概要
先天性心疾患とは、生まれつき心臓や血管の形に異常をきたす状態のことを指します。100人に1人の割合で発症するといわれていますが、重症度や症状の現れ方などはさまざまです。
先天性心疾患には、以下のように多くの病気が存在します。
などが挙げられます。
なかでも心室中隔欠損症は発症の頻度が高く、先天性心疾患の中でももっとも多い割合を占めると考えられています。
また、心房中隔欠損症も頻度の高い病気ですが、成人期になってから発見されることも少なくありません。
原因
先天性心疾患は、さまざまな原因によって引き起こされます。たとえば、ダウン症候群や18トリソミー、13トリソミー、2q11.2 欠失症候群などの染色体異常が起きている場合、これらの病気のひとつの病状として心疾患を発症することがあります。
ある種の病気では親子、同胞発生なども報告されています。
また、妊娠中の薬剤やアルコールの摂取、喫煙などの影響も考えられています。ただし、原因を特定できないことも少なくはありません。
症状
先天性心疾患は、発症している病気や重症度により症状の現れ方もさまざまです。
重症なタイプでは、出生後間もなくからチアノーゼ(皮膚や粘膜などが青紫色になる状態)や息苦しさなどの症状がみられることもあります。
生後すぐに症状が現れない場合でも、時間経過と共に症状が明らかになるタイプもあります。この場合には、哺乳がうまくできずに体重が増えない、汗をかく、呼吸回数が多い、知能の発達が遅れる、などの症状がみられることがあります。
また、学童期以降に症状が出現するものもあります。この場合には、疲れやすい、息切れがするなどの症状から病気が指摘されることや、検診時に病気が疑われることもあります。
注意が必要なアイゼンメンジャー症候群
アイゼンメンジャー症候群は、先天性心疾患のなかでも心室中隔欠損症や、心房中隔欠損症など一部の心疾患が放置されて肺高血圧症を合併することによって起こります。
発症すると、心臓だけでなく肺にも強く障害を受けるため、心臓と肺のどちらも治療が必要となり、治療がかなり難しくなります。
検査・診断
先天性心疾患では、胎児期の超音波検査で病気の存在が疑われることもあります。出生後であれば、聴診や視診などが行われ、心臓の雑音が指摘されることがあります。
検査方法としては、胸部単純レントゲン写真や心電図、超音波検査、血液検査などを用いて心臓の構造や心不全の状態、肺の血流状況などを詳細に確認します。
さらに細かく病状を評価するためにカテーテル検査が行われることがあり、治療方針の決定に重要な役割を担います。
治療
先天性心疾患の重症度はさまざまであり、無治療で経過観察することもあれば、出生後すぐに緊急の処置が必要とされることもあります。
治療が行われる場合には、内服薬(利尿剤や強心剤など)、点滴薬、カテーテル治療、手術などを組み合わせて治療を行ないます。
カテーテル治療や手術は一回の治療で終わることもあれば、複数回の処置が必要となることもあります 。
無症状に見えても、治療介入のタイミングを逃すケースもあるので正しい判断が重要です。また、同じ病気でも治療介入のタイミングは、年齢や体重、病気の重症度などによっても大きく異なります。
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