インタビュー

マラリアの予防法。ワクチンは無く蚊に刺されないことが大切

マラリアの予防法。ワクチンは無く蚊に刺されないことが大切
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

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この記事の最終更新は2015年05月21日です。

旅行のときに気を付けるべき病気としてよく挙げられるものの一つに、マラリアがあります。このマラリア感染の90%近くがアフリカで起こっています。アフリカのルワンダで感染症医として活躍している青柳先生に、マラリアの予防法について伺いました。

マラリアの予防を検討しなければならない地域はどこでしょうか。

マラリアは、ハマダラカに刺されてマラリア原虫に感染することで起こる病気です。ですから、ハマダラカの生息する地域に行くときには注意が必要です。

具体的には、アジア・オセアニア・アフリカおよび中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、特に日本人の旅行先として人気のあるタイ・フィリピン・インドネシア・マレーシアなどへ旅行される方はマラリア対策を考えましょう。

また、同じ国の中でも、地域によって感染する危険性は全く異なります。

マラリアは都市部以外の郊外で流行する病気です。たとえば同じアフリカの国でも、都市部に短期間しか滞在しないのであればマラリアに感染するリスクは低いですが、一方で郊外に滞在する場合は、マラリアの予防を十分に考える必要があります。

マラリアにはワクチンは存在しません。世界中の寄生虫学者が競って開発を行っていますが、今のところまだ出来ていません。

ワクチンは存在しませんが、予防薬は存在します。どの薬剤を選択すべきかは、薬を飲む方の年齢や既往歴(過去にどのような病気にかかったか)、旅行先に発生するマラリアの種類によって異なります。たとえば、アトバコン・プログアニル塩酸塩は妊婦さんには通常使用しない薬ですし、メフロキン塩酸塩は精神疾患やてんかんの既往がある方には処方できません。また、ドキシサイクリン塩酸塩水和物は8歳以下の子供に使うと、歯の色素沈着が起こってしまうので使われません。

飲み方に関しても、1日1錠の内服であったり、1週間1錠の内服であったりと色々な種類がありますので、マラリア予防薬の処方が可能なトラベルクリニック等でよく相談して、予防薬を選択してください。

服用方法:現地到着の1~2日前から内服を開始。1錠/1日。流行地を離れてから7日間内服

服用方法:現地到着の1~2週間前から内服を開始。1錠/1週間。流行地を離れてから4週間内服

服用方法:現地到着の1~2日前から内服を開始。1錠/1日。流行地を離れてから4週間内服

以前はクロロキンという薬剤もよく用いられていましたが、クロロキンが広く使用されてきた結果、クロロキン耐性(クロロキンが効かない)のマラリアが多く出てきてしまったので、今は予防薬として使われるのはごく一部の地域のみです。

マラリアの予防で一番重要なのは、そもそも蚊にさされないことです。そのためには、マラリアを運ぶ蚊であるハマダラカの生態についてよく理解することが重要です。ハマダラカは夕方から夜明けの間に活動を行う蚊です。したがって、下記のような点に注意してください。

  • 夕方から夜明けの間にはなるべく外には出ない
  • 外に出る場合は、できるだけ肌の露出を避けるために、長そで、長ズボンを着用する
  • 蚊よけのスプレーを使用する(DEETという成分が含まれているものを使用する。一部のトラベルクリニックや現地で購入できます)
  • 寝る際には蚊帳を利用する
  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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