インタビュー

結核の治療とは―入院と退院の基準

結核の治療とは―入院と退院の基準
高崎 仁 先生

国立国際医療研究センター 呼吸器内科

高崎 仁 先生

この記事の最終更新は2016年04月10日です。

薬剤治療の内容や期間、さらには入院中の生活も合わせて、結核は発病してしまうとなかなか大変な病気です。それでは、入退院の基準はどのように定められているのでしょうか。また、入院中はどのような病棟に入るのでしょうか。国立国際医療研究センターの高崎仁先生にお話をお聞きしました。

結核の入退院基準は厚生労働省の通達によって定められています。以下に、厚生労働省の通達を一部改変し、引用します。やや読みにくい文ですので、末尾に簡単な説明を加えています。

  1. 肺結核、咽頭結核、喉頭結核または気管支結核の患者であり、喀痰塗抹検査(かくたんとまつけんさ)の結果が陽性であるとき。
  2. ①の喀痰塗抹検査の結果が陰性であった場合に、喀痰、胃液又は気管支鏡検体を用いた塗抹検査、培養検査又は核酸増幅法の検査のいずれかの結果が陽性であり、以下のア、イ又はウに該当するとき。

感染防止のために入院が必要と判断される呼吸器などの症状がある。

外来治療中に排菌量の増加がみられている。

不規則治療や治療中断により再発している。

「退院させなければならない」基準

  1. 病原体を保有していないこと
  2. 当該感染症の症状が消失したこと

「当該感染症の症状が消失したこと」とは、咳、発熱、結核菌を含む痰等の症状が消失したこととし、結核菌を含む痰の消失は、異なった日の喀痰の培養検査の結果が連続して3回陰性であることをもって確認することとする。ただし、3回目の検査は、核酸増幅法の検査とすることもできる。その場合、核酸増幅法の検査の結果が陽性であっても、その後の培養検査又は核酸増幅法の検査の結果が陰性であった場合、連続して3回の陰性とみなすものとする。

「退院させることができる」基準

2週間以上の標準的化学療法が実施され、咳・発熱・痰などの臨床症状が消失している。

2週間以上の標準的化学療法を実施した後の異なった日の喀痰の塗抹検査又は培養検査の結果が連続して3回陰性である。(3回の検査は、原則として塗抹検査を行うものとし、アによる臨床症状消失後にあっては、速やかに連日検査を実施すること)

患者が治療の継続及び感染拡大の防止の重要性を理解し、かつ、退院後の治療の継続及び他者への感染の防止が可能であると確認できている。

※入院、退院の基準の解説

  • 標準的化学療法とは、抗生物質による薬物治療のことを指します。
  • また、入退院のポイントは「排菌の有無」です。つまり、結核菌を排出しているかどうかという点が重要になります。
  • 排菌の有無は喀痰塗抹検査を行うことにより調べます。痰の中に結核菌がいるかどうかを調べる検査です。

※結核の患者さんが出ると保健所に届ける

  • 感染症法に基づいて、結核の患者さんが出た場合には病院の最寄りの保健所に届け出ます。その後、患者さんが住んでいる自治体の保健所が対応します。
  • もし国立国際医療研究センターで結核の患者さんが出た場合には、まずご本人に入院の勧告を行います。その後、新宿区の保健所にFAXをして、そこから患者さんの地元の保健所に連絡が行きます。
  • 保健所では様々なサポートをしてくれます。例えば、入院の費用は自治体が負担します。

排菌しなくなるまでは、特殊な病棟に入院することが一般的です。その特殊な病棟を「陰圧病棟」といいます。陰圧病棟では外へ空気が出て行かないための工夫がされています。つまり、常に気圧が外気より低くなるように管理されているのです。東京ドームでは、室内の気圧を高く保つことで天井を持ち上げています。この逆の状態と考えると、理解しやすいと思います。

しかし、陰圧病棟の環境がある病院は多くはありません。そのため、どこにでも入院できるというわけではないのです。入院できる病院が限られているだけではありません。一般病棟には行けないため、院内を自由に移動することもできなくなります。外からの面会は可能です。面会者は結核菌を通さない特殊なマスク(N95マスク)を使用して、病棟へ入ることができます。

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