概要
肺結核とは、肺に結核菌が感染して起こる病気です。
肺結核は人から人に感染します。肺に感染を生じることが多いですが、腸やリンパ節、骨などで感染が起こることもあります。
感染したとしても9割ほどの人は発病せず、発病に至るのは1割ほどです。また、感染後すぐに発病に至ることもありますが、免疫がはたらくことによっていったん治癒し、数か月から数十年を経て、免疫力が低下したときに再び結核菌が増えて発病する場合もあります。
結核は、エイズ、マラリアと並ぶ世界3大感染症の1つに数えられ、全世界では結核の発病者数は毎年約1,000万人にのぼるといわれています。日本でも1950年以前は、2人に1人が潜在的に感染しているといわれる状況で、若年者が亡くなるような重大な病気でした。しかし、有効な薬が開発されたことで発病者は急激に減少し、現在日本での発症者は年間約1.1万人となっています。それでも、欧米の先進諸国よりも患者数が多いのが現状です。
原因
肺結核の原因は結核菌への感染です。喀痰(咳とともに出る痰)の中に結核菌が含まれる肺結核患者と密集空間で長い時間(一般的に数週間以上)接触することで空気感染が起こります。
結核菌は肺だけでなく、リンパ節や骨などに感染することもありますが(肺外結核)、この場合は人にうつることはありません。また、肺結核であっても喀痰の中に菌が含まれていない患者から感染することはありません。
結核菌に感染しても必ず発病するとは限らず、9割ほどの人は発病に至りません。しかし、感染時期や年齢、基礎疾患の有無など、以下のような場合に発病するリスクが高まります。
症状
発症初期には無症状のことも多いですが、症状が現れる場合は微熱、咳、喀痰がみられることが一般的です。さらに全身倦怠感、胸痛、血痰、呼吸困難、食欲不振などの症状を伴うこともあります。結核の症状はかぜと似たものが多く、症状が目立ちにくいことが多いために、健康診断の胸部X線検査で初めて発見されることもあります。
発見が遅れて進行した場合には肺が破壊され、ほかの菌が感染することで肺炎を繰り返し発症したり、後遺症によって呼吸不全を生じたりする例があります。
検査・診断
肺結核の診断では、主に胸部X線検査と喀痰検査が行われます。喀痰検査とは、痰中に結核菌が含まれていないかを顕微鏡で観察する検査で、採取した痰のサンプルから結核菌の有無を調べます。
喀痰を採取することが難しい場合は胃液を採取して検査したり、気管支鏡検査を実施したりするケースもあります。
治療
肺結核の治療は、抗結核薬を用いた薬物療法が中心です。治療では、4剤(イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミド)を2か月間服用した後、2剤(イソニアジド、リファンピシン)を4か月間服用します。
ピラジナミドを使用することができない場合には、3剤(イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール)を2か月間服用した後、2剤(イソニアジド、リファンピシン)を7か月間服用します。
決められた抗結核薬を指示どおりに服用し、自己判断で治療を中止しないようにすることが大切です。なお、痰の中に多数の結核菌が認められるなど、結核菌を人にうつす可能性が高い場合は入院治療が必要となります。
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