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超高齢社会で増加を続ける心不全 その原因とは?

超高齢社会で増加を続ける心不全 その原因とは?
中島 敏明 先生

獨協医科大学 特任教授

中島 敏明 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年07月26日です。

心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、血液循環が悪化することで、さまざまな症状があらわれる状態です。65歳以上の人口が約3割を占める超高齢社会となった日本では、心不全の患者数が年々増加しています。(2018年時点)心不全とは、どのような原因で起こるのでしょうか。獨協医科大学の中島敏明先生にお話を伺いました。

心臓は、血液を全身に送るポンプの役割を担っています。心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、血液循環が悪化することで、さまざまな症状があらわれる状態をさします。

心臓から送り出された血液には酸素が十分に含まれており、その血液は動脈を伝わって脳や主要な臓器など全身に運ばれます。血液は、全身に酸素と栄養を運んだあと、静脈を伝わって心臓に戻ります。そしてで酸素を受け取り、さらに心臓へと酸素を運びます。このように全身の血液は循環しているのです。心不全になると、全身の循環が不良になります。

血液循環

心不全には、大きくわけて「急性心不全」と「慢性心不全」があります。

急性心不全

急性心不全とは、心臓のポンプ機能が急激に低下し、短期間に症状があらわれる状態をさします。数分から数時間、あるいは数日といった期間で症状があらわれ、軽症から重症まで幅広いです。急性心不全は短期間で急激に症状が悪化することから、命にかかわるケースもあります。

慢性心不全

慢性心不全とは、症状の程度を問わず、数か月から数年という長期間にわたり、心臓のポンプ機能が低下し症状があらわれる状態をさします。

急性心不全と慢性心不全は別の病気ではなく、交互に起こる

急性心不全と慢性心不全の違いを説明しましたが、これらはまったく別の病気ではなく、同じ患者さんに交互に起こることがあります。

たとえば、「急性心不全」で急激に心機能が低下すると、通常は入院が必要です。治療によって症状が回復すると「慢性心不全」の状態となります。慢性心不全は、風邪や過度のストレス、貧血、治療の中断などを原因として急性増悪(きゅうせいぞうあく)(急激に状態が悪化すること)し、急性心不全を発症することがあります。このように急性心不全と慢性心不全を繰り返すことで、徐々に心機能が低下していきます。

心機能ー時間

厚生労働省の発表によると、心不全の総患者数は年々増加しています。さらに、2030年には心不全の患者数が130万人にのぼると予測されています。このような背景には、人口の高齢化や生活習慣病などの増加があるとされており、今後ますます高齢化が進むなかで、「心不全」は注目すべき病気といえるでしょう。

心不全では、以下の症状があらわれることがあります。

急性心不全では、以下のような症状が、短期間のうちに現れます。

  • 激しい呼吸困難や咳込み(とくに夜間に強く、横になって眠れない)
  • 胸の痛み
  • 動悸
  • 顔面、手足の皮膚蒼白
  • 冷感
  • 足のむくみ

など

重症の場合、意識がはっきりしなくなることもあります。

胸の痛み

慢性心不全では、以下のような症状が、徐々にあらわれます。

  • 呼吸困難、労作時息切れ
  • 疲れやすさ
  • 四肢(両手、両足)の冷え
  • 動悸
  • 咳込み
  • 足のむくみ

など

先述の通り、慢性心不全は、風邪やストレスなどをきっかけに急激に症状が悪化することがあり、その場合には急性心不全と同様の症状があらわれます。

心不全にはさまざまな原因があり、以下の2種類に大別できます。

これらの原因が複合的にかかわり、心不全を引き起こします。

  • 心臓の機能に原因がある場合
  • 心臓の機能以外に原因がある場合

心臓の機能に原因がある場合の病気としては、おもに以下が挙げられます。

虚血性心疾患

心臓の機能に原因がある場合として代表的なものは、狭心症心筋梗塞を含めた「虚血性心疾患」です。虚血性心疾患とは、心臓の酸素・栄養を司る冠動脈が閉塞(閉じる)あるいは狭窄(きょうさく)(狭くなる)し、心筋(心臓を構成する筋肉)に血液がうまく流れないことによって起こる病気で、高齢者に多くみられます。

狭心症・・・心臓に酸素や栄養を送っている冠動脈という血管が狭くなり、心臓が活動するために必要な血液が十分に供給されなくなることで起こる病気です 。

心筋梗塞・・・心臓への血流が不足した結果、心臓の細胞が壊死(えし)を起こした状態をさします。生活習慣病の一種であり、動脈硬化を基盤として発症する病気です。

心筋症

心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)が障害されることで、心機能が低下する病気です。心臓は収縮・拡張することでポンプ機能を発揮していますが、心筋症では心筋そのものの異常に伴い、収縮・拡張作用が低下します 。

心筋症は、比較的若年の方にも起こる病気です。

心臓弁膜症

心臓弁膜症とは、心臓に存在する弁に何らかの機能障害が生じ、心臓のポンプ機能に支障をきたす病気です。心臓の弁は4種類あり、それぞれの弁において機能障害が生じる可能性があります 。心臓の弁に異常があると、心臓からうまく血液を送り出すことができず、心不全に至ります。

心臓弁膜症のうち、高齢者に多くみられる大動脈弁狭窄症は、心不全の原因を考えるときに重要な病気といえるでしょう。

心臓の機能以外に原因がある場合として、代表的なものは、「高血圧」です。血圧が高い状態が長期間続くと、心臓に負担がかかり、心機能が徐々に悪化していきます。また、糖尿病や腎臓病なども心不全のリスクファクターです。このように、心臓の機能以外が原因の場合には、生活習慣と関係する病気が大きなかかわりを持ちます。

これまでご説明したように、心不全の多くは、高血圧などを含めた生活習慣病と密接な関係があります。そのため、まずは生活習慣の改善をすることが大切です。たとえば、塩分摂取量を適切に管理し、適度な運動を心がけます。

また、明らかな症状が出る前に異常に気付くことができれば、治療によって心不全の発症、症状の進行を防止できる可能性があります。よって、軽度のうちに心不全を発見するための検査も重要といえます。(心不全の検査については、記事2『心不全の検査はどのように行うの? 臨床症状や心エコー検査が重要』でご説明します。)

先生がお話しされている姿

前項でお話ししたように、心不全を予防するためには生活習慣を改善することが大切です。しかしながら、高齢になれば心不全のリスクは高まりますので、何か気になる症状や体の変化などがあれば、「年のせい」と軽視せずに、病院を受診しましょう。
 

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