しんぼうちゅうかくけっそんしょう

心房中隔欠損症

同義語
ASD(Atrial Septal Defect)
最終更新日:
2020年12月18日
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2020/12/18
更新しました
2017/04/25
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概要

心房中隔欠損症(Atrial septal defect :ASD)とは、心房中隔(右心房と左心房を2つの空間に分けている壁)に穴が開いている状態を指します。心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋から構成されています。右心房と左心房は、それぞれ全身と肺からの血液が戻ってくる部屋です。この両者の部屋は心房中隔と呼ばれる壁により隔てられています。

心房中隔欠損症は、先天性心疾患(産まれつきの心臓の病気の総称)の1つであり、その中でも一定の割合を占めています。また、心房中隔欠損症は女児に多いことが知られています。

先天性心疾患ではあるものの、無症状であることが多いため、新生児や乳児期に発見されることは少なく、就学時検診やそのほかの理由で小児科を受診した際などに発見されることが多いです。大きな穴では自然閉鎖は期待できず、年齢を経てから心不全による症状が徐々に現れることもあります。心臓や肺への負担状況を判断しながら、治療が行われる病気です。

原因

胎児期、左右の心房を隔てる心房中隔には、卵円孔(らんえんこう)と呼ばれる生理的な穴が存在しています。胎児は胎盤を介して酸素を取り入れるため、肺で酸素を取り入れる必要がありません。そのため、胎児の右心房に返ってきた血液は肺へ流れることは少なく、卵円孔を介して左心房へと移動します。

出生後、赤ちゃんは自分自身の肺で酸素を取り込まなければならなくなるため、右心房に帰ってきた血液が肺に流れるようになり、卵円孔は不要になります。そのため生後、卵円孔は自然閉鎖します。

心房中隔欠損の多くは卵円孔の部位に認めますが、タイプによって穴が生じる場所は異なります。それぞれのタイプに応じて、症状の現れ方や自然閉鎖するかどうかの傾向、治療法も異なってきます。

原因として特定の遺伝子異常は分かっておらず、複数の遺伝的要因や環境的要因が考えらえています。また染色体異常や胎児期における風疹(ふうしん)による感染、母体のアルコールの過剰摂取なども心房中隔欠損症の発症に関与するリスク因子であると考えられています。

症状

心房中隔欠損により、新生児期や乳幼児期に症状が現れることはまれです。一方、同じように心臓に穴が空いている心室中隔欠損症においては、乳児期にも症状が出ることがあります。心室中隔欠損症とは異なり、心房中隔欠損症は、症状がないうちから、3歳児検診、学校心臓検診、別の病気などでかかりつけ医に見てもらったことなどをきっかけに診断されることが多い病気です。

心房中隔欠損症では、同じ世代の子どもと比べるとやや体が小さい、走ると疲れやすい、風邪をひきやすいなど、間接的に心臓や肺への負担を示唆する症状が見られることがあります。

病状がさらに進行すると、成人期以降にチアノーゼ、易疲労感、失神、胸痛、多呼吸、寝汗、不整脈心房細動と呼ばれるものが代表的)などが生じることもあります。また、妊娠をきっかけにこれらの症状が現れることもあります。

検査・診断

お子さんに症状がない場合でも、聴診所見から心房中隔欠損の疑いを指摘されることがあります。胸部X線、心電図、心エコー検査をもとに診断されます。

心房中隔欠損が大きく、心臓や肺に負担が大きい場合には、治療が必要です。また、心臓にほかの先天性心疾患を伴うことがあります。そのため、治療方針の決定や合併症の判断をより正確にするために、心臓カテーテル検査を行うこともあります。

治療

治療(手術や内服薬の処方など)を行うかについては、心房中隔欠損に伴う症状や合併心疾患の有無などによって判断します。

心房中隔欠損が小さく、合併する心疾患もないお子さんの場合は、無治療で経過観察します。一方、欠損が大きく、心不全症状が現れた場合には、利尿剤などで心不全症状のコントロールを行い、次に述べる閉鎖術を検討します。また、不整脈が見られる場合には、抗不整脈薬を用いることも検討されます。

心房中隔欠損症は、心室中隔欠損症と比べて自然閉鎖は期待しにくい病気です。そのため、経過を見ながら、心房中隔欠損の閉鎖術を検討します。閉鎖術には大きく2つの方法があります。1つはカテーテルにより閉鎖する方法(カテーテルインターベンション)、もう1つは心臓の穴を直接閉じる方法(パッチ閉鎖や直接縫合など)です。

カテーテルインターベンションのメリットは、胸にメスを入れる必要がなく、太ももの血管から穴を防ぐ栓を挿入して閉鎖する方法であり、侵襲性(しんしゅうせい)が低い点です。しかし、心房中隔欠損の位置や大きさによっては適応にならない場合もあります。穴の位置やそのほかの合併症(たとえば弁の逆流)の関係から、手術が選択されることもあります。

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