概要
結核菌(Mycobactrium tuberculosis)に感染することによって発症する疾患を結核と呼びます。結核は空気中に存在する菌を吸い込むことで感染(空気感染・飛沫核感染)するので、結核の大半は肺結核ですが、菌が肺からリンパの流れに沿ってほかの臓器まで拡がった場合、「肺外結核」と呼ばれる病巣が形成されます。
2016年の統計では、結核の新規登録患者約17600人のうち、肺結核が13600人、肺外結核が約4000人でした。肺外結核の内訳としては、肺の周りを覆う胸膜(結核性胸膜炎)、体中のリンパ節(リンパ節結核)、大腸(腸結核)、「脊椎」と呼ばれる背中の骨(脊椎結核)、脳や髄膜などの中枢神経(結核性髄膜炎・脳結核)などがあります。特殊な病型として、多量の結核菌が短期間に血液中に入ることで全身に播種性に結核病巣が形成される「粟粒結核」と呼ばれる状態などがあり、結核には実に多彩な病型が存在します。
原因
空気感染により結核菌に感染した場合、大半の菌は免疫細胞により処理され殺菌されますが、生き残った一部の菌はリンパの流れに沿って移動していき、定着した先で増殖して結核病巣を形成します。結核病巣の多くは肺内に形成されますが、ときには肺以外の臓器(胸膜、リンパ節、腸、骨、脳・髄膜など)に形成されることもあります。
また、結核菌に感染した後すぐには発病せず、数年から数十年間体内に居座り続けた後、感染者が糖尿病やがん、腎臓病などの病気にかかって免疫力が低下したときや、さまざまな病気の治療のために免疫力を低下させる作用を持つ薬剤(副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制剤、抗癌剤など)を服用した際などに結核が発病することもあります。
症状
肺結核の症状としては頑固な咳や痰、血痰などが有名ですが、肺外結核ではこれといった特徴的な症状がなく、微熱や軽い倦怠感など、はっきりしない症状が多いです。
肺外結核のなかで最も頻度の高い結核性胸膜炎では、比較的急激に発症する胸痛がみられることもあります。また、「胸水」という液体が肺の周りに貯まってくるために咳が出たり呼吸が苦しくなったりすることがあります。ただし、同じように発熱と胸痛を呈する病気である「細菌性胸膜炎・膿胸」と結核性胸膜炎を症状のみで区別することは難しく、後述するような検査を行って診断を進めていく必要があります。
この他、結核性髄膜炎では髄膜が刺激されることで生じる頭痛、嘔気、嘔吐などの症状がみられることがありますし、脊椎結核では腰痛や下肢のしびれ・筋力低下、腸結核では下痢や軟便、腹痛、腹部膨満などの症状がそれぞれみられることがあります。
検査・診断
結核の診断の基本は、体内に結核菌が存在することを細菌学的に証明することです。肺結核であれば、喀痰を採取し結核菌のDNAを増幅させて調べる検査を行って結核菌の有無を調べます。
肺外結核においても、たとえば結核性胸膜炎では貯留した胸水を採取して同様に結核菌のDNAを調べることができますが、この検査が陽性になるのは結核性胸膜炎全体の80%程度とする報告から20%以下とする報告まで幅があり、胸水中に結核菌が証明できないからといって結核性胸膜炎を否定することはできません。特に、胸水中のリンパ球やアデノシンデアミナーゼ(ADA)という酵素が増えている場合には結核性胸膜炎が強く示唆されます。
骨やリンパ節など肺外結核の一部では組織や細胞の採取が難しく、細菌学的な証明ができない場合もあります。そのような場合には、血液検査で結核感染の有無を調べる抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査(IGRA)などを参考に、総合的な判断で結核感染の有無を推定することになります。
治療
肺外結核の治療も基本的には肺結核の治療と同様に、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、ストレプトマイシンまたはエタンブトールの4剤を2か月間服用し、その後リファンピシンとイソニアジドをさらに4か月間併用する方法が行われます。標準的な治療期間は6か月ですが、結核性髄膜炎などの重篤な感染症では最低9か月は治療したほうがよいとされています。また、腸結核や脊椎結核では腸閉塞や椎骨の圧潰などの合併症を避ける目的で外科的手術が選択されることもあります。
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