概要
肺結核とは、結核菌に感染することによって発症する肺の感染症のことです。肺結核の主症状は長引く咳や痰などですが、なかには倦怠感が少しある程度であることもあるため、結核と気づくことなく診断が遅れてしまうこともあります。診断が遅れるのは新規結核発症者のうち20%ほど、さらに30~59歳の肺結核患者さんに限定すると40%近くにのぼることが報告されています。この間、結核菌が周囲へと散布されてしまい感染が拡大する恐れもあります。
戦前、肺結核は国民病として恐れられていました。戦後になると、ワクチンによる予防活動、レントゲン診断による早期発見、結核治療薬導入などが成果を上げ、結核の患者さんは少なくなっています。しかし2016年の段階で1万8千人ほどの方が新たに肺結核に罹患している状況をみると、日本は肺結核を制御できているとはいい難いです。
肺結核は高齢者だけでなく乳幼児でも発症することがあります。また、糖尿病やHIVなど慢性疾患との関連性、薬物耐性菌の出現の懸念などさまざまな問題があるため、今後も感染者数の動向などに注意が必要です。
原因
肺結核は空気中に存在する結核菌を吸い込むなどして、体内に取り込まれます。乳幼児の初感染では、結核菌に感染するとすぐに発症することがあり、粟粒結核や結核性髄膜炎として発症します。
一方で成人の場合、免疫機能の関係からすぐに結核を発症するのではなく、肺に取り込まれた結核菌は、肺に存在するマクロファージと呼ばれる免疫細胞の中に寄生し、感染症状を引き起こすことなく存在し続けることになります。加齢、ストレス、糖尿病やHIVなどで免疫力が低下すると、マクロファージ内に留まっていた結核菌が活発化しはじめ、血液やリンパの流れに乗り、肺の各所にばらまかれます。その後、炎症を起して肺組織が破壊され、空洞形成や壊死巣が形成されます。肺結核では、肺の各所に結核性病変が形作られ、菌が体外に排泄されることになります。
なお、結核菌に感染した方すべてが肺結核を発症するのではなく、10%ほどの方に発病すると考えられています。
症状
肺結核では、2週間以上持続する咳が出ます。ほかにも、体重が減る、だるさが続く、血の混じった痰が出る、寝汗がひどい、発熱が続く、などの症状が出るケースもあります。
ただし高齢者など一部の方では症状がはっきりしないこともあり、何となくだるい、少し咳が長引く程度のこともあります。この場合では診断が遅れることも多く、周囲に感染を拡大させる可能性が高まるため、注意が必要とされています。
検査・診断
肺結核の発症が疑われる場合、胸部レントゲン検査や胸部CT検査などの画像検査と、痰の中に結核菌がいないか痰を調べる喀痰検査が行われます。肺結核を発症する段階では、肺の各所で肺が破壊されることになるため、画像検査を実施して肺に影などがないか確認します。
喀痰検査では、採集した痰の培養などを行い、結核菌の存在を遺伝子レベルで分析するほか、顕微鏡で観察することにより結核菌を排菌(他人に感染するような形で呼気から吐き出しているか)しているのか調べます。具体的に行われる検査としては、喀痰塗抹検査、抗酸菌培養検査、遺伝子検査などがあります。
治療
結核菌の増殖スピードは遅く、また1種類の薬物を投与するだけでは結核菌が薬剤耐性を獲得してしまうことが懸念されます。そのため肺結核の治療では、薬剤機序の異なる治療薬を組み合わせた方法が選択されます。治療開始から2か月目までは、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、ストレプトマイシン、といった4種類の抗菌薬を内服します。その後は4か月間リファンピシンとイソニアジドに切り替え、内服治療を継続します。
肺結核治療薬のなかには、肝臓や腎臓、神経などに副作用が生じることもあります。イソニアジドであれば神経障害、ストレプトマイシンであれば聴力障害、エタンブトールであれば視力障害などです。薬剤を服用中にはこうした知識をしっかりと把握しておき、症状が出現した場合には早期に病院を受診するようにしましょう。
肺結核はきちんと6か月以上薬の内服を続ければ治せる病気です。しかし治療中に症状がなくなってしまうことがあるため、自己判断で内服をやめてしまうケースもよくあります。途中で治療を中断すると、耐性菌を出現させてしまう危険性が出てきます。しっかりと薬剤を内服していることを確認するため、医療者や家族の目の前で内服してもらうDOTSと呼ばれる方法がとられることもあります。
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