概要
心肥大とは、心臓の壁が厚くなって通常よりも大きくなった状態のことを指します。
心肥大を引き起こすもっとも多い原因は高血圧とされていますが、そのほかにも心臓弁膜症、先天性心奇形、肥大型心筋症、サルコイドーシスなどの病気も心肥大の原因となります。また、病気ではないものの、持久力を要するスポーツを続けることで“スポーツ心臓”と呼ばれる心肥大を引き起こすことも知られています。
心肥大は放っておくと心臓の機能低下を招くこともあるため、原因を鑑別してそれぞれに合った治療を行っていくことが大切です。心肥大の多くは自覚症状がなく、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。異常を指摘された場合は軽く考えず、医師の診察を受けることが大切です。
原因
心肥大は、心臓の壁が厚くなって心臓のサイズが大きくなった状態のことです。
心臓の壁は筋肉でできており、1日に十万回の拍動を繰り返して血液を全身に送り出しています。そのため、心臓の壁を形成する筋肉には大きな負担がかかっていますが、何らかの原因でさらに負担がかかると筋肉の細胞が大きく変性していきます。その結果、心臓の壁自体が大きくなるのです。
心臓の壁に負担をかけて心肥大を引き起こすもっとも多い原因は高血圧とされています。また、心臓弁膜症や心室中隔欠損などの先天性心疾患といった心臓に負担がかかる病気も心肥大の原因となります。一方で、心臓に病気がなくても甲状腺機能亢進症や脚気など動悸を引き起こす病気も心臓に負担をかけるため、心肥大を引き起こすことがあります。
また、心臓に負担がかかる病気がない場合でも心肥大が生じることも少なくありません。代表的な原因としては、マラソンなど持久力が必要な運動を続けることで、少ない心拍数で多くの血液を送り出すことができるように順応し、心臓の筋肉が発達する“スポーツ心臓”があります。さらに、遺伝子の変異によって心臓に負担がかかっている状態ではないにもかかわらず心肥大が生じる“肥大型心筋症”という病気も知られています。また、心臓の筋肉に異常な成分がたまる状態で、心臓が肥大するサルコイドーシス、アミロイドーシスなどもあります。
症状
心肥大は自覚症状がないことが多いとされています。しかし、進行すると心臓の機能が低下するため全身に十分な血液が送り出せなくなることで、息切れや動悸、胸の圧迫感、むくみなどの症状が現れるようになります。また、種々の不整脈の発症リスクも高くなり、心房細動が生じると血栓(血の塊)が形成されやすくなって脳梗塞などの発症リスクが高くなります。
検査・診断
心肥大が疑われるときは次のような検査が行われます。
画像検査
心臓の大きさを確認するために画像検査を行います。一般的には胸部X線検査が行われ、心臓が大きくなっているかを確認します。心臓の筋肉が肥大しているのか、 心臓の内腔が大きくなっているか、心臓の機能が低下していないかを評価するために心臓超音波検査で詳しい検査を行います。MRIや心筋シンチで、心筋症やサルコイドーシスやアミロイドーシスの異常を見つけることが可能になってきています。
心電図検査
心肥大は重症化すると不整脈の発症リスクが高くなるため、心電図検査を行うのが一般的です。また、不整脈の有無を詳しく調べるには、24時間心電図を記録するホルター心電図検査を行うことも少なくありません。
血液検査
心臓の筋肉のダメージや心不全の有無を調べるために血液検査を行う必要があります。診断のためだけではなく、経過観察にも役立つ検査です。
治療
根本は、原因治療が大切です。心肥大は高血圧など原因となっている病気の治療を継続して行うことが大切です。特に高血圧が原因の心肥大は、血圧を下げる薬の種類によっては心肥大を改善する効果も認められているため、それらを使用した治療が行われます。
また、すでに心臓の機能が低下して何らかの症状がある場合は、利尿薬や血管拡張薬などによる薬物療法が行われます。心房細動などの不整脈を併発している場合は、抗不整脈薬や抗凝固薬などが必要です。
セルフケア
心肥大の原因はさまざまですが、もっとも多いとされているのは高血圧です。日ごろから食事や運動、ストレス、喫煙などの生活習慣を見直して高血圧を予防するのはもちろん、健康診断などで血圧が高いことを指摘された場合は軽く考えずに医師の診察を受けるようにしましょう。
また、心肥大は高血圧以外にも心臓に負担がかかりやすい病気によって引き起こされることがありますし、サルコイドーシス、アミロイドーシス、甲状腺機能亢進症などがある方は医師の指示にしたがって治療や経過観察をしていくことが大切です。
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