
肺動脈狭窄症とは、先天性心疾患のうちの1つで、心臓の右心室から肺動脈にかけて狭窄があることで血流が悪くなる疾患です。近年はカテーテルを用いた狭窄を取り除く処置と開胸手術を併用して治療が行われています。
今回は熊本大学大学院生命科学研究部環境社会医学部門教授の河野宏明先生に、肺動脈狭窄症についてお話いただきました。また先天性心疾患全体については記事1『先天性心疾患とは-種類や原因・症状にはどのようなものがある?』、記事2『先天性心疾患の診断・治療・予後について-先天性心疾患はいつわかる?』も併せてご覧ください。
肺動脈狭窄症とは、記事1、2でお話してきた先天性心疾患のうちの1つで、なかでも非チアノーゼ性心疾患に分類されます。この疾患は心臓の右心室から肺動脈までの血管のどこかに生まれつき狭窄が認められることを指し、狭窄によって血流が悪くなることで、右心室に大きな負担がかかってしまいます。
肺動脈狭窄症は、狭窄だけが単体でみられる場合と、他の先天性疾患と合併してみられる場合があります。
肺動脈狭窄症には狭窄している部位に則して3つのタイプがあります。
<肺動脈狭窄症の種類>
肺動脈狭窄症は、先天性心疾患の8〜10%を占める疾患です。肺動脈弁狭窄症をさらに細かく分類すると、最も患者数が多いのは肺動脈弁狭窄症といわれています。
肺動脈狭窄症も他の先天性心疾患と同様、軽症であれば自覚症状がないことも少なくありません。中等症の場合にも幼い頃は症状がほとんどなく、軽い倦怠感に見舞われる程度ですが、年をとるにつれ動悸や息切れが現れるようになります。そのため、ほとんどの場合、自覚症状で疾患が発覚することはなく、検診や診療の聴診で心音に雑音が混じっていることがわかり、疾患がみつかります。
しかし、重症の場合には生まれてすぐにチアノーゼ*を引き起こすこともあり一刻も早く手術を要することもあります。また、ミルクを十分に飲めなかったり、思うように体重が増加しなかったりすることもあります。
チアノーゼ……酸素は赤血球中のヘモグロビンによって運ばれている。酸素と結合したヘモグロビン濃度が低下した際に唇や指先の色が青紫色に変色する症状
肺動脈狭窄症の検査は、右心室と肺動脈の血圧の格差で図ります。収縮期血圧(高い方の血圧)は右心室と肺動脈の血圧は健常な方の場合には等しいのが普通です。しかし、肺動脈狭窄症の方の場合、右心室から肺動脈への血流が悪いために右心室のほうが高くなり、それによって心室の筋肉が通常よりも厚くなってきます。
右心室と肺動脈の圧差が40mmHg以下の場合には軽症とみなされ、80mmHgまでが中等症、80mmHgを超えると重症と判断されます。
肺動脈狭窄症は主にカテーテル治療と手術によって治療されます。大抵はお子さんの成長過程に合わせ複数回治療を行うことになります。まずそれぞれの治療方法についてご説明いたします。
早急な手術が必要ないと判断された患者さんの場合、小児の段階ではカテーテル治療で対応し、成人してから手術を行うことが多いです。カテーテル治療とは開胸せずに血管から細い管を通し、心臓まで進めて処置を行う治療方法です。
肺動脈弁狭窄症の場合、カテーテル治療は経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV)と呼ばれています。PTPVでは右心房、右心室から肺動脈へ向けカテーテルを通し、肺動脈弁の狭くなってしまった部分でバルーンをふくらませることによって、血管の狭窄を内側から広げる治療です。
PTPVは開胸する必要がないため、低侵襲で回復も早く、繰り返し治療を行えることが魅力です。しかし、肺動脈狭窄症のなかには狭窄の位置などによってカテーテル治療では対処できないケースもあるため、適応は絞られます。
肺動脈狭窄症はカテーテル治療では対処できない場合や、成人して血管の太さが安定した患者さんに対して、手術を行います。手術では狭窄部分を切除したり、狭窄のもととなっている肺動脈弁を人工弁に置換したりすることで狭窄を取り除きます。
開胸手術は癒着などの問題もあり、一度行ってしまうと2回目降の手術はリスクがより高くなってしまいます。そのため、医師はできる限りカテーテル治療での対処を心がけます。
また重症度が非常に高い場合は出生後すぐに手術が必要になることもあります。
肺動脈狭窄症も他の先天性心疾患と同様、軽症の患者さんの場合には経過観察のみで、カテーテル治療や手術など具体的な治療の必要がない事がほとんどです。中には投薬の必要もなく、普通に生活できる患者さんもいらっしゃいます。
カテーテル治療や手術は狭窄を取り除き、血流をよくするために行われますが、逆に狭窄を完全になくすまで治療を続けると、肺動脈弁がうまく機能しなくなり、血液の逆流を起こすこともあります。
そのため肺動脈狭窄症の治療は、慎重にバランスを保って行われる必要があります。
肺動脈狭窄症を持つ患者さんが生活面で注意することはほとんどありませんが、運動時には無理は禁物です。無理をしすぎて過度に呼吸が乱れると、心臓への負担が強くなり心不全やチアノーゼに陥ることもあるからです。 特にお子さんはスポーツで他のお子さんと競わせると無理をしがちなので、スポーツは競わせず、楽しめる範囲で行うのがよいでしょう。
周辺で先天性心疾患の実績がある医師
慶應義塾大学 循環器内科 教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
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国立成育医療研究センター 心臓血管外科 診療部長
内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、矯正歯科、小児歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、免疫科
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東京都立小児総合医療センター 循環器科 部長
アレルギー科、血液内科、心療内科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、小児歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、児童精神科、総合診療科、病理診断科、血液腫瘍内科、血液腫瘍外科、透析内科、臨床検査科、救急科、新生児内科、内分泌・代謝科、児童・思春期精神科、呼吸器外科、臓器移植外科
東京都府中市武蔵台2丁目8-29
JR武蔵野線「西国分寺」南口 バス:総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き、西府駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 徒歩15分、JR中央線(快速)「国立」府中駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス10分、京王線「府中」国立駅行き、総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分、JR南武線「西府」西国分寺行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分
東京都立小児総合医療センター 循環器科 副院長
アレルギー科、血液内科、心療内科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、小児歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、児童精神科、総合診療科、病理診断科、血液腫瘍内科、血液腫瘍外科、透析内科、臨床検査科、救急科、新生児内科、内分泌・代謝科、児童・思春期精神科、呼吸器外科、臓器移植外科
東京都府中市武蔵台2丁目8-29
JR武蔵野線「西国分寺」南口 バス:総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き、西府駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 徒歩15分、JR中央線(快速)「国立」府中駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス10分、京王線「府中」国立駅行き、総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分、JR南武線「西府」西国分寺行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 バス20分
東京心臓血管・内科クリニック 院長
循環器内科、心臓血管外科、内科、糖尿病内科
東京都中央区日本橋人形町1丁目7-7 笠原ビルディング3F
東京メトロ日比谷線「人形町」A2出口 徒歩1分、東京メトロ半蔵門線「水天宮前」A8出口 徒歩2分
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