ぞくりゅうけっかく

粟粒結核

最終更新日:
2024年05月28日
Icon close
2024/05/28
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)とは、肺に感染した結核菌が血液およびリンパ管内に侵入して全身に運ばれることで、さまざまな部位に結核の病巣が形成される病気のことです。結核菌は空気感染によってヒトに感染し、通常は吸い込んだ結核菌は肺に侵入してその場にとどまります。粟粒結核は肺に侵入した多量の結核菌が血液中に入って全身を巡ることで、肺の広い範囲に病巣が広がったり、肝臓・骨髄(こつずい)・髄膜など肺以外の臓器に病巣を形成したりします。病巣は直径1mm前後の粟のような大きさのものがいくつも細かく散在するため、粟粒結核と呼ばれています。

粟粒結核を発症すると、倦怠感や食欲不振、体重減少、発熱などの症状が生じ、体が衰弱していきます。病巣がある部位によっては咳、胸痛、頭痛、腹痛などの症状を引き起こすことがあります。

原因

粟粒結核は初めて結核菌に感染した際に発症するタイプと、初めて結核菌に感染して長い時間が経過してから発症するタイプに分けられます。初感染で発症するタイプは主に子どもや若い世代にみられることが多く、一度に多くの結核菌が血液中に入り込むことが原因と考えられています。一方、初感染から時間が経過してから発症するタイプはステロイドや免疫抑制薬などの免疫力低下を引き起こす薬剤の使用、透析治療、糖尿病白血病エイズなどの病気や老化によって免疫力が低下して肺の中に潜んでいた結核菌が活性化することによって生じると考えられています。近年では高齢化の影響により、長い時間をかけて発症するケースが増えているとされているため注意が必要です。

症状

はっきりした症状が出にくいケースもありますが、多くは発熱がみられ、倦怠感、脱力、悪寒、食欲低下などが生じ、徐々に全身が衰弱して体重や体力が落ちていきます。また、病巣が形成される部位によってさまざまな症状が現れます。特に粟粒結核は髄膜に病巣を形成して髄膜炎を発症するケースが多いとされ、約3割が髄膜炎を合併するとされています。そのため、発熱や頭痛のほか、吐き気や嘔吐、意識障害などを引き起こすこともあります。骨髄に病巣が形成された場合は骨に(れいのうよう)(発赤や熱感のない膿の塊)が形成されたり、痛みなどの症状が引き起こされたりすることがあります。そのほか、腎臓に感染した場合は腎機能の低下、性器に感染した場合は不妊、腸に感染した場合は腹痛・下痢・お腹の張りなど、全身にさまざまな症状が現れます。

検査・診断

粟粒結核が疑われる場合は、次のような検査が行われます。

画像検査

粟粒病巣の有無などを確認するため、X線、CT、MRIなどによる画像検査が必要になります。検査を行う部位は症状が現れている部位によって異なります。

血液検査

粟粒結核は全身の衰弱を生じることが多いため、貧血や炎症の有無、程度などを評価するために血液検査を行います。結核菌感染の有無を調べるために採取した血液を用いてTSPOT検査などを行う必要もあります。

喀痰・尿・胃液検査

採取した痰・尿・胃液の中に結核菌や結核菌のDNAが含まれているかを調べる検査を行います。それ以外の検体として病変部位に応じて気管支肺胞洗浄液*、胸水、腹水、髄液などの検査を行います。

気管支肺胞洗浄液:気管支鏡を用いて気管支内に生理食塩水を注入し、回収した液のこと。

生検・組織培養検査

気管支の内部に内視鏡を挿入し、採取した組織を顕微鏡で詳しく調べる生検や培養検査を行うことがあります。粟粒結核と似た画像所見を示す病気との鑑別を行うためには病理組織学的所見を確認することが有用とされています。また、肝臓・腎臓・骨髄・腸など肺以外の臓器に病巣を形成している場合は、それらの組織の一部を採取して同様の検査を行います。

治療

粟粒結核の治療は基本的に、通常の結核と同じく複数の抗結核薬を用いた薬物療法を行います。症状が強い場合や髄膜炎においては炎症を抑えるためにステロイドを併用することも少なくありません。肺以外に病巣がある場合は、それぞれの臓器のダメージの程度によって薬物療法以外の治療が必要になることがあります。具体的には、腎臓に病巣があり腎機能が著しく低下して高血圧を引き起こしているような場合は腎臓を摘出する手術が必要です。骨髄に病巣がある場合は手術による切除、腸に病巣があって腸の内部が狭くなっているような場合は手術によるその部位の切除など、それぞれの症状に合わせた治療が必要です。

予防

粟粒結核は、結核菌に感染することが原因で発症します。そのため、発症を防ぐためには結核菌への感染を予防することが大切です。しかし、結核菌は空気感染するため完全に予防するのは困難です。日本では乳児期に定期接種となっている結核予防のワクチンであるBCGを忘れずに接種する必要があります。また、粟粒結核は免疫力が低下すると発症するリスクが高くなるため、日頃から生活習慣を整え、免疫力が低下しがちな基礎疾患がある場合は適切な治療を継続しましょう。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「粟粒結核」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

粟粒結核

Icon unfold more