概要
外傷性気胸とは、交通外傷や鋭利な刃物で胸を刺されたりすることを原因として発症する気胸を指します。気胸を発症すると肺から空気が漏れることで、肺が潰れてへこんでしまいます。
外傷性気胸では、基本的には片方の肺が影響を受けることが多いです。しかし、両側性に気胸が生じたり、緊張性気胸と呼ばれる気胸を発症したりすることもあります。この場合には、より緊急度が高まります。
原因
肺は、胸腔と呼ばれる空間に納まっています。胸腔内の空間は胸膜と呼ばれる膜で裏打ちされており、特に肺の表面は臓側胸膜と呼ばれる膜で覆われています。胸腔内と肺の中に存在する空気は、臓側胸膜によって空間的に隔絶されており、通常は肺の中の空気が胸腔内に紛れ込むことはありません。
しかし胸に対しての外傷をきっかけにして、胸膜が損傷を受けると、肺の中の空気が胸腔内に漏れ出ることとなり、肺が潰されてしまう「気胸」と呼ばれる病態を発症することになります。
原因となる外傷としては、交通事故などで肋骨を骨折して、骨折片が肺を損傷することや、刃物で刺されたりすることで発症することもあります。さらに、医療行為に関連して針を胸に刺すことがありますが、こうした行為をきっかけとして気胸が生じることもあります。医療行為に関連した気胸は、医原性気胸と呼ばれます。
外傷をきっかけとして発症する気胸という意味では外傷性気胸の一種であるとも考えることができます。外傷性気胸では、肺の組織を傷つけると同時に血管損傷をきたすこともあります。その結果、胸腔内に空気以外にも血液成分が蓄積することがあり、血気胸と呼ばれる病態を示すこともあります。さらに、胸腔内に漏れ出た空気が皮膚の下へと潜り込み、皮下気腫と呼ばれる状態を呈することもあります。
症状
外傷性気胸では、胸痛が生じます。胸痛は、気胸発症の原因となる外的な痛みと、気胸が発症したことに関連した痛みの2つの異なる痛みが合わさったものになります。また、胸腔内に空気や血液が溜まると肺が圧迫され通常通りに機能しなくなります。その結果、呼吸困難が現れます。また、肺から漏れ出た空気が、皮膚の下に潜り込むこともあり、外表から触るとプチプチした感触を得ることもあります。
外傷性気胸では、緊張性気胸と呼ばれる重篤な気胸を示すことがあります。緊張性気胸を発症すると、胸腔内へと漏れ出た空気の量は多くなり、血行動態にも影響を及ぼすようになります。すると、呼吸困難に加えて、ショック状態へと陥ることがあります。さらに、両側の肺が同時に外傷性気胸を起こすと、肺のガス交換が不良になり呼吸障害が強くなるため、呼吸状態がより重篤となります。
検査・診断
外傷性気胸は、問診に加えて胸部レントゲン写真を行うことで診断されます。胸部単純レントゲン写真では、気胸の有無を評価するだけでなく、どの程度の空気が胸腔内に蓄積しているのかといった重症度も評価することが可能です。
外傷性気胸は、交通外傷などの大きな外力がかかる状況で発症することもあります。この場合は、気胸の発症に留まることなく、別の臓器に損傷を受けていることもあります。そのため胸部単純レントゲン写真を行うことなく、直接CT(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)を撮影されることもあり、この際に気胸が同定されることもあります。
治療
外傷性気胸の治療は、重症度によって異なります。呼吸状態や循環動態の安定している軽度の気胸であれば、安静を保つことで自然に改善することも充分期待できます。
しかし、肺から胸腔内に漏れ出ている空気の量によっては、積極的な治療対象になります。特に、ショック状態を呈する緊張性気胸や両側の肺が著しく損傷を受けている場合には、早期の治療介入が必要です。具体的にはチューブを挿入し、胸腔ドレナージと呼ばれる手技により空気を胸腔内から外部へと排泄することになります。チューブから排泄される空気の量を観察しながらチューブの抜去タイミングをはかり、空気が再度貯留してこないことを確認しながら経過をみます。胸腔ドレナージで治癒が期待できない場合には、手術介入も検討されます。
また、外傷性気胸では気胸以外の臓器損傷を伴うこともあるため、合併損傷に応じた治療介入も必要とされます。
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