じゅうしょうきんむりょくしょう

重症筋無力症

別名
MG
最終更新日
2021年12月27日
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2021/12/27
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

重症筋無力症とは、神経筋接合部と呼ばれる神経と筋肉のつなぎ目が破壊されることで、筋力が低下する、疲れやすくなるなどの症状が現れる病気のことです。特徴的な症状として、眼瞼下垂(がんけんかすい)(まぶたが下がってしまう症状)や複視(ものが二重に見える症状)、手足の筋力低下などが起こります。

日本の指定難病の1つで、約30,000人の患者がいるといわれています。男女比ではやや女性に多く、発症年代別では5歳未満と、女性では30~50歳代、男性では50~60歳代で診断される人が多くなります。

神経筋接合部に対する自己抗体の産生や破壊的な作用を抑える薬物治療が治療の中心となり、早期に治療が開始できれば比較的予後がよい病気です。治療を行いながら支障なく日常生活を送れる人も多く、なかには治療が完全に不要になる人もいます。

原因

重症筋無力症は、末梢神経(まっしょうしんけい)と筋肉のつなぎ目である神経筋接合部が自己抗体(自己の細胞や組織を攻撃してしまう抗体のこと)によって破壊されることで起こります。神経筋接合部が破壊されると脳の信号が筋肉に伝達されなくなるため、筋力が低下する、疲れやすくなるなどの症状が起こるようになります。

神経筋接合部に対する自己抗体がなぜ作られるのかについて、詳しい原因はよく分かっていませんが、それぞれの抗体により、神経筋接合部のアセチルコリン受容体、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(マスク)と呼ばれる受容体が破壊されることが原因で、胸腺と呼ばれる組織の異常が関わっている可能性が考えられています。

なお、この病気が遺伝することはありません。

症状

重症筋無力症の代表的な症状は筋力低下と易疲労性(疲れやすくなること)です。特に目の筋肉で目立ちやすく、まぶたが下がる“眼瞼下垂”やものが二重に見える“複視”といった症状が現れることが多いです。

そのほかに、しゃべりづらくなる、物が飲み込みにくくなる、手足に力が入りにくいなどの症状が現れることもあります。また、呼吸に関わる筋力が低下することもあるため、重症化すると呼吸困難が現れることもあります。

症状は1日の中で波があることが多く、朝は症状が軽く、夕方になると強くなることが多いです。休憩すると症状が軽くなることがあります。また、日によっても疲れやすい日とそうでない日の差があることがあります。

検査・診断

自覚症状から重症筋無力症が疑われる場合、アイスパックテスト、エドロホニウム塩化物(テンシロン)テストといった検査や血液検査、反復刺激試験などの電気生理検査によって診断を確定します。

アイスパックテストは目の症状をみるための検査で、氷水などでまぶたを冷やした後に目を開けられるか調べます。

エドロホニウム塩化物テストは、塩化エドロホニウムと呼ばれる神経と筋肉の神経伝達を改善する薬剤を使用して、症状が改善するかを調べる検査です。

血液検査では、抗アセチルコリン受容体抗体や抗マスク抗体といった重症筋無力症患者でみられる自己抗体の有無を調べます。

これらのほかに、筋電図検査や胸腺の状態を調べるためのCT、MRI、PET-CTなどの画像検査が行われることもあります。

治療

重症筋無力症の治療は、発症年齢や症状の出方(目の症状のみか全身の症状か)、重症度、検出された自己抗体の種類、胸腺の異常などによって方針が決められます。

目や全身の症状を改善するための対症療法と、免疫異常を根本的に改善する治療があります。

対症療法

神経筋接合部の伝達物質を増やす抗コリンエステラーゼ薬と呼ばれる薬を内服します。効果が早いメリットがありますが、根本治療ではなく一時的な改善に過ぎないため、ほかの治療と組み合わせて行われます。

根本治療

免疫異常を改善して症状をよくする治療法です。免疫機能を抑えるステロイド薬や免疫抑制薬などを長期に服用して症状をコントロールします。

また、胸腺の腫瘍(しゅよう)(胸腺腫)があり、発症年齢が若い患者では胸腺を取り除く手術が行われることもあります。

重症の場合や症状の急激な悪化がみられる場合などには、免疫グロブリンと呼ばれる血液成分を点滴する免疫グロブリン療法や、機器を用いて自己抗体を除去する血液浄化療法、補体の作用を抑えて神経筋結合部の破壊を抑えるエクリズマブと呼ばれる治療薬が用いられることもあります。

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