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感染性心内膜炎の治療方法とその後の生活について

感染性心内膜炎の治療方法とその後の生活について
宝来 哲也 先生

国立国際医療研究センター 心臓血管外科 元科長・非常勤、北里大学医学部 診療准教授

宝来 哲也 先生

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感染性心内膜炎は治療のタイミングを逸すると重大な合併症を引き起こす可能性があるため、その機を逃さないことが非常に重要です。また、特に人工弁が体内にある方は再感染などにも注意が必要となります。本記事では感染性心内膜炎に対して行われる治療や、その後の生活における注意点などについて国立国際医療研究センター病院の宝来(ほうらい) 哲也(てつや)先生にお話しいただきました。

感染性心内膜炎の治療においては、まずは抗菌薬の投与を行い感染の原因となっている菌を死滅させることを目標とします。そのため、長期にわたって高用量の抗菌薬が投与されます。治療にあたっては、前ページでも触れたとおり、血液培養検査を行って感染の原因菌を突き止めることで、より適切な抗菌薬の選択ができるようになります。

抗菌薬の投与により一時的に症状が治まる方もいらっしゃいますが、多くの場合は再び症状が現れます。そのような場合、外科手術の実施が検討されます。

日本では、感染性心内膜炎の患者さんの約60%が外科手術を受けているといわれています。まずは内科的治療を行って、効果を見ながら外科手術を検討していきますが、以下のような場合には、早期の外科手術が望ましいとされています。

  • 合併症としての心不全症状がある場合
  • 疣贅(ゆうぜい)()の大きさが1cm以上あり、塞栓症(そくせんしょう)を起こす可能性が高い場合
  • すでに塞栓症を引き起こしている場合
  • 原因菌にもっとも効果的な抗菌薬を3~5日ほど投与しても感染が治まらない場合

ただし、外科手術を行う場合でも、できる限り手術前に抗菌薬の投与期間を設けて手術後の再感染のリスクを抑えることも重要です。そのため、合併症などのリスクが高い感染性心内膜炎においては、どれだけの期間抗菌薬を投与し、いつ手術を実施するかというタイミングの決定が非常に難しいポイントです。私は可能であれば最低でも手術前3日間は抗菌薬を投与する期間を設けたいと考えていますが、それよりも早く手術をせざるを得ない場合も多々あります。

感染性心内膜炎の手術は開胸で行われます。手術の大きな目的は感染箇所や疣贅を取り除くこと、取り除いた部位の修復を行うこととなります。心臓弁が感染している場合が多いため、心臓弁をある程度切除せざるを得ない場合には人工弁に付け替える手術を選択することになります。

また、感染が及んでいた弁が僧帽弁だった場合、ある程度弁が残るのであれば人工弁を付けずに弁を形成することも可能です。一方で、大動脈弁に感染が及んでいた場合には、基本的には人工弁へ付け替えられます。また、三尖弁(さんせんべん)や肺動脈弁が感染することはまれですが、三尖弁も人工弁への付け替えが必要となるケースが多いです。

感染が大動脈弁から心臓の壁に及んでいたため、弁を取り除き、牛の心嚢膜を用いて心臓の壁を補填している。黄色い丸で示した部分が牛の心嚢膜。
感染が大動脈弁から心臓の壁に及んでいたため、弁を取り除き、牛の心嚢膜(しんのうまく)を用いて心臓の壁を補填している。黄色い丸で示した部分が牛の心嚢膜。

手術後は最低でも6週間程度は抗菌薬を投与する必要があること、人工弁を新たに入れた場合には再度その部分に感染が起こる可能性があり、経過観察が必要なことなどから、入院期間は1か月以上にわたることが多いです。

感染性心内膜炎の治療後、もっとも注意すべきなのは、再度感染が発生していないかという点です。外科手術を受けておらず、抗菌薬である程度改善した場合でも、完全に菌が死滅しているとは限りません。また、外科手術を受けた場合でも再感染する可能性はゼロではありません。感染性心内膜炎が再発する場合、その多くは初回の治療から数年以内に感染するといわれています。そのため、治療後は自身の体調の変化に気を配ることも大切です。38℃を超える高熱が4日以上続いた場合には、治療を行った医療機関で診察をしてもらうとよいと思います。

感染性心内膜炎は早期発見・治療が非常に重要でありながら、診断が非常に難しい病気であると思います。そのため、まずはこうした病気があることを皆さんに知っていただきたいのです。そのうえで、今後もし自分が感染性心内膜炎にかかったかもしれないと思った際には、かかりつけ医などに感染性心内膜炎は考えられないかとコミュニケーションを取ってみてください。自らそうしたアクションを起こすことは、早期発見のための1つの方法だと思います。

また、感染性心内膜炎は未治療のままでは非常に経過が悪い病気です。医師が患者さんに治療方法を提示する際には、その治療で起こり得るリスクなども考慮したうえで、それでもその選択肢が望ましいと判断しています。そのため、開胸手術を怖いと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、医師が外科手術をすすめた際にはできる限り外科手術を受けるのがよいと思います。治療にあたって不安なことがあれば、ぜひ主治医に相談をして納得したうえで治療を受けるようにしてください。

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  • 国立国際医療研究センター 心臓血管外科 元科長・非常勤、北里大学医学部 診療准教授

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