概要
カンピロバクター腸炎とは、カンピロバクターと呼ばれる細菌に感染することによって発熱、腹痛、下痢、嘔吐などの症状を引き起こす病気のことです。
カンピロバクターは動物の排泄物に汚染された食べ物や水を介して感染するとされています。また、排泄物を介してヒトからヒトへ感染が広がることもあります。食中毒の代表的な原因菌の1つであり日本でも発生頻度が高いとされ、夏期の発生が多くみられる一般的な細菌性食中毒と異なり、比較的涼しい時期に発生しやすいという特徴があります。
カンピロバクター腸炎は特別な治療を要さずに軽快することが多いですが、重症な場合は抗菌薬の投与を行うこともあります。また、ギランバレー症候群*と呼ばれる神経の病気を発症するケースも知られているため注意が必要です。
カンピロバクター腸炎を予防するには、調理の際に肉類(特に鶏肉)は十分に加熱すること、手指や調理道具の衛生に注意することなどが重要です。
*ギランバレー症候群:感染症などがきっかけとなり神経が障害され、手足がしびれる、力が入りにくいなどの症状が現れる病気。
原因
カンピロバクター腸炎の主な原因は、汚染された食品や水の摂取です。
カンピロバクターは主に家畜やペットなどの腸内に生息しており、その排泄物に含まれています。ヒトへの感染は、主にこれらの排泄物に汚染された食べ物や水を介して起こることが多く、特に十分に加熱していない鶏肉が原因食品として知られています。また、生肉が触れた調理器具や料理者の手指を介して、野菜などほかの食品に菌が付着することも感染の原因となります。
一方、カンピロバクターはヒトが感染した場合も便とともに体外に排出されるため、感染者の排泄物を介して感染が広がることもあります。便座などに付着したカンピロバクターに触れることによる感染が一般的ですが、おむつ交換などによって感染するケースも報告されています。
症状
カンピロバクターに感染後2~5日ほどの潜伏期間を経て、38度前後の発熱、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの胃腸の症状や悪寒、倦怠感などの症状が現れます。数日ほどで徐々に回復していくことが多いとされていますが、症状が強い場合は嘔吐や下痢によって脱水状態に陥ることもあります。また、血便(血が混ざった便)がみられるケースも少なくありません。
なお、この病気の発症後1~2週間ほどでギランバレー症候群を発症するケースもあるため注意が必要です。
検査・診断
カンピロバクター腸炎の発症が疑われた場合は、次のような検査が行われます。
糞便検査
患者の便の中にカンピロバクターやカンピロバクターの遺伝子が潜んでいるか調べる検査です。カンピロバクター腸炎は症状のみからの診断が難しいため、診断を確定させる場合に必要になります。
血液検査
カンピロバクター腸炎は下痢や嘔吐などの症状が現れるため、脱水や炎症の程度などを調べるために血液検査が必要になることがあります。
画像検査
腸の状態を把握したり、他の病気と判別したりするためにX線検査やCT検査を行うことがあります。
治療
カンピロバクター腸炎は数日で自然に回復することが多く、特別な治療が必要とならないケースも少なくありません。経口補水液などによる水分補給が勧められます。
しかし、症状が強い場合は整腸薬や抗菌薬の投与を行うこともあります。また、重症化し嘔吐、下痢のために脱水状態に陥ったときは点滴が必要になることもあります。
予防
カンピロバクターに感染しないよう対策することが重要です。
カンピロバクターは食品を介して感染することが多いため、原因食品となることが多い肉類(特に鶏肉)はしっかり加熱し、野菜などの生食する食品もしっかり洗浄することを心がけましょう。生肉が触れたまな板や包丁などの調理器具や調理者の手指にはカンピロバクターが付着している可能性があるので、正しく洗浄、消毒し、生食する食材が触れないよう注意することも大切です。
また、感染者の排泄物を介した感染を防ぐため、家族など身近にカンピロバクター腸炎を発症している方がいる場合は手洗いや消毒などの感染対策を徹底しましょう。
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