小腸と大腸ですが、右下腹部痛などがある場合には、虫垂炎と間違われることも少なくありません。腸閉塞を起こすこともあり、腸を拡げるための処置や外科手術が必要となる場合もあります。

炎症による合併症としては、腸に穴があく「穿孔(せんこう)」や腸と腸あるいは腸とほかの臓器がくっついてしまう「癒着(ゆちゃく)」のほか、腸と腸あるいは腸とほかの臓器がつながってしまう「瘻孔(ろうこう)」を形成したり、腸が狭くなる「狭窄」やふさがってしまう「閉塞」を起こしたりします。

クローン病では半数以上の患者さんに肛門病変がみられ、瘻孔や腫瘍は15%程度に現れます。そのほかにも小腸の障害による消化吸収の異常のためにおきる体重減少をはじめ、全身倦怠感や食欲不振、発熱などの全身症状がみられます。また、アフタ性口内炎といって口腔内にびらん(ただれ)ができたり、白目部分に炎症が起きたりするほか、関節の炎症や皮膚病変などを呈することもあります。

重症になると激痛や脱水などを起こしたり、穿孔や難治性の直腸や肛門病変などによって人工肛門が必要となったりする場合もあります。人工肛門造設術が必要となった場合には、術後の生活の変化に対する対策など、生活の質の向上を目指すことが大切となります。また、大腸がんにかかるリスクも高まることが知られています。

便に血液や粘液が混じったり、下腹部の痙攣を起こしたりすることもあります。病変は直腸から口腔側へと連続して広がります。罹患範囲でみてみると、直腸炎型、左側結腸炎型、全結腸炎型の順に罹患者数が多く、特に全結腸炎型の患者さんが半数近くを占めていると報告されています。

IBD(炎症性腸疾患の罹患範囲)
IBD(炎症性腸疾患の罹患範囲)

炎症が直腸周辺に限局している場合には、便の異常がみられることは少ないものの、排便中あるいは排便と排便の間に粘液が分泌されることがあります。炎症が大腸の上部へと広がると便は柔らかくなり、便の回数も増えていきます。排便回数は1日に10~20回程度に及ぶこともあり、腹部のけいれん痛や便意にともなう不快感などを生じることもみられます。

よくみられる合併症は出血で、慢性の出血や鉄の欠乏による貧血を起こす場合も少なくありません。また、潰瘍性大腸炎の場合、大腸がんの発症のリスクがかなり高くなり、その割合は一般の人の20-100倍程度ともいわれています。炎症が大腸全体に広がっている全結腸炎型や、長期にわたって潰瘍性大腸炎に罹患している症例などにおいては、内視鏡検査などを行って、がんの早期発見に努めることも必要となってきます。その他、クローン病と同じように眼症状や関節症状、皮膚症状などの合併症を呈することがあります。

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