インタビュー

結核の薬物治療とは―抗結核薬とその副作用

結核の薬物治療とは―抗結核薬とその副作用
高崎 仁 先生

国立国際医療研究センター 呼吸器内科

高崎 仁 先生

この記事の最終更新は2016年04月11日です。

結核は以前、不治の病でした。しかし、きちんと治療をすれば今では基本的には治る病気と考えられます。それでも、結核を治療するためには長期間にわたって薬を飲む必要があり、入院しなければならないこともあるため、大変な治療であることは事実です。結核のスペシャリストである国立国際医療研究センターの高崎仁先生に、結核の薬物治療についてお話をお聞きしました。

日本では排菌陽性者を対象として以下の強化療法(WHOが推奨しているもの)を行っています。 排菌陽性者とは喀痰塗抹検査で陽性であること、つまり痰の中に結核菌がいることが検査で証明された方のことをいいます。

まずは2ヶ月、下記4種類の抗結核薬を内服します。

  • リファンピシン(略称RFP:殺菌作用)
  • イソニアジド(略称INH:殺菌作用)
  • ピラジナミド(略称PZA:殺菌作用)
  • ストレプトマイシン(略称SM:殺菌作用)(またはエタンブトール(略称EB:静菌作用))殺菌作用とは細菌を「死滅させていく」こと、静菌作用とは細菌がこれ以上増えないように「増殖を抑えていく」ことをいいます。そして、その後の4カ月は以下の2剤を内服します。
  •  INH+RFP

※これにEBを加えることもあります。

  • PZAの副作用として肝機能障害が出現しやすいため、高齢の方や肝機能障害がある方には使用できません。
  • PZAが使用できない場合または排菌の確認が得られない場合にはINH+RFPに、EBもしくはSMで6カ月間の治療を行います。
  • その後3カ月はINH+RFPで治療をします。

これらの抗結核薬は、1日1回の内服です。いずれの治療法においてもさらに追加で3-6ヶ月継続することがあります。それは基礎疾患に糖尿病があるときや骨や関節に痛覚があるとき、治療を始めても長い間菌が出続ける重症例、粟粒結核(身体の中に2ヶ所以上の結核病変がある)の場合です。じん肺に伴う肺結核感染症も治療に抵抗性がある(治療に対する反応を弱くする)ことが知られています。この場合も、やはり長めに治療します。

結核薬の副作用には以下のようなものがあります。
・ イソニアジド(INH):ビタミンB6欠乏とそれによる末梢神経炎、肝機能障害、発熱など
・ リファンピシン(RFP):胃腸障害、肝機能障害、アレルギー、血小板減少など
・ ピラジナミド(PZA):肝機能障害、高尿酸血症、関節の痛みなど
・ ストレプトマイシン(SM):聴神経の障害とそれによる難聴、耳鳴り、腎機能障害、発熱、発疹など
・ エタンブトール(EB):視神経の障害、胃腸障害

副作用を防ぐために
INHによる末梢神経障害を予防するためには、ビタミンB6製剤を同時に内服していきます。
治療前には肝臓の機能と聴力の検査を行います。INHは肝機能異常を生じやすく、さらにSMは腎機能障害や聴神経(ちょうしんけい)障害による難聴が起きることがあるからです。EBは視神経障害を引き起こす可能性があるので、眼科的検査を前もって受けます。

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