インタビュー

呼吸困難・息切れはどのように診断するのでしょうか?

呼吸困難・息切れはどのように診断するのでしょうか?
片岡 仁美 先生

京都大学医学研究科 医学教育・国際化推進センター 教授

片岡 仁美 先生

この記事の最終更新は2015年07月03日です。

呼吸困難の原因は、循環器の病気、呼吸器の病気、血液の病気、ホルモンの病気など非常に多岐にわたります。また呼吸困難は非常によくみられる症状でありながら、生命に関わるような重要な病気が原因となっていることがあります。呼吸困難の患者さんをどのように診断していくのか、総合診療医である片岡仁美先生に教えてもらいました。

呼吸困難に限らず、患者さんが来た場合は一般的に、
「問診」 → 「身体診察」 → 「検査」という順序で、診断を進めていきます。

問診では呼吸困難が生じた時間的な経過や、呼吸困難にともなう症状を確認します。
たとえば時間的な経過で、

また症状に関しては、下記のようなことを確認します。

  • 「熱があるかどうか」 → 肺炎や胸膜炎などの炎症や感染の有無を確認します
  • 「喘鳴(ヒューヒューという呼吸音)があるかどうか」 → ぜんそくや心不全を検討します。
  • 「胸痛があるかどうか」 → 気胸、胸膜炎、心膜炎、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)などを鑑別します。
  • 「呼吸の補助筋(首や肩の筋肉)を使って呼吸しているかどうか」 → 呼吸困難の重症度をみる
  • 「起坐呼吸をしているかどうか(横になったままだと苦しくて息が出来ずに起き上がってしまう)」 → 心不全やぜんそくの特徴的な症状
  • 「頸静脈(首の静脈)が怒張しているか(血管が膨らんだ状態)」 → 心不全や気胸に特徴的な症状
  • 「呼吸運動の左右差があるか」 → 肋骨骨折など外傷を見分けるため
  • 「全身、特に足にむくみがある」 → 心不全の有無・重症度をみる
  • 「濁音(胸をたたいたときに普段より濁った音がする)」 → 胸水貯留など、水がたまった状態
  • 「鼓音(胸をたたいたときに普段よりも、高い音がする)」 → 肺気腫、気胸など、空気がたまった状態
  • 「心臓の異常な音(音が多く聞こえたり、雑音があったり)」 → 心不全、心臓弁膜症など心臓の病気
  • 「呼吸音が聞こえづらい」 → 胸水、気胸、無気肺など気流が減弱している状態
  • 「水泡音(水がぶつぶついうような音)」 → 肺水腫肺炎など
  • 「捻髪音(髪をこすりあわせるような音)」 → 間質性肺炎で特徴的に聞こえる
  • 「笛声音(ヒューヒューという音)」 → 喘息で特徴的に聞こえる

病気の重症度をみるために、まずバイタルサイン(生きていく上で、もっとも重要な検査指標。たとえば血圧や脈拍など)を確認します。
呼吸困難で特に重要なバイタルサインは、呼吸数とSpO2(動脈血酸素飽和度、体の動脈中でどれだけ酸素があるかを示す指標)です。呼吸数が大きくなっていたり、SpO2が大幅に下がっていたりする場合は注意が必要です。

多くの場合は、問診と身体所見でおおよその病気候補は絞られます。最終的な確定診断を行うために、下記のような検査が行われます。

  • 胸部レントゲン写真
  • 心電図検査
  • 動脈血液検査

レントゲンだけでは十分に分からない場合には、胸部CT検査などが行われることもあります。

記事1:「呼吸困難(息切れ・息苦しさ)」とはどのような状態? 呼吸が苦しくなった時、何科を受診すればよい?
記事2:「呼吸困難(息切れ・息苦しさ)」の原因は何か?
記事3:すぐに病院に行かなければならない、緊急性の高い呼吸困難・息切れとはどのようなものか?
記事4:呼吸困難・息切れはどのように診断するのでしょうか?

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