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新生児に見つかることがある先天性心疾患、心房中隔欠損症とは ~適切に治療すれば予後はよい~

新生児に見つかることがある先天性心疾患、心房中隔欠損症とは ~適切に治療すれば予後はよい~
前田 潤 先生

東京都立小児総合医療センター 循環器科 部長

前田 潤 先生

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心房中隔欠損症とは、生まれた時から心臓の心房中隔と呼ばれる壁に穴が存在している病気です。多くの場合、幼児・小児期は無症状のため検診などで発見されますが、適切に治療を行えば予後のよい病気といえます。今回は心房中隔欠損症のメカニズムから治療まで詳細に解説します。

心臓とは全身に血液を送るポンプのような役割をはたしています。この送り出された血液が全身をめぐることにより、生きるために必要な酸素や栄養が細胞に届けられます。心臓の中は4つの部屋に分かれていて、それらが協調して動くことにより肺・全身に血液を送ります。

先天性心疾患の発症率は約1%で、日本の出生数は100万人程度であることから、毎年1万人ほどが先天性心疾患を抱えて出生していると推定されます。中でも心房中隔欠損症の割合は約10%と分かっており、欧米などと比べて多いのが現状です。男女比は約1:2で女性に多いとされています。

心房中隔欠損症とは、心臓の部屋を構成している壁の一部である心房中隔に穴が開いている病気です。正常な胎児では心臓が発達するにあたって、この穴は自然と塞がって出生します。しかしながら発達が不十分な場合、この穴が十分に塞がらないまま出生してしまい、心房中隔欠損症となる場合があります。また穴によって4つに分類されていて、それぞれ二次孔型・一次孔型・静脈洞型・冠静脈洞型があります。

心房中隔欠損症の多くは、幼児・小児期にはほとんど無症状のまま経過するため、学校などでの検診時に発見されることが一般的です。心房中隔欠損症では心臓内における血液の流れが正常とは異なり、心臓に負担がかかってしまいます。そのため無症状のことが多いものの、ほかの子どもよりも小柄であったり、走ると息切れしやすかったりするなどの症状が現れることがあります。欠損孔が大きい場合には幼児・小児期から心不全症状が出現することもあります。

心房中隔欠損症は症状や聴診所見からこの病気を疑い、最終的には心臓超音波検査を行うことによって確定診断することができます。超音波検査とは体表から超音波を照射することで体内部構造を画像化することができる検査方法です。体に大きな影響なく検査が行えるほか、治療の必要性の有無の判断が可能であり、非常に有用な検査です。このほかにも、治療方針決定のためにCTやMRI、心臓カテーテル検査を行うこともあります。

欠損孔が大きい場合やその他の症状が重症である場合、欠損孔を閉鎖するために心房中隔欠損症閉鎖術が行われます。閉鎖術には2種類あり、外科的に開胸して手術する方法と、閉鎖栓と呼ばれるデバイスを用いて開胸せずにカテーテル治療を行う方法があります。これらは欠損孔の大きさやそのほかの合併症などを考慮して選択されます。カテーテル閉鎖術後は感染性心内膜炎に対する予防的抗菌薬や血栓形成予防のための抗血小板薬を一時的に服用する必要があります。

心房中隔欠損症とは、生まれた時から心房中隔に欠損が見られる病気で、先天性心疾患の中では頻度の高い病気です。幼児・小児期では多くが無症状であるため検診で発見されることが一般的で、心臓超音波検査で診断されます。適切な治療を行えば予後は比較的よい病気であるため、検診で異常が指摘された場合は新生児・乳児なら小児科を受診するとよいでしょう。

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