心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、血液循環が悪化することで、さまざまな症状があらわれる状態です。記事1『超高齢社会で増加を続ける心不全 その原因とは?』では、「心不全の原因」についてご説明しました。心不全を疑うとき、どのような検査を行うのでしょうか。獨協医科大学の中島敏明先生にお話を伺いました。
心不全の検査では、まずは心不全特有の臨床症状(実際に出ている症状)があるかを確認したうえで、さまざまな方法で詳細な検査を行います。なかでも特に、問診と心エコー(超音波)検査が重要です。
<心不全の検査>
心不全の検査では、まず問診を行い、心不全特有の臨床症状を確認します。たとえば、数年前から坂道や階段を上ったときに息切れや動悸が起こる、食欲がないのに体重が増えてむくんでいる、夜中に発作的に息が苦しくなって咳き込む、血が混ざったピンク色の痰が出る、といった症状は典型的です。
また、現在の病気や既往症(過去にかかったことのある病気)を確認することによって、心不全のリスクファクターを持っているかを調べます。たとえば、以下のような要素が挙げられます。
心不全の診断においては、「心エコー検査」とも呼ばれる、エコー(超音波)検査が非常に重要です。心エコー検査では、心臓の動きを観察することで、心筋の厚さ、弁の状態、心臓のポンプ機能などを詳しく確認できます。
心エコー検査は、心不全を確定するために必要な検査ともいえます。心エコー検査は外来で受診可能であり、一般的な検査の所要時間は30分〜1時間ほどです。
心不全の検査・診断では、血液検査も非常に参考になります。採血を行い、心臓から分泌されるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンの数値を測定します。
BNPには、血管拡張作用、利尿作用などがあります。心臓に負担がかかると、心臓を保護するためにBNPが上昇します。ただし、BNPの数値が高いからといって心不全を確定できるわけではありません。なぜなら、腎臓の機能低下や心房細動など、ほかの病気でも上昇する可能性があるからです。
心電図検査では、心電図の波形から、心筋梗塞や不整脈など心臓の病気があるかを調べることができます。
胸部X線検査では、心臓が拡大しているか(心拡大の有無)、肺に水が溜まっているか(胸水の有無)、肺のうっ血があるか、などを調べることができます。
胸郭(胸全体の大きさ)に対して心臓の大きさが占める割合を「心胸郭比(=CTR)」といいます。この値が50%以上の場合、「心拡大」の状態となり、心不全を疑います。
心臓カテーテル検査では、事前に局所麻酔を行い、カテーテル(医療用の長くて細いチューブ)を手首、腕や脚の付け根から挿入して、冠動脈(心臓に血液を供給する血管)まで到達させます。血液の流れや、冠動脈の状態を調べることができます。
心臓カテーテル検査を行うためには入院が必要です。
心不全の検査の多くは、外来で受診可能であり、低侵襲(体の負担が少ない)です。もし何か心不全を疑うような症状があれば、なるべく早めに、心臓血管系の内科や循環器内科を受診してください。
高齢の方は、心不全の症状である動悸や息切れがあっても「年のせい」と見過ごしがちです。早期に心不全を発見し、治療することができれば、病気の進行を抑えられる可能性があります。そのためにも、検査は非常に重要と考えます。
獨協医科大学 特任教授
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