食事は、多くの方の楽しみでもあり日常生活に欠かせない行動のひとつです。しかし、食べ物と直接関係する大腸に炎症が起きるクローン病患者さんにとっては、食事が大きなハードルになります。それでも、料理に使われる脂肪分などの理解を深めることによって普通の方と同じように外食を楽しむことも可能になります。東京山手メディカルセンター副院長、炎症性腸疾患センターの長高添正和先生にお話をうかがいます。
病気がなかなか良くならず手術まで行った患者さんでも、術後にうまく食事がとれず苦労される患者さんは大勢いらっしゃいます。たとえば、「穿孔型」や腸が狭くなる症状「狭窄」がある方の場合、どんなに気をつけて消化に良い食物を摂っても下痢などを引き起こしてしまいうまく消化することができません。また、炎症が腸の外に出て膿が出ているような場合も同様です。よく、「どんなものを食べたらいいですか」という質問を患者さんから聞かれますが、残念ながら「食べたら病気が良くなる食事」というものは存在しません。また、どんなに良い食べ物を摂っても腸の状態がすこぶる悪ければうまく消化することはできません。
クローン病の食事においては、その時の腸の症状と選択する食べ物や調理法のバランスが重要です。病気を良くする食べ物はありませんが、「症状を良くする食事」はあります。まずは、普通に食事ができるのかできないのか、下痢などの症状はひどくないかなどご自分の症状を見極め、その症状に合った食べ物や調理法を組み合わせることが重要です。
肉は、調理の過程で多量の脂肪を使います。実は、肉がいけないのではなく脂肪が良くないのです。さらに、よく情報として目にする脂肪の成分も問題ではありません。ではなにが問題かといえば、それは脂肪と腸の関係にあります。脂肪を摂ると腸管の運動がうまく機能しなくなります。腸管運動が正常に機能しないと便の回数が増えます。つまり、クローン病患者さんの場合必然的に下痢もしやすくなるのです。ですから、串焼きにして脂分を落とすなど脂肪を減らすだけでクローン病の患者さんも肉を食べることが可能です。ただ、「いつ」食べるか、「どのように調理して」食べるかが問題なのです。
「カレーライス」も、クローン病患者さんにとってはハードルが高い食べ物のひとつです。しかし、少し手間をかけるだけでカレーライスを食べることが可能です。みなさんがよく使う市販のカレールーは、およそ85パーセントが脂肪です。ですから、そのまま使用するとクローン病の患者さんにとっては腸への負担が非常に重くなります。しかし、スパイスを使ってルーを作るところから調理を始めれば、脂肪を自分で調整することができます。
クローン病の患者さんにとっては、たとえば、寿司のネタを選ぶにも注意が必要です。たとえばトロは脂が多く含まれていますので、腸の状態とよく相談する必要があります。しかし、「何が腸に負担をかけるか」を理解してさえいれば、ちょっとした調理法の工夫や食べる時期の見極めで、通常と同じように食事を楽しむことができます。
また、外食に関しても同様です。近年、アレルギーの増加などで顧客ごとの要望に対応できるレストランも増えています。「脂を少なめに」など、ちょっとした要望を伝えるだけでご家族やご友人と一緒に食事を楽しむことができます。個人経営や、魚や貝類を使用することの多いイタリアンなどでは細かい要望に対応可能なお店が多いようです。ぜひチャレンジしてみてください。
次の記事『クローン病の食事、カロリー目安シート』では、外食時に患者さんがお店に要望を伝える際に参考にできるよう東京山手メディカルセンターでお渡ししているガイドブックから再編成した栄養管理のための数値の目安シートを掲載しています。ぜひ参考になさってみてください。
※カロリー目安シートは印刷できるように表示しています。スマートホンでご覧の方はぜひパソコンでご覧ください。
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