はいどうみゃくきょうさく

肺動脈狭窄

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

肺動脈狭窄とは、肺へ向かう動脈が狭くなっている状態を指します。先天性(生まれつきの)心疾患に分類される肺動脈狭窄は、全先天性心疾患の10%ほどを占める比較的多い病気です。

肺動脈が狭くなる部位はさまざまであり、また肺動脈狭窄以外の合併奇形の有無、基礎疾患(もともと持っている疾患)の有無などの状況にも多様性があります。右心室から肺動脈へ血液が通りにくくなるため、右心室に負担がかかり右心不全症状を呈します。

狭窄の部位や合併している奇形の状況により治療方法は異なり、カテーテル治療や外科手術が選択されます。また、症状を呈さないほどの肺動脈狭窄では治療をしないこともあります。肺動脈に対しての評価はもちろん、合併症の有無など病態の多様性を考慮しながら治療方針を決定していくことが重要です。

原因

血液は全身を巡ったあと右心房へと戻ってきます。続いて右心室へと入り、肺動脈を介して肺へと血液が流れます。右心室と肺をつなぐ肺動脈には「肺動脈弁」と呼ばれる構造物があり、右心室から肺へと一方向に血液が流れるように調整するはたらきを持っています。

肺動脈狭窄は、狭くなる部位によって分類がなされています。肺動脈弁を基点として、弁下狭窄、弁狭窄、弁上狭窄があります。さらに、肺動脈の末梢側で狭窄することがあり、末梢狭窄と呼びます。

肺動脈狭窄は、心臓の発生学的に、先天的な異常を原因として発症すると考えられています。風疹ウイルスの関与や、ある種の先天性疾患(ウィリアムズ症候群ヌーナン症候群など)との関連性が指摘されています。また、肺動脈狭窄単独の心奇形として発症することもある一方、ファロー四徴症などの先天性心疾患に合併する形で発症することもあります。

症状

肺動脈狭窄は、右心室から肺への血流が流れにくくなっている状態です。狭窄の程度が強い場合には、肺への血流が乏しくなるため、低酸素血症を反映したチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色である状態)を生後早期にみることもあります。

狭窄の程度があまり強くなく肺への血流がある程度保たれている場合であっても、右心室には常時負担がかかることになります。時間経過と共に右心室への圧負担が蓄積され、右心不全の症状が出現するようになります。具体的には、全身の浮腫(ふしゅ:むくみ)、肝臓の腫大、胸水、腹水、それらによる呼吸困難や腹部膨満などです。

その一方、肺動脈狭窄の程度が軽度の場合、明らかな症状を呈さずに成人期まで経過することもあります。聴診をすると狭い部位を血流が流れているために心雑音が聴取され、偶然発見されることがあります。

検査・診断

肺動脈狭窄では、胸部単純レントゲン写真、心電図、心エコー検査、心臓カテーテル検査などが行われます。

胸部単純レントゲン

肺動脈狭窄では肺への血流が障害を受け、肺動脈が細いことを確認できることもあります。

心電図

肺動脈狭窄では右心室に負担がかかっており、この負担の強さや不整脈などを心電図にて評価することも可能です。

心エコー検査

肺動脈のなかのどの部位が狭くなっているのかを評価することができます。さらに、右心室内の圧力が高くなっていることを推定したり、その他の合併心奇形の有無などを評価します。

心臓カテーテル検査

最終的には心臓カテーテル検査で診断します。患者さんの体への負担がやや大きい検査方法ですが、右心室内の圧力を正確に評価することができます。その他にも、狭窄の位置や程度、右心室の形態などが確認でき、治療方針の決定に有益な多くの情報を得ることができます。

治療

肺動脈狭窄の治療は、狭窄の位置や程度などによってさまざまです。狭窄の程度が強い場合には、狭窄を解除するためにカテーテルや手術による治療が行われます。治療によって肺動脈狭窄が改善した後は、ある程度運動制限が必要となることもありますが、多くの場合は大きな制限なく生活を送れます。

肺動脈狭窄は、Williams症候群やNoonan症候群などの基礎疾患の一症状として出現していることもあります。これらの場合は、肺動脈に対してのアプローチのみではなく、合併する多臓器への障害に対しても治療が必要となります。さらにこれらの患者さんでは、療育(社会的に自立することを目的として行われる治療と教育)の適応になることもあり、肺動脈そのものに対してのアプローチだけでなく、包括的な視点から治療に当たることが重要です。

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