インタビュー

狂犬病の予防法は?―ワクチンについて、流行地で犬に噛まれたら

狂犬病の予防法は?―ワクチンについて、流行地で犬に噛まれたら
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

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この記事の最終更新は2015年05月11日です。

犬やその他の動物にかまれることで起こる狂犬病。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡するという恐ろしい病気です。狂犬病にならないためにはどうすればよいのか、ワクチン接種はすべきなのかどうかを、アフリカのルワンダで日々感染症と戦う医師、青柳先生にお伺いしました。

日本では撲滅された狂犬病ですが、WHOの推計によると年間におよそ5万5千人の方が亡くなっており、海外へ旅行する際は注意が必要です。

狂犬病の流行地域を下記の図に示しました。日本人がよく旅行をする場所で特に注意が必要なのは、インド、中国、フィリピン、インドネシアのバリ島などです。

ただし、狂犬病のワクチン接種は、必ずしも流行地域に旅行する人全員に推奨されるものではありません。

「価格が高いこと(約1万5千円)」、「ワクチン接種に痛みがあること」、「ワクチンを何回も打たなければならないこと(通常は3回接種)」と、「実際に犬に咬まれて感染してしまうリスク」を天秤にかけてワクチン接種をすべきかを判断する必要があります。

したがって流行地で動物と接触する可能性がある人(獣医さんなど)、長期間流行地で滞在する場合、万が一犬に咬まれた場合でも近くに受診できる病院がない場合など、特殊な条件の場合には予防接種が勧められます。

私の場合も、ルワンダに長期で滞在することが分かっていたので、渡航前に狂犬病のワクチンを受けてきています。しかし、数週間程度の旅行者には狂犬病のワクチン接種は必ずしも勧められるものではありません。普通の旅行者であればほとんど打つ必要はないかと思いますが、気になる場合は、トラベルクリニック等に相談すると良いと思います。

WHO(世界保健機構)の報告によれば、現在一般的に使用されているワクチン接種を適切に受けて狂犬病ウイルスに対しての抗体が出来ると、少なくとも10年は維持されると考えられています。

流行地で犬にかまれた場合は緊急事態です。すぐに大量と水と石鹸を使って傷口を洗います。
自分を噛んだ犬が既に捕えられている状況では、その犬に狂犬病症状が発生しないかを保健当局や獣医など専門的な知識がある人に監視してもらいます。

その後出来る限り早く、狂犬病の発症を予防するために、予防接種と免疫グロブリン(RIG)の両方の投与を行う必要があります。しかしこの免疫グロブリンが利用できる地域は限られています(例えば、日本では免疫グロブリンの製造も輸入もされておらず、入手が非常に困難です)。したがって、狂犬病に対しての予防治療ができる医療機関のある地域まで移動する必要があります。

保険会社はどの国のどの場所で治療を受けられるかを知っているので、保険会社などに確認して、最短で移動することが大事です。たとえば私は仕事で、ブルンジに行くことがあります。私は予防接種を受けているので問題ないですが、仮に予防接種を受けていなかった場合は、ブルンジでは予防接種は利用できても、免疫グロブリンによる治療を受けることが出来ないので、ケニアまで移動して治療を受けなければなりません。すぐに専門家にコンタクトして、適切な治療が受けられる環境に移動することがとても重要です。

  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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