概要
肋骨骨折とは、心臓や肺などを守る役割をもつ肋骨が何らかの理由で折れたり、ひびが入ったりした状態です。折れた部分に痛みが生じ、その痛みは体を動かしたり、深呼吸をしたり、咳をしたりすることで強くなる傾向にあります。
肋骨とは胸の周辺にある左右12対、合計24本の骨で、心臓や肺、肝臓、脾臓、腎臓などさまざまな臓器を保護しています。形状としては、上から10番目までの肋骨は胸の中央にある胸骨にくっついていますが、11、12番目の肋骨の前方は胸骨から離れています。
前から見て中央に位置する胸骨につながる部分を肋軟骨といい、軟骨のためX線検査では写りません。また肋骨の特徴として、呼吸による肺の膨らみや縮みに合わせて動いていることが挙げられます。
原因
肋骨骨折の主な原因は、体の外側から胸に衝撃を受けることです。
交通事故や高いところからの転落など強い衝撃だけでなく、机の角などに胸をぶつけた場合の軽い衝撃で生じることもあります。強い衝撃を受けた場合、複数の肋骨が折れることも少なくなくありません。強い衝撃によって肋骨内にある臓器や血管まで損傷が及ぶと、命に関わることもあります。
そのほか、強く体を動かすことで肋骨骨折が起こることもあります。たとえば、ゴルフのスイングのように体をひねる動きで折れることもあるほか、時には咳やくしゃみによって折れることもあります。
なお、骨折は1回の大きな衝撃によって起こるものだけでなく、小さな力が繰り返し同じ部分に加わることによって、ひびが入ったり骨折に至ったりする疲労骨折を起こす場合もあります。
症状
肋骨骨折の主な症状としては、折れた部分の痛みが挙げられます。
呼吸をするだけでも痛みが生じることが一般的ですが、押すと骨がきしむ音がしたり、体をそらすなど肋骨が動くような動きをすると痛みが強くなったりする傾向があります。また、深呼吸や咳、くしゃみをすると痛みが強くなることがため、これらがうまくできなくなると呼吸が浅くなることがあるのも特徴の1つです。
肋骨骨折に伴う合併症として、高齢者では痛みで痰がうまく出せなくなることによる肺炎が挙げられます。交通事故など大きな衝撃による骨折の場合では、血管損傷などによって胸膜腔に血がたまる血胸や、肺に穴があくことによって胸膜腔に空気がたまる外傷性気胸などが起こることがあります。
検査・診断
肋骨骨折が疑われる場合、胸部の触診と胸部X線検査で診断を行うことが一般的です。触診では、患部を優しく押すことで折れていることが分かる場合もあります。
胸部X線検査は、肋骨骨折やその合併症を判断するのに有用な検査です。しかし、骨折部位が肺の影と重なってよく見えなかったり、骨折部位に骨のずれがまったくなかったりする場合もあるため、必ずしもX線検査で骨折の判断ができるとは限りません。
また、胸骨と肋骨のつなぎ目にある肋軟骨はX線検査では写すことができない部分であるため、肋軟骨に損傷があった場合もX線検査での診断は難しくなります。
治療
受傷したのが骨のみであり、臓器や血管には問題がない場合は薬物療法やバンドによる固定で経過観察を行います。一方で、血胸や外傷性気胸のような合併症が生じた場合には、胸膜腔内にたまった血液や空気を抜く処置を行います。
合併症の危険性がない場合
痛みが少ない場合には、薬物療法として消炎鎮痛薬や湿布などの処方が検討されます。
痛みがやや強い場合、バストバンドやトラコバンドと呼ばれる装具で胸のあたりを圧迫固定します。これらの治療によって、1〜2週間程度で痛みの症状は軽くなっていくことが一般的です。
合併症がある場合
合併症がある場合は入院して治療を行うことが一般的です。
たとえば、肋骨骨折だけでなく血胸や外傷性気胸も起こっている状態においては前述の治療に加え、胸膜腔にチューブを挿入し、たまった血液や空気を抜く処置を行います。このような治療を胸腔ドレナージといいます。また、骨折に伴う疼痛が強く呼吸状態が改善しない場合(人工呼吸器からの離脱ができない症例など)には、手術による内固定が考慮されます。
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