ぎらん・ばれーしょうこうぐん

ギラン・バレー症候群

同義語
急性炎症性脱髄性多発根神経炎,急性特発性多発神経炎,GBS
最終更新日:
2021年01月20日
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2021/01/20
更新しました
2017/04/25
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概要

ギラン・バレー症候群とは、末梢神経が障害されることによって脱力・しびれ・痛みなどの症状が引き起こされる病気のことです。

私たちの神経には、脳や脊髄(せきずい)といった“中枢神経”とそこから分岐して全身に分布していく“末梢神経”があります。末梢神経はさらに、運動に関わる運動神経・感覚に関わる感覚神経・身体の機能を調節する自律神経に分類されますが、ギラン・バレー症候群ではこれらの神経に異常が生じることによって発症すると考えられています。

末梢神経に異常が生じる原因は、ウイルスや細菌による感染をきっかけに起こる免疫反応が自身の末梢神経を攻撃することによるものと考えられています。この病気は特別な治療を行わなくても自然に症状が軽快していくケースが多い一方、重症化するケースもあるため発症した場合はできるだけ早い段階で治療を開始することが望ましいとされています。

発症率は10万人あたり1~2人と比較的珍しい病気ですが、小児から高齢者まで全ての年代で発症する可能性があるため注意が必要です。

原因

ギラン・バレー症候群患者の3人に2人は発症の1~3週間前にカンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどの感染症にかかった既往があるとされています。カンピロバクター腸炎後に起こるギラン・バレー症候群では、この細菌に対する抗体が自身の末梢神経を攻撃してしまうことにより発症することが分かっています。サイトメガロウイルス、EBウイルス感染後に起こるタイプについても同様の原因が推定されていますが、まだ証明はされていません。

また、そのほかにも、インフルエンザなどのワクチンによって引き起こされるケースも報告されています。新型コロナウィルス感染の後に発症するケースも報告されています。

症状

ギラン・バレー症候群の症状の現れ方や重症度には個人差がありますが、下痢・風邪症状や発熱などの感染症症状が生じて1~4週間後に手足の力が入りにくくなっていくのが典型的なパターンです。多くは、足の力が入りにくくなり、徐々に腕にも脱力が広がっていき、階段の上り下りができない・布団の上げ下ろしができないといった症状が現れます。また、脱力と同時にしびれや痛みが生じるケースも少なくありません。

一般的に、これらの症状は上下肢に現れますが重症なケースでは、顔の筋肉や目を動かす筋肉、物の飲み込みに関わる筋肉にも麻痺が生じることがあり、中には呼吸に関わる筋肉が麻痺して呼吸困難に陥ることも少なくありません。さらに、末梢神経のなかでも自律神経のダメージが強い場合は、脱力・しびれ・痛み以外にも頻脈や血圧の高度の変動などの症状が引き起こされることも知られています。

ギラン・バレー症候群は突然、前述のような症状が現れますが、多くは発症後4週間ほど経つと徐々に改善に向かい、半年~1年ほどで元の状態に戻っていきます。しかし、急激に重症化するケースもあり、発症者の20%は1年後でも何らかの神経障害を残し、2~5%の方は命を落としているのが現状です。

検査・診断

症状などからギラン・バレー症候群が疑われるときは、次のような検査が行われます。

血液検査

末梢神経の異常を引き起こす糖尿病などとの鑑別をする目的で血液検査が行われます。また、ギラン・バレー症候群患者の60%の血中には末梢神経の成分を攻撃する抗体が存在するとされているため、この抗体の有無を調べる検査も行われます。

画像検査

脳や脊髄などの中枢神経の異常による症状との鑑別をするため、CTやMRIなどによる画像検査が行われます。

末梢神経伝導検査

末梢神経の電気的な活動が伝わる速さを測定することで、末梢神経が正常に機能しているか調べることができる検査です。ギラン・バレー症候群では、電気的な活動が伝わる速度が遅くなったり、伝わらなくなったりする部位が生じるため、診断の大きな手がかりとなります。

髄液検査

腰に針を刺して髄液を採取し、髄液中の細胞を詳しく調べる検査です。ギラン・バレー症候群では髄液中のたんぱくが増加し、細胞数が正常といった変化が生じるため、診断に役立つとされています。また、麻痺などを引き起こす髄膜炎脳腫瘍では細胞数が増えるのでこれらとの鑑別にも有用です。

治療

ギラン・バレー症候群は特別な治療をしなくても自然に軽快していくケースが多いとされています。しかし、重症化した場合はできるだけ早い段階で次のような治療が行われます。

血液浄化療法

血液中の有害な物質を取り除いて体内に戻す治療法です。ギラン・バレー症候群に対して血液浄化療法を行うと、症状が軽くなり、回復が早くなることが分かっています。頻度や回数は重症度によって異なりますが、多くは1日おきに4~5回程度の治療が行われます。

免疫グロブリン大量静注療法

原因となっている免疫反応(抗体)を抑えるため、大量の免疫グロブリン製剤を点滴で投与する治療方法です。

症状を改善するための治療

ギラン・バレー症候群はさまざまな症状が引き起こされるため、それぞれの症状を改善するために治療が行われます。具体的には、呼吸困難に対する人工呼吸器装着、嚥下(えんげ)困難(物が飲み込めない)に対する栄養管理(経管栄養)などが挙げられます。

予防

ギラン・バレー症候群を引き起こす細菌・ウイルス感染自体を予防することは困難ですので、予防法はないのが現状です。

重症化すると呼吸筋の麻痺のために命にかかわるケースもあるため、感染症症状が現れて1~3週間ほどで急に脱力症状などが現れた場合はできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。

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