概要
感染性心内膜炎とは、何らかの原因で血液中に病原体が入り込み、その血液が心臓に流れ込んで心臓内に“感染巣”を形成している状態です。
感染巣は菌塊や疣贅とも呼ばれ、心臓のはたらきを妨げたり、血液とともに別の部位に流れ、末梢血管を詰まらせたりすることがあります。命に関わる恐れがあるため、速やかに適切な治療を受ける必要があります。
感染性心内膜炎の発症頻度は年間100万人に10~50人程度といわれており、女性より男性に多く発症することが分かっています。
原因
感染性心内膜炎は、血液内に溶血性連鎖球菌やブドウ球菌、腸球菌、真菌などの病原体が侵入し、心臓内で増殖することで発症します。血液内に病原体が入る主な原因としては、抜歯や扁桃切除術、内視鏡検査、泌尿器科や婦人科の治療などの医療処置が挙げられます。ただし、特に該当するような医療処置を受けておらず、原因が分からない状態で発症することもあります。
また、以下のような人は感染性心内膜炎にかかりやすいといわれており、抜歯などの医療処置を受ける際はあらかじめ医師にその旨を伝えておくことが大切です。
症状
感染性心内膜炎の症状は、患者によって現れ方に個人差があります。一般的には原因となる医療行為を行った後に微熱が続き、徐々に以下のような症状が現れることが多いといわれています。具体的には、感染による症状、心臓の症状、塞栓症状に分けられます。
感染による症状
発熱や体のだるさ、食欲の低下、体重の減少など、風邪とよく似た症状が現れます。
心臓の症状
自覚症状としては、息苦しさ(呼吸困難)や体のむくみなど心不全の症状がみられることがあります。そのほか、動悸や息切れ、疲れやすさ、意識を失うなど不整脈の症状が現れる人もいます。
塞栓症状
血栓や脂肪、細菌などで血管がふさがった状態を“塞栓”といいます。心臓で発生した感染巣が血流に乗って体の各部位に散らばると、以下のような塞栓症状が生じる恐れがあります。
感染性心内膜炎の主な塞栓症状
検査・診断
感染性心内膜炎は、病歴や症状の経過、画像検査、血液検査の結果などを総合的に判断して、確定診断を行います。
画像検査
画像検査では、主に心エコー検査やCT検査を行います。心エコー検査は超音波を通しやすくするゼリーを塗り、胸に機器を当てることで感染巣の有無や心臓の血流をコントロールする弁の状態を確認します。加えて、口から機器を挿入し、食道から心臓の状態を観察する経食道心エコーを行うこともあります。
CT検査では、血管の塞栓の有無や位置について詳しく調べます。
血液検査
感染性心内膜炎は血液中の病原体が心臓に侵入することで生じるため、血液を採取・培養して病原体を特定します。
治療
感染性心内膜炎の主な治療は薬物療法で、病原体に合わせた抗菌薬を投与します。ただし、感染巣は血流が少なく薬が効きにくい傾向にあるため、抗菌薬を大量かつ長期的に投与する必要があります。
また、薬物療法を行っても症状が改善しない場合や病気が進行している場合などには、手術も検討されます。手術では感染巣を取り除くほか、病気によって心臓の弁が損傷している際は弁を修復するか人工弁*へ取り替える場合があります。
*人工弁:“機械弁”と豚の心臓弁などを活用する“生体弁”があり、患者の年齢や健康状態などを考慮して選択される。
予防
感染性心内膜炎にかかりやすい人が抜歯や内視鏡検査などの医療処置を受ける際は、事前にかかりつけ医や担当の医師に相談しましょう。処置を受ける際に抗菌薬を服用することで、発症の予防につながります。
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