インタビュー

デング熱は怖い病気?―その症状と治療法

デング熱は怖い病気?―その症状と治療法
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

この記事の最終更新は2015年04月27日です。

2014年の夏に日本国内でも代々木公園でデング熱が出たと大騒ぎになりました。
しかし、デング熱は本当に怖い病気なのでしょうか。アフリカのルワンダで感染症医として活躍する青柳先生にお聞きしました。

デング熱は、デングウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカにさされることで感染する病気です。人に感染してからも、ウイルスが体の中で増殖するまでしばらく時間がかかります。蚊に刺されてからの潜伏期間は早くて2日、長くても15日ですが、多くの場合は3日から7日程度です。

デング熱の典型的な症状は下記の通りです。

  • 発熱
  • 頭痛(眼の裏の痛みが特徴)
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 皮疹(皮膚の発疹。熱が下がったころに起こる。胸部や胴体・背中からはじまり、手足・顔面に広がります)

もともとデング熱はBreak Bone Fever(骨が折れるような熱)とも呼ばれており、骨、関節の痛みが特徴的な症状です。ほとんどの方は、1週間程度で何の問題もなく自然に回復します。

一方で、一部の方は「デング出血熱」という状態になることがあります。
この場合、通常のデング熱と同じような症状が出た後に、症状が急激に悪化します。出血傾向(口腔粘膜や皮膚からの出血)を示し、症状が重篤な場合はショック状態(全身の血圧が下がって、生命の危機が生じる状態のこと)になることがあります。

デング熱ウイルスには、1~4まで四種類の型があります。同じ種類の型のウイルスに複数回感染しても、免疫を持っているため軽症ですみます。一方で、このうち複数のウイルスに感染すると、免疫が過剰に働いてしまって、重症化してしまうと言われています。

ただし、デング熱に感染したとしても、デング出血熱になる可能性はかなり低いです。デング熱は基本的には放っておいても治る病気ですので、過度に恐れる必要はありません。

これは難しい問題です。デング熱だとすれば、放っておいても自然に治るので、必ずしも医療機関を受診する必要はありません。

ただし、デング熱とマラリアは発熱など一部症状が重なります。マラリアの場合は一刻も早い治療が必要なので、もし、マラリアもデング熱も流行しているような地域(たとえば東南アジアなど)への旅行から帰ってきて、数週間以内に発熱をしたならば、マラリアを疑って医療機関を受診することをお勧めします。

マラリア流行地域ではなく、マラリアの疑いがないデング熱だとしても、症状が重いようであれば、医療機関を受診したほうがよいでしょう。

診断のためには、症状と患者さんの海外への渡航歴が重要です。病院の原因となるウイルスを同定する確定診断のためには、地方衛生研究所や国立感染症研究所に検査を依頼して、病原体診断を行う必要があります。

デング熱に根本的な治療法はありません。デング熱で行われる治療はあくまで症状に対しての対症療法になります。たとえば熱に対して解熱剤を使ったり、頭痛に対して鎮痛剤を使ったりといった内容です。

重篤なデング出血熱の場合は、全身の管理、呼吸・循環の管理などが必要になります。

デング熱には残念ながらワクチンがありません。世界中のウイルス研究者たちが一生懸命研究をしていますが、まだ実用化されているものはありません。またマラリアとも異なり、予防薬は存在しません。

したがってデング熱の予防の基本は「蚊にさされないこと」です。デングウイルスを運ぶネッタイシマカは昼間に活動的で、都市部にも多く存在します(マラリアを運ぶハマダラカが夜中活発で、郊外に多いのと対照的です)。そのために、以下のことに注意しましょう。

  • 肌の露出の少ない服装をすること。長そで、長ズボン着用
  • 虫よけスプレー(現地のDEETという成分が含まれているものを使いましょう)
  • 特に日の出後と日没前には要注意
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  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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