インタビュー

マラリアの症状―旅行帰りの発熱に要注意

マラリアの症状―旅行帰りの発熱に要注意
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

この記事の最終更新は2015年05月25日です。

旅行のときに気を付けなければならない病気としてよく挙げられるものの一つに、マラリアがあります。マラリア感染の90%近くが、アフリカで起こっています。アフリカのルワンダで感染症医として活躍している青柳先生に、マラリアではどのような症状が起こるのか、どのような場合には医療機関に受診すべきなのかを伺いました。

マラリアにかかったときに、一般的に出てくる症状は以下のとおりです。

  • 高熱(38度後半から40度前後)
  • 熱に伴う悪寒
  • 頭痛
  • 筋肉痛
  • 関節痛
  • 下痢
  • 嘔吐

これらの症状はインフルエンザや風邪など、他の病気でも起こってくる症状です。つまり、「この症状をみたらマラリア」というような典型的な症状があるわけではありません。
だんだんと病状が重くなってくると、以下のような症状も起こします。

特に妊婦さんや小さなお子さん、免疫の力が弱い方は重症化しやすいので、注意が必要です。

マラリアの症状は他の感染症、たとえばインフルエンザなどでも起こりうる症状なので、これはとても難しい問題です。

発熱や頭痛といった症状ももちろん重要なのですが、そもそもマラリアに感染する可能性があるかどうか(疫学的なリスク要因)が重要です。

もしマラリアの流行している地域に旅行したのであれば、ちょっとした発熱でもマラリアの可能性を考える必要があります。日本人旅行者の多い地域ですと、タイ・フィリピン・インドネシア・マレーシアは要注意です。

マラリア原虫に感染してから、マラリアの症状が出るまでには潜伏期間があります。蚊のだ液から運ばれてきたマラリア原虫が、人の体の中で増殖するまでに時間がかかるからです。

マラリアの種類によって潜伏期間が異なります。

熱帯熱マラリア7日間から14日間

四日熱マラリア18日間から40日間

三日熱マラリア12日間から17日間

卵形マラリア11日間から18日間

サルマラリア10日間から12日間

しかし、三日熱マラリアの場合、蚊に刺されてから4年後に発症したというケースがあります。三日熱マラリアや卵形マラリアの場合には、マラリア原虫が蚊から人に移った後で人の肝臓の中で眠り続けていて、免疫や体調の変化によって、急に活性化することがあるからです。その場合には、1年後や2年後に発症、長い例では4年という場合もあります。また、それ以外でも予防薬を中途半端に飲んでしまった人、もともとマラリア多発地域に住んでいてマラリアに対しての免疫をある程度持っている人などは、マラリアの発症が遅れることもあるので、「潜伏期間が必ずこうなる」ということはなかなか言い切ることができません。

ただし、一般的には上記にある潜伏期間が目安となるので、マラリア流行地への旅行後数週間以内に高熱が出た場合は、マラリアの可能性を考えた方が良いでしょう。

もし出発前にトラベルクリニックを受診していたのであれば、そのトラベルクリニックに行きましょう。

もし事前にトラベルクリニックに受診していなかったのであれば、普段のかかりつけの医師に相談して、マラリア流行地に行っていたことをきちんと伝えましょう。

熱帯熱マラリアは腎臓や脳の障害を併発し、重症化することがあります。発症してから治療開始までのタイミングが遅くなると、重症化する可能性が高くなり、しばしば命にかかわります。マラリアでの死亡例の中には、マラリア流行地から帰国後であるにもかかわらず、流行地に行ったということを医師に伝えなかったケースが多くあるので注意が必要です。

  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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