きゅうせいしんふぜん

急性心不全

心臓

目次

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概要

急性心不全とは、全身に血液を送り出す心臓の機能が急激に低下してしまう病気をいいます。血液は肺で取り込んだ酸素を全身の細胞へ送り届けるために全身を循環していますが、原則として、左心 → 動脈 → 全身の細胞 → 静脈 → 右心 → 肺 → 左心 という直列の回路になっています。また、血液の循環が機能するためには、下記の要素が必要となります。

(1) 全身から血液が心臓へ戻ってくる

(2) 心臓の右心室が血液を肺へ送る

(3) 心臓の左心室が血液を全身へ送る

(4) 全身の血管が適度な血流の抵抗を維持することで血圧を保つ

これらのいずれかが損なわれると血液の循環が不十分となります(循環不全)。

急性心不全とは、これらのうち(1)または(3)が損なわれることによって循環不全に陥るものをいいます。(1)が損なわれた場合を「急性右心不全」、(3)が損なわれた場合を「急性左心不全」といいます。なかには、急性左心不全がもともとあり、次第に右心不全を合併してしまう両心不全という状態に陥ることもあります。

原因

急性心不全は、主に心臓(左心)から血液を送り出すポンプ作用の低下が原因となります。最も多いのは急性心筋梗塞や不安定狭心症などの虚血性心疾患です。心臓を動かすための筋肉(心筋)に必要な酸素や栄養素を送る冠動脈がふさがり、心筋の一部が酸素不足(虚血状態)に陥ってしまうことによって起こります。

その他、心臓弁膜症の急激な悪化、心筋症や心筋炎、房室ブロックなどの不整脈といった心臓の病気が原因となります。

症状

急性心不全の症状は、左心不全と右心不全とで大きく異なります。

左心不全

左心不全では、下記のような症状が現れます。

手足が冷たく白っぽい

心臓から全身へ向かう血流が不十分となるために起こります。

だるい(全身倦怠感)、息が切れる、疲れやすい(易疲労感)

全身の細胞が必要とする酸素を十分に送ることができないために起こります。

意識がはっきりしない(意識障害)

脳に向かう血流が不十分となるために起こります。

息苦しさ、呼吸障害、起坐呼吸

起坐呼吸とは、起き上がっていないと苦しいために横になれない状態のことで、左心不全で典型的な症状です。これらの症状は、左心からうまく送り出せない血液が呼吸のための臓器である肺でたまってしまうことによって起こります。

左心不全の原因が急性心筋梗塞や急性冠症候群である場合には、心臓の筋肉の細胞(心筋細胞)への栄養が不十分となるために前胸部痛や胸のしめつけ感(胸部絞扼感)といった症状が前面に現れます。

右心不全

右心不全では、心臓から肺へ血液を送ることが不十分となるため全身から右心へ戻る血液がうまく戻れなくなり、顔や手足(特に足)のむくみやだるさ、肝機能障害、頚静脈などがふくれあがる(怒張する)、胸に水がたまる(胸水)などの症状が現れます。

検査・診断

胸部X線写真撮影、心臓冠動脈CT、心臓超音波検査

心臓の大きさや動きを評価するために行います。

血液検査、尿検査

実際に循環不全やいろいろな臓器障害が生じているかどうかを調べます。

心臓カテーテル検査、肺動脈カテーテル検査

心臓の周囲を流れる血流が生み出す圧力が急性心不全の重症度や分類、そして治療方針の決定にとって重要となるため、これらの検査を行います。

心臓カテーテル検査では、左右の冠動脈に造影剤を流して動脈硬化や血栓などで狭くなった部位や血流の勢いの評価などを行います。必要に応じて、検査をした直後からカテーテルを用いた治療(冠動脈インターベンション)を行うこともあります。

治療

急性心不全は生命に危険が及ぶ可能性のある病気です。そのため、まずは生命を守るための全身管理が必要となります。心臓のポンプ作用の低下、肺のうっ血(静脈内に血液がたまった状態)と全身のうっ血による臓器障害、それぞれに対して治療を行います。

初期治療の基本は酸素投与と薬物療法ですが、心臓のポンプ作用の低下に対しては血圧を上げる昇圧薬や強心薬、肺のうっ血に対しては血管の水分量を減らす利尿薬や肺の血管を拡張させる硝酸薬を用います。

さらに、心筋梗塞などの虚血性心疾患の疑いがある場合には、心臓カテーテル検査を行い、検査後すぐに冠動脈インターベンションを行います。また、患者さんの自己心拍だけでは十分な血流の循環が保てないようであれば、大動脈内バルーンパンピング法(IABP)や体外補助循環装置(PCPS)を用いることもあります。

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