概要
マラリアは“ハマダラカ”という蚊を介して、マラリア原虫に感染することで発症する病気です。熱帯・亜熱帯地域でよくみられ、中でもサハラ以南のアフリカ、南米アマゾン河流域、パプアニューギニアなど大洋州地域が高度流行地となっています。なお、日本での年間の感染者数は約50〜70人程度です。
マラリアは約1〜4週間の潜伏期間を経て発症するため、流行地から帰国して発症する場合が少なくなくありません。またマラリアは、種類によって症状の経過や潜伏期間などが異なります。マラリアに免疫がない日本人が診断や治療が遅れると、重症化し命に関わることもあるため、早期診断および早期治療が極めて重要です。
種類
ヒトに感染するマラリア原虫は、熱帯熱マラリア・四日熱マラリア・三日熱マラリア・卵形マラリアの4種類が代表的であり、サルマラリアも時にヒトに感染します。世界的にもっとも広がっているのは熱帯熱マラリアで、潜伏期間は約7〜14日です。発症早期に適切な治療が行われないと重症化し、死に至ります。
一方、ほかのマラリアの潜伏期間は約10日〜数か月で、熱帯熱マラリアに比べて重症化する確率は低いものの、命に関わることもあるため注意が必要です。
原因
マラリアは、マラリア原虫を持つ“ハマダラカ”という蚊の吸血が原因で感染します。人に感染する4種類のマラリア原虫はいずれも蚊の体内に潜んでおり、蚊がヒトを刺す際に蚊の唾液を介してヒトの体内に注入され感染します。また反対に、マラリアに感染したヒトを蚊が刺すことで蚊の体内にマラリア原虫を取り入れてしまうこともあり、その蚊が次にヒトを刺す際に感染させてしまいます。このようにして、マラリアの感染はどんどん広がっていくとされています。なお、マラリアはヒトからヒトへ感染することはありません。
症状
マラリアの主な症状として、寒気やふるえ(悪寒戦慄)を伴う高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、下痢、嘔吐などが挙げられます。また、発熱は発熱期と無熱期を繰り返すことが特徴です。この間隔は種類によって異なり、熱帯熱マラリアでは36~48時間ごと、もしくは不規則で、四日熱マラリアでは72時間ごと、三日熱マラリアや卵型マラリアでは48時間ごと、サルマラリアでは24時間ごとに生じるといわれています。
発熱期はさらに悪寒期と灼熱期に大別されます。悪寒期は1〜2時間ほどかけて悪寒を感じながら体温が上昇し、灼熱期は悪寒の症状は消失し、4〜5時間は熱感を感じるといわれています。
重症化すると脳症、低血糖、腎障害、肝障害、重症貧血などといった合併症がみられることがあります。妊婦や小児、免疫力の弱い方は重症化しやすいため、特に注意が必要です。
検査・診断
マラリアの検査では、主に採血した血液で塗抹標本を作製し顕微鏡を用いて観察する顕微鏡検査が行われます。日本では未承認ですが迅速診断キットもあり、血液が数滴あれば検査が可能です。
治療
マラリア治療で重要となるのは、早期に発見し適切な治療を開始することです。
治療は抗マラリア薬で行われます。内服薬を処方されることが一般的ですが、重症の場合には注射薬が用いられます。また地域によっては薬剤耐性の可能性があるため、抗マラリア薬を選択する際は感染した地域によって検討することが必要です。
現在は多くの場合、アルテミシニン誘導体多剤併用療法(Artemisinin-based combination therapy:ACT)が推奨されています。また、感染後に休眠体として肝細胞内にとどまるといった特徴をもつ三日熱マラリアや卵形マラリアの場合には、再発を防ぐため、肝内の休眠原虫を殺滅するプリマキンの投与も必要です。
なおマラリアの流行地で蚊に刺された場合や、流行地に到着してから7日以降にマラリアを疑うような症状が現れた場合には、医療機関の受診を検討しましょう。
予防
治療薬のなかには予防薬として使用できるものもあります。したがって、流行地に渡航する場合には医療機関において予防薬の処方を受けるとよいでしょう。ただし、予防薬を服用していても完全に感染を防げるというわけではないので、渡航中も蚊に刺されないよう工夫することは大切です。
蚊に刺されないための対策としては、蚊の活動時間である夜間(夕暮れから明け方まで)の外出を避けることや、蚊の繁殖の原因となる水たまりを作らない、服や虫よけスプレーなどで皮膚を守ることなどを心がけ、蚊に刺されないように注意しましょう。屋内で過ごす際も、なるべく清潔な宿泊施設を利用し、窓の開け閉めを減らすなどの工夫をしましょう。
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