しんぼうちゅうかくけっそんしょう

心房中隔欠損症

別名:ASD
心臓

目次

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概要

心房中隔欠損症(ASD)とは、心房中隔(右心房と左心房を二つの空間に分けている壁)に穴が開いている状態を指します。心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋から構成されています。右心房と左心房は、それぞれ肺と全身からの血液が戻ってくる部屋です。この両者の部屋を心房中隔と呼ばれる壁が二つの空間に分けています。

心房中隔欠損症は、先天性心疾患(産まれつきの心臓の病気の総称)のひとつであり、そのなかでも一定割合を占めています。また、心房中隔欠損症は女児に多いことで知られています。

先天性心疾患ではあるものの、新生児や乳児期に発見されることは少なく、就学時検診やそのほかの理由で小児科を受診した際などに発見されることが多いです。自然閉鎖は期待できず、年齢を経てから心不全による症状が徐々に現れることもあります。心臓や肺への負担状況を判断しながら、治療介入が行われる病気です。

原因

胎児期、左右の心房を隔てる心房中隔には、卵円孔(らんえんこう)と呼ばれる生理的な穴が存在しています。胎児は胎盤を介して酸素を供給するため、肺で酸素を取り入れる必要がありません。そのため、胎児の右心房に返ってきた血液は肺を通ることなく、卵円孔を介して左心房へと移動します。

出生後、赤ちゃんは自分自身の肺で酸素を取り込まなければならなくなるため、卵円孔は不要になります。そのため、生後数分のうちに卵円孔は閉鎖します。しかし、卵円孔の閉鎖がうまくいかないこともあり、これにより心房中隔欠損が発生します。心房中隔により穴が生じる場所は異なり、いろいろなタイプがあります。それぞれのタイプに応じて、症状の現れ方や自然閉鎖するかどうかの傾向、治療法も異なってきます。

なお、遺伝子の中でもNkx2.5、Gata4、Tbx5などが、心房中隔欠損の発生に関与していると考えられていますが、特定の一つの遺伝子が原因というわけではなく、多因子遺伝によるものと想定されています。またダウン症候群や胎児期における風疹(ふうしん)による感染、アルコールなども心房中隔欠損症の発症に関与するリスク因子であると考えられています。

症状

心房中隔欠損により、新生児期や乳幼児期に症状が現れることはまれです。一方、同じように心臓に穴が空いている心室中隔欠損症においては、乳児期にも症状が出ることがあります。心室中隔欠損症では比較的早期に症状が現れることがあるため、比較すると臨床経過に大きな差があります。心房中隔欠損症は、症状がないうちから、3歳児検診、学校検診、別の病気などでかかりつけ医にみてもらったことなどをきっかけに診断されることが多い病気です。

心房中隔欠損症に関連した症状として、心不全徴候や肺への負担を示唆するものが現れることがありえます。具体的には、同じ世代の子どもと比べるとやや体が小さい、走ると疲れやすい、風邪をひきやすいといったものです。

病状がさらに進行すると、チアノーゼ、易疲労感、失神、胸痛、多呼吸、寝汗、不整脈(心房細動と呼ばれるものが代表的)などが生じることもあります。また、肺炎にかかりやすくなります。しかし、こうした症状は小児期にはまれであり、成人期以降にみられるようになります。また、妊娠をきっかけに症状が現れることもあります。

検査・診断

お子さんに症状がない場合でも、聴診所見から心房中隔欠損の疑いを指摘されることがあります。診断は、胸部レントゲン、心電図、心エコー検査をもとにおこなわれます。

心臓や肺に負担が大きい場合には、治療を行うことが求められます。また、心臓に合併奇形を伴うことが疑われることもあります。そのため、治療方針の決定や合併症の判断をより正確にするために、心臓カテーテル検査、心臓造影検査といった検査を行うこともあります。さらに、中高年においては冠状動脈に異常を伴うこともあるため、冠状動脈造影検査を併用することもあります。

治療

治療(手術や内服薬の処方など)をおこなうかについては、心房中隔欠損に伴う症状や合併奇形の有無などによって判断をします。

心不全症状がなく合併する心疾患もないお子さんの場合は、積極的な治療をせずに経過観察を行います。一方、心不全症状が現れた場合には、利尿剤や強心剤などで心不全症状のコントロールを行います。また、不整脈がみられる場合には、抗不整脈薬を用いることも検討されます。

心房中隔欠損症は、心室中隔欠損症と比べて自然閉鎖は期待しにくい病気です。そのため、心不全徴候をみながら、心房中隔欠損の閉鎖術を検討します。閉鎖術には大きく二つの方法があります。ひとつはカテーテルにより閉鎖する方法(カテーテルインターベンション)、もうひとつは心臓の穴を直接閉じる方法(パッチ閉鎖や直接縫合など)です。

カテーテルインターベンションのメリットは、胸にメスを入れる必要がなく、太ももの血管からAmplatzer 閉鎖栓と呼ばれるもので穴を閉鎖する方法であり、侵襲性が低い点です。しかし、心房中隔欠損の位置によっては適応にならない場合もあります。穴の位置やその他の合併症(たとえば弁の逆流)の関係から、手術が選択されることもあります。