インタビュー

子どもの結核とはー予防接種が重要

子どもの結核とはー予防接種が重要

国立成育医療研究センター 神経内科

室伏 佑香 先生

石黒 精 先生

国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教...

石黒 精 先生

この記事の最終更新は2015年06月16日です。

結核は、結核菌を吸い込むことによって感染します。思春期以降の小児や成人では、感染しても菌が免疫によって抑え込まれるため症状が出ないことが多く、感染に気づかないことも珍しくありません。しかし菌自体は体の中にいるため、感染してから数十年後でも免疫力が低下した際には、抑え込まれていた菌が活動を始め発病します。肺に感染することが多いため、持続する微熱や倦怠感の他に、咳や血痰などの症状が特徴です。
 
一方で、乳幼児が感染した場合には、結核菌に対する免疫力が充分でないため増殖を抑えることが難しくなります。その結果、成人よりも短時間で菌が増殖し、感染後すぐに結核の症状が出ます(初感染結核)。

また、小児では結核菌が全身に広がって肺以外の場所に病気を作る割合が多く、感染した小児の25~30%で髄膜炎腹膜炎などの様々な臓器の症状が現れます。重篤な状態となり、残念ながら死に至ることもあります。そのため一刻も早く診断を受けて治療しましょう。
この結核を防ぐためにはBCGの予防接種を受けることが重要で、乳児期早期(生後5~8か月)に接種が推奨されています。

結核を発病している人がせきやくしゃみをすると、しぶき(飛沫)に含まれている結核菌が飛び散り、空気中を漂います。それを他の人が吸い込んで、肺に取り込まれることで感染が起こります(飛沫感染、空気感染)。

結核菌は肺の中で1〜2週間かけて増殖し、血液やリンパの流れに乗って全身に運ばれます。健康な成人であれば、免疫によって体内に侵入した結核菌の活動も封じ込めることができるため、多くの方は一生症状が出ません。しかし、乳幼児や、他の病気や何らかの原因のために免疫機能が弱まっている成人の場合でも、うまく結核菌を抑え込めないので、発病する可能性があります。また、一度は抑え込めても、活動を再開して発病することもあります。

結核の発病のしかたや症状は、年齢や免疫機能によって様々であり、以下のようなタイプに分類されます。

① 初感染結核(一次結核)

初感染してすぐに結核菌が増殖して発病するもので、感染者の約15%を占めます。乳幼児期での感染や、免疫力が低下している人に多くみられるタイプです。感染から症状出現までの期間は様々ですが、通常は3~9か月です。

乳児には微熱や軽度の咳、呼吸困難といった症状が現れることがありますが、幼児期以降に発病すると自覚症状に乏しく、症状があってもすぐに軽快します。
もし感染した結核菌の数が多かったり、免疫機能が低下したりしていた場合には、高熱・激しい咳・体重減少・夜間の発汗などが現れることもあります。適切な治療で多くの場合には治癒します。

② 二次結核

初感染から数か月~数十年後、免疫力が低下した際に、抑え込まれていた結核菌が活動を再開させて発病します。割合としては最も多く、ほとんどの成人結核がこのタイプです。前にも述べたとおり、小児でも学童期以降では二次結核がみられるようになります。
発熱・食欲不振・倦怠感・体重減少・夜間の発汗・痰を伴う咳・喀血(気道から出血すること)などといった症状が出現します。有効な治療を開始すれば数週間以内に症状は改善しますが、咳は数か月間続くこともあります。

③ 粟状結核

結核菌は肺のみに留まらず、血液やリンパ液にのって全身に流れていくことがあります。乳幼児や、免疫力の低下している人の場合は、大量の結核菌が血流に乗ってしまうため、肝臓・脾臓・皮膚・骨・関節などの全身の臓器で症状を起こします。この状態を「粟粒結核」と呼びます。感染から発病までは2~6か月で、食欲不振や体重減少、発熱に加えて、全身のリンパ節、肝臓、脾臓が腫れるようになり、進行すると腹膜炎髄膜炎を発症し死に至ります。早期に診断され、適切な治療を受けることがきわめて重要です。治療を行っても完全に治癒するまでには時間がかかります。

④ 結核性髄膜炎

③の粟状結核に併せて発症することが多く(合併症)、2歳以下に多く見られます。数週間にわたって徐々に進行し、食欲不振、不機嫌、軽度の発熱が2~3週間続いた後、頭痛、高熱、嘔吐、易刺激性(些細なことで不機嫌になる)、けいれん、意識障害などの症状へ進行していきます。結核性髄膜炎は大変重い合併症で、乳幼児が結核感染症で死亡する最大の原因です。治療をしても脳に重篤な障害が残ってしまうことも少なくありません。

まず、胸部X線検査やツベルクリン皮膚試験(皮膚に薬剤を注入しその反応性をみる検査)、インターフェロンガンマ遊離試験(結核感染を評価するための血液検査)などが診断の手がかりとなります。
さらに喀痰や胃液から結核菌を検出し、培養することによって結核であると確定されることになりますが、培養に時間がかかるため、施設によってはPCR法などの核酸増幅法(喀痰や胃液から直接結核菌の遺伝子を検出する方法)という検査を行うこともあります。

複数の抗菌薬を組み合わせて使用し(小児の場合には、イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミドなど)、6か月間治療を継続することが必要です。粟状結核髄膜炎は重篤な状態で、早期に確実な治療を行わなければならないため、上記にストレプトマイシンまたはエタンブトールを加えた4種類の抗菌薬を使用して強力に治療します。治療の詳細は成書を参照下さい。

この恐ろしい結核を防ぐためにもっとも有効な方法が、BCGの予防接種です。特に乳幼児の結核性髄膜炎や粟状結核の予防に有効性が高いといわれています。乳児を結核から守るため、生後5~8か月で接種を受けるようにしましょう。ただし例外として、先天性免疫不全症の一部の方にはBCGは勧められません。

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  • 国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)

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